表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/97

運命とは、最もふさわしい場所へと、貴方の魂を運ぶのだ


「ロキ、何を聴いているんだ」

「何って? ああ、これは、あの子に再現してもらった俺のお気に入りの曲だ」

「モモちゃんにか?」

「彼女は天才だなガトー。彼女は音楽の神に愛されてる」

「そうだな……だが彼女はイクトくん同様に、地球には帰りたくないらしい」

「いいんじゃないの、なら俺達だけで勝手に帰ろうぜ」

「そうだな……そろそろ約束の時間だ、準備はもう済んでるか?」

「嗚呼、じゃあ勇んで帰るとしますかね」


 ――俺達が愛した故郷(ほし)に。


 ◇


 コロッセオ――ロキ王子が決闘の舞台に指定した場所は酷く荒んでいた。

 ジーナ師匠曰く、この場所は崖っぷちに追いやられた落伍者が集っているらしい。


 石柱によって組まれた円形の建物は、地球のローマにあるものと酷似している。


 僕は仲間を引きつれ、陰惨としたその場所に赴いた。

 今日はロキ王子が参上するからか、コロッセオは人々で溢れかえり。


 観衆紛いの荒くれ者達の野次や罵詈雑言が飛び交い、僕達の神経を逆撫でていた。


「そろそろ来る頃合いだな」

 サイラスがそう言うと。


「お待たせ」

 ロキ王子達は僕達の背後から闘技場へおもむろに入って行った。

 その時、闘技場の観衆から盛大に歓声が巻き起こる。


 彼らの背中を追うようにして、僕達も決闘の舞台に上がって行く。

 すると。


「セェエエエエエエエイシュクに! 静粛にしたまえ諸君!」

 ロキ王子は大音声を張り上げ、観衆を黙らせる。


「……諸君、今日はどうしてここにやって来た。俺が栄光を手にする所をそんなに見たいのか」

 観衆に向けて王子がそう尋ねると、ガトーが彼の前に躍り出た。


「今日は賢者の孫娘マリー・ルヴォギンスを懸けた決闘を執り行う。この決闘の邪魔立てをしようものならその者を王国の権限を以てして国外追放にしてやるぞ。分かったのなら今しばらく口を閉ざしてもらおうか」


 向こうは国の権力を使ってまでマリーを手に入れるつもりだ。

 その前書きは、僕に闘志をもたげさせ、彼らに冷視を向けさせるほど横暴だった。


「ありがとう、今日は必ずロキ王子の私兵団である我ら『緋鷹』が勝ってみせる」

「期待してていいぜぇええええええ!! 本当にな」


 ロキ王子達の口上に、観衆は再度盛り上がりを見せる。


「イクト・マクスウェル・Jr! 前以て伝えた通り今回はチーム戦だ」

 ……え?

「何だその知らなかったって顔はよぉ! 俺はちゃんと言った筈だ……いや言ってなかったか」


「聞いてないぞそんなことは」

 ですよね? オリビアの言質がなかったら僕は戦わずして負ける所だった。


「すまん、伝え忘れてたみたいだ。でも今回の決闘がチーム戦なのは変わりないからな!」


 王子は意気揚々だが、背後に佇んでいたガトーさんは青筋を立てている。

 存外、今回は決闘しなくてもなんとかなりそうじゃないか?

 しかし、僕の運命がそれを許してはくれなかった。


「いいか? 今回の決闘は五人一組、一対一での五試合を制した側の勝利とする。そっちの面子は五人以上そろってるみたいだし、別に構わないだろ?」


「貴方は今回の決闘で僕に負けたらどうする。貴方に勝利したことで国民を敵に回すなんて、僕は嫌だ」

「おいおい、闘う前から尻込みかよ」


 王子の言葉に応戦するように魔石で出来た杖の先を彼に向けると。

 庇うようにガトーさん率いる近衛兵が王子の前に出た。


「決闘の前に約束してもらう。今回の決闘、僕達が勝てば貴方は罪人として国に裁かれて頂く」

「よし乗った、それで行こう。俺達が負ければ懲役だろうと何だろうと」


 と、王子が浅薄な素振りを見せていると、ガトーさんがそれを止めた。


「イクトくん、仮に俺達が負けても俺達に非はないよ」

「今回の件は貴方達に非があるのは明白だ!」


「すまないが、俺達もこの世界に家庭を持っている。その家庭を危険に曝すわけにはいかないんだよ」

「なら、今からでも遅くない……話し合いましょう」


 これは僕が最期に見せた慈悲だった。

 マリー・ルヴォギンス、彼女は僕の最愛の人だ。


 前世を含めても、彼女以上に傍に居て欲しいと願った人はいない。

 王子達は僕に彼女の存在がいかに大切か教えてくれた。


 感謝というには可笑しいけど。

 だから僕は彼らに再度話し合おうと申し出たんだ。


「その話し合いに応じるのなら、俺達がしたことって一体何だったんだろうな。イクト・マクスウェル・Jr、もしかしたらお前って相当なアホじゃないか?」


 でも王子は僕をなじる。


「地球に帰るにしたって、別なやり方があったはずだと僕は」

「決闘始めようぜ、日が暮れる前に終わらせよう」

「……分かった」


 王子達が取った行動は本当に必然的だったのだろうか。

 決闘が始まった後も、僕は王子達の意志を疑問視していたが。


 僕の心にはふと『運命』の二文字が浮かび。

 僕は運命を司る神と対峙していたみたいだ。


 ――運命とは、最もふさわしい場所へと、貴方の魂を運ぶのだ。



今夜も二話連続投稿致します。

中途半端な感じを受けましたのですしおすし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ