表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/97

僕と彼もまた


 夢の中で言葉を交わした友、剣士サイラスを求めて僕は地図を引っ張った。異世界アルビーダでは未だ世界地図が完成してなくて。王都より東方の地は隣国との折衝の兼ね合いもあって、不透明とされている。僕が現在暮らしているプレンザ地方も実は不透明な地帯だった。


 僕もマリーと同じ移動魔術を保持しているとは言え。

 地図にも載ってない場所へ行くのは一種の恐怖である。


(でも行かなきゃ。マリーを救い出すためにも……)


 サイラスは自分が居る場所を東方諸国の一つと言っていた。

 僕はそのことを頭に置いて目を瞑り、意識をここより東方へと飛ばした。

 すると遥か東方の景色が脳裏にインプットされる。


 しかし、感覚に飛び込んで来たのは一面見渡す限りの青い海だった。


(ここじゃないのか……とりあえずこの方角を洗ってみよう)


 この行為は一種のギャンブルだ。

 あてもなく金山を探しだすかのように、必死にサイラスの国を探している。


 現状を整理すれば、僕はマリーを奪われ冷静じゃいられなくなっている。

 心は痩せ細り、昨日から食事が喉を通らない。

 手詰まりだった。


 夢の中の友を頼るしかないと思えるほどに、僕はどうしたらいいのか分からなかった。


「……頼む、居てくれよ、頼むから、あの夢は単なる夢じゃないと教えて欲しい」

 絶望感に苛まれていると、僕は自然と声を出していた。


 友を求めるように、助けを請うような声で。

「夢じゃないと言ってくれよ、っ、サイラス」

「イクト」


 その時、背後から聞き馴染んだ声がした。


「……何ですか師匠」

「マリーが連れ去らわれたと言うのは本当なのか?」

「今さら知ったんですか?」


 ジーナさんの間が悪い反応に、僕は苛立ちを覚える。

 そこで僕は瞑想を解き、ジーナさんの方を振り返った。


「ジーナさん、だから僕は今仕事所じゃない……」

「……ほら、夢じゃなかっただろ」


 ――サイラス。

 ジーナさんに苛立ちをぶつけるように気炎を吐こうと思ったら、彼が居たんだ。


 艶のある濡れ羽色の黒髪に犬の耳が生えていて、臀部からは尻尾が下がっている。

 彼がそこに居てくれたことを、僕は天恵を受け取ったかのように安堵して喜んだ。


「どうして君がここに?」

「理由は色々とあるが、堪らなくなったんだ」


 と言うが、彼のポーカーフェイスからはその心情を覗えない。


「新しい世界、新しい物語、新しい友との出逢いに。俺は堪えられなかった」

 彼の隣には例の連れ添いが恭しく佇んでいた。


 サイラスの連れ添いは清楚な女性だった。

「初めまして」

 と、彼女は透き通った声で僕に告げ。


 僕とサイラスもまた、互いにそう言い合うのだ。


今夜は二話上げることにします。

どちらも短いので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ