僕と彼もまた
夢の中で言葉を交わした友、剣士サイラスを求めて僕は地図を引っ張った。異世界アルビーダでは未だ世界地図が完成してなくて。王都より東方の地は隣国との折衝の兼ね合いもあって、不透明とされている。僕が現在暮らしているプレンザ地方も実は不透明な地帯だった。
僕もマリーと同じ移動魔術を保持しているとは言え。
地図にも載ってない場所へ行くのは一種の恐怖である。
(でも行かなきゃ。マリーを救い出すためにも……)
サイラスは自分が居る場所を東方諸国の一つと言っていた。
僕はそのことを頭に置いて目を瞑り、意識をここより東方へと飛ばした。
すると遥か東方の景色が脳裏にインプットされる。
しかし、感覚に飛び込んで来たのは一面見渡す限りの青い海だった。
(ここじゃないのか……とりあえずこの方角を洗ってみよう)
この行為は一種のギャンブルだ。
あてもなく金山を探しだすかのように、必死にサイラスの国を探している。
現状を整理すれば、僕はマリーを奪われ冷静じゃいられなくなっている。
心は痩せ細り、昨日から食事が喉を通らない。
手詰まりだった。
夢の中の友を頼るしかないと思えるほどに、僕はどうしたらいいのか分からなかった。
「……頼む、居てくれよ、頼むから、あの夢は単なる夢じゃないと教えて欲しい」
絶望感に苛まれていると、僕は自然と声を出していた。
友を求めるように、助けを請うような声で。
「夢じゃないと言ってくれよ、っ、サイラス」
「イクト」
その時、背後から聞き馴染んだ声がした。
「……何ですか師匠」
「マリーが連れ去らわれたと言うのは本当なのか?」
「今さら知ったんですか?」
ジーナさんの間が悪い反応に、僕は苛立ちを覚える。
そこで僕は瞑想を解き、ジーナさんの方を振り返った。
「ジーナさん、だから僕は今仕事所じゃない……」
「……ほら、夢じゃなかっただろ」
――サイラス。
ジーナさんに苛立ちをぶつけるように気炎を吐こうと思ったら、彼が居たんだ。
艶のある濡れ羽色の黒髪に犬の耳が生えていて、臀部からは尻尾が下がっている。
彼がそこに居てくれたことを、僕は天恵を受け取ったかのように安堵して喜んだ。
「どうして君がここに?」
「理由は色々とあるが、堪らなくなったんだ」
と言うが、彼のポーカーフェイスからはその心情を覗えない。
「新しい世界、新しい物語、新しい友との出逢いに。俺は堪えられなかった」
彼の隣には例の連れ添いが恭しく佇んでいた。
サイラスの連れ添いは清楚な女性だった。
「初めまして」
と、彼女は透き通った声で僕に告げ。
僕とサイラスもまた、互いにそう言い合うのだ。
今夜は二話上げることにします。
どちらも短いので。




