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劇的 イクト アフター


 声がする。


 遠くから誰かが僕を呼ぶ声が。


「君が俺を呼んだのか?」

「違う、僕も誰かに呼ばれてここに」

「ふむ」


 黄金色の麦畑が風に撫でられさざめく中、僕は彼――サイラスと出逢った。

 彼は節操を弁えた剣士で、腰元には諸刃の剣の鞘がある。


 特徴的なのはそれだけじゃなくて、彼は犬の耳と尻尾を持っていた。

「ここが何処かは知らないが、いい景色だな」

「紹介するよ、ここは僕の故郷だ」


「イクトは素晴らしい土地に巡り合ったものだな」

「こっちに来てくれないか、君に僕の奥さんを紹介したいんだ」

「ああ、是非とも」


 初対面だと言うのに、僕と彼はお互いに気を許し合った。


 麦の茎を掻き分け、サイラスと一緒に僕の家に帰る。


「ただいま、マリー」

「お邪魔します、随分と立派な家だな」

「この家は僕の師であるジーナさんに作って貰った」


 広々とし、天井も高い玄関には靴が一足もなくて、誰かがいる痕跡はなかった。

 仕方ないから、ここは彼をリビングに上げて、彼女達が帰って来るのを待とう。


 リビングと繋がっているキッチンに赴き、僕は彼のために緑茶を淹れた。

「旨い」

「ありがとう、それで君は恋人とかいるの?」


「ああ、多少口の悪い連れならいる。そういうイクトは?」

「僕も似たようなものだ」


 でも残念だ。

 彼にはオリビアを紹介してやろうと思っていたんだ。

 あれからオリビアは玉座を退陣した父親のバルバトス三世をここに引き取った。


 それが起因したのか、僕の家の周辺には近隣諸国の首脳の別荘が次々と乱立している。


 信心深い民だったりとか、マリーが要求した商人達も集まり。

 不毛な大地だったプレンザ地方は今じゃ一端の街へと発展したんだ。


「街を作るのは大変だったか?」

「それなりには、だけど楽しくもあった」


「お前は人生を謳歌しているようだな」

「サイラスは違うの?」

「俺の人生は、剣に捧げた」


 剣に人生を捧げるか。

 この四年、ジーナさんから魔石職人の技を教授される傍ら。

 僕は多種多様な人と交友して、結構強くなったんだ。


 もちろん、マリーとイチャイチャする時間も忘れてない。


 だからあっという間だったよ、この四年という月日は。

 日進月歩で育って行く街は傍から見ていて最高のサプライズだったな。


「いいな、そういうの。心の底から憧れる」

「ならサイラスもここで暮らせばいい、どう?」

「考えておく」


 彼から色好い返事を頂いた僕は、街のさらなる躍進を期待するよう喜んでしまった。


「イクト、お早う」

「……夢か」

「どんな夢を見てたんだ?」


 サイラスとの団欒は、どうやら取るに足らない一つの夢だったらしい。

 夢見としては良質な部類に入る楽しい夢だった。


「サイラスって言う、犬の耳と尻尾を持った人と打ち解け合う夢だった」

「ふーん、まぁそろそろパーティーの時間だからさ。とっとと着替えろ」


 僕とマリーの寝室の鴨居に設置された時計を見ると、結構いい塩梅だった。

 僕は気持ち急いでタキシードに着替え、紅いドレスに着飾ったマリーと部屋を出た。


「遅いぞ、仮にも相手は一国を統べる王室であれば遅刻は許されないぞ」


 寝室を出て、渡り廊下をちょっと歩き、リビングに向かうとオリビアが待っていた。


 僕とマリーの寝室は離れにあるんだ。

 みんな、一体ナニに気遣ったんろうか。


「そろそろ頃合いだ、会場に向かうとしよう」

 オリビアは際どいスリットが入った白磁色のドレスに身を包んでいる。


「では皆さんで一斉に参りましょう、イクト、『写真』は撮らないのか?」

「是非撮りたい、みんな集まって」


 写真――この世界にはなかった物の一つだ。地球ではみんな写真を嗜んでいると告げれば、ジーナさんが考案し、開発してくれたのだ。写真の現像用に作られた魔石は大ヒットを記録している。


 おかげで僕の街の経済は右肩上がりに行き、順調だ。


 集合写真を撮った後、僕達はマリーの魔術によって王宮の踊り場へと足を運んだ。


「「おぉ」、賢者の孫娘様だわ」

「御機嫌よう、貴方の魔術にはいつも驚かされる」


「すまんねぇ、驚かせちゃった様子で。でもそこまで驚くことはないだろ、私を誰だと思ってるんだね?」

 パーティー会場に着くと、マリーは早速声を掛けられている。


「クリス、エヴァ、それからエーデル。到着早々悪いがお前達は見回りに行ってくれ」

 オリビアは三つ子の家臣にここの警備を任せていた。

 彼女達は特に不満も口にせず、言い付け通り散会する。


「この四年、実に平和でしたねイクト」

「……そうだな、かつては奴隷だった彼女達も成長したし」

「美味しく頂くと言うのですね。成長したことだし」


 ラプラスは四年前と今とで何一つ変わってなかった。


 彼女はこの四年間、新居の家事をそつなくこなしてくれたけど。

 ラプラスは性奴隷と言って召し取っていた彼に逃げられていた。

 彼に何をしたこのビッチ、やはりラプラスの淫蕩な性格は難点である。


「イクト、こっちに来てくれ」

 爆! 乳! 爆!! 乳!!


 僕は最低だ。

 常日頃からお世話になっている師匠を見て爆乳爆乳としか思わないんだから。


「何か御用ですか?」

「母が久しぶりにお前の魔術適性を見てくれるんだそうだ」

「久しぶりにしてるわね、イクトさん」


 思えば、師匠の母であるニーナさんが居たから今の僕がいる。

 そう謳えば、心根が優しいニーナさんは喜んでくれた。


「タダで魔術適性を見てくれるのは有難いですが、遠慮してもいいですか?」

「あら、どうして?」


 ――四年前、僕の魔石生成能力に目を付けたジーナさんは。


「ライフドレインとフレア以外の魔石は生成出来ないのか?」

「試してみますか?」

「……さっさとしろ」


 と言われ、結果的に僕は習得した魔術の魔石なら生成出来ることが判明した。


「なるほど、ならば俺がイクトのために魔石を獲って来てやろう」

「父上、それは本気ですか」


 こう申し出てくれたのは退陣直後のバルバトス三世だった。

 バルバトス三世の助力も得て、僕は多様な魔術を体得するに至る。


 ――だからこそなのだ、ニーナさんの申し出を遠慮したいのは。

 僕の魔術適性を見たニーナさんは恐らく驚愕の余り心臓が止まってしまう。


 誇張表現を用いればそんな感じだった。


「あらそうなの?」

「えぇ、恐らく表に起こすのも馬鹿らしくなるほどです」


「……ふふ、貴方は本当に素晴らしい才能をお持ちだわ」

更新時間が遅れてすみません。

続き書いてたらいつの間にかタイムオーバーしてて「ファ!?」ってなりました。

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