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イクト、危険に付き

 ――幽鬼族との死闘から数ヶ月の時が経過した頃のこと。

 マリーは恐妻と化していた。


 これは彼女の欺瞞さ。


 表向きは『バルバトス王国で何の成果も上げられなかった屑夫』扱いだけど。

 二人きりになると、僕とマリーは羽目を外すようにイチャイチャしている。


 僕が望んだわけじゃない、彼女が自主的にそうしてるんだ。


 前世ではよく嗜んでいたツンデレ属性、嗜みすぎて辟易としていたけど。

 二次元じゃない女性にこれをやられると脳髄が痺れる。

 僕はマリーという奥さんを持てて果報者だ。


「イクト、何してるんだ?」

 ラプラスの父、カガトさんが営む城宿の一室で自身の違和感を不思議に思っていると、マリーがやって来た。


「バルバトス王国での一件以来、なんか」

「なんか?」


「イクトはいるか」

 するとそこへ、ビリーノエル改めオリビアがやって来る。

 彼女が僕達を視界に入れると、マリーは僕の頭を勢いよく叩いた。

「い、たぁ!」


「どいつもこいつも女を誑し込むことしかしない、屑ってこれだから嫌ですねー」

「こら、いくら夫だからとは言え手が早すぎるぞ」

「イクトに用があったんだろ、さっさと言えよ」


「それもそうだな。イクト、バルバトス王よりライフドレインの魔石の追加発注が入った」

「分かった」

 と応じれば、マリーは「安請け合いするな」と言ってまた叩いた。


「……魔石を生成出来る能力なんて聞いた例がないよ、イクトはどうやってその力を身に着けたのだ」

「企業秘密で御座いますよ、な、イクト」


「まさか、お前らが夜な夜な繰り返している逢瀬の時に何かしてるんじゃないだろうな」

 何かって、ナニっ!?


 ビリーノエルは軍人上がりだからか、歯に衣着せない物言いを取る。

 じゃなかった、オリビアはね。


 三人で談笑していると、天にその名を轟かす存在がやって来る。

「失礼します」

 その女の名は、ラプラス――史上稀にみるビッチだ。


「お前まで何しに来たラプラス」

 マリーは使い魔である彼女に対し用件を手短に訊き出す。

「ナニやら気になる話題だったもので」


 ぬぁにぃ? あのラプラスに聞かれていただと? やっちまったなあ!


「と言うのは冗談でして、ジーナ様がお見えになられております」

「お? もしかしてとうとう新築が出来たのかな」


 数ヶ月前、僕達は鍛冶屋のジーナさんに家の建て替えをお願いしていた。

 これはバルバトス王国の死闘を生き延びた神様からのご褒美だと思った。


「それは嬉しいな」

「然様かと、そしたら皆さんでジーナ様の所へ参りましょう」


 ラプラスを水先案内人にして、僕達は宿泊部屋を出て一路応接室へと向かう。


「所でイクト、さっき何か言い掛けてたよな?」

「ああ、何かここ最近身体に違和感を感じるんだよ」

「違和感? どんな感じの」


「心臓が、以前よりも丈夫になって来たような、そんな感じの」


 僕はこうなり、勘違いの可能性と、この世界特有の病気の可能性を考えた。

 変にストレスがなくて一時だけ気が大きくなってるのかも知れない。


「マリーの知り合いに良い医者の先生がいたら紹介してくれよ」

「王立病院の医療費は物凄い高額だからな、唾でも付けとけば?」


 恐妻モードでも、マリーは愛くるしい。


「来たか」

 爆! エロゲの世界でしか見たことがない爆乳美人が応接室にある唐草模様の洋椅子に座り、お茶を嗜んでいる。マリーは成長期とは言え、残念ながらここまでの逸材には育たないだろう。


 その時、僕の中のエロゲイナーが囁いた。

 ――お前が育てるのだ。

 マジで?


「……イクト、ちょっと話がある」

 王都で人気高騰の鍛冶屋の主であるジーナさん。

 彼女は立派な胸乳をおもむろに揺らし、僕に話し掛けて来た。

「何でしょうか?」


「単刀直入に言うぞ」

 直乳にですか。


「私の弟子になるつもりはないか」

「……えっと」

 答えに淀んでいると、マリーが堪らないと言った様子で口を開いた。


「ジーナさん、どうしてイクトを弟子に取ろうと思ったのよ」

「お前ら、聞いた話によると魔石を売買して豪勢に暮らしてるらしいな」

 ギク。


「怪しく思った私は、お前らが寄越した魔石をある人物に鑑定してもらったんだ。魔石の知識に於いては並ぶものがいない魔石の博士様にさ。曰く――この世の代物じゃない、だそうだ」


 何か、驚きを通り越しで傷つく言い方だった。


「悪いとは思ったが、お前らの中にスパイを仕込んでおいた」

「どういうことだラプラス!」

「唐突に何ですかイクト」

「スパイってお前のことだろ」


「……、いいえ」

「今の間は明らかに嘘だと物語ってるぞ」


 で、ジーナさんもまた僕の能力を知ってしまったそうだ。

 彼女は残っていたお茶を飲み干すと、僕の瞳を覗き込んだ。


「やってみせてくれないか」

「……ふ、バレてしまってはしょうがないですね。そうです、僕は魔石を生成する能力に目覚めたんです」


 そう言った後、僕は瞑想を始めた。

 手のひらから肘、肘から肩、そして肩から胸の奥深くへと意識を向ける。

 魔石回路とも呼べる通路を確保した後は、内容物を吐き出す。


 ――ゴト。


「素晴らしいな」

「ジーナさん、このことは他言無用ってことで一つよろしく」

「イクトはお前の肩書に相応しい相手だったようだなマリー」

「ありがと、ありがと、そして、ありがと……イクト、今生成した魔石なんだけどさ」


「いつもと色が違うな……もしかしてその魔石は」

 マリーは生成された魔石を手に取り、オリビアが食い入るように見詰めている。


「恐らくフレアの魔石だな」

「また滅法凶悪な魔石が出て来たな」


 その魔石を見受けた僕は一瞬怖気をもよおした。

 和菓子のように、中はオレンジ色に輝いて外は無色透明の魔石なんだけど。

 その魔石からは得も言えぬ恐ろしさを感じる。


「フレアって、どう言った魔術なんだ?」

「物凄い熱量を放って、周囲を焼き尽くすんだ」

「爆発する感じの?」

「そうそう、大体それであってる」


 どうして僕はこう、危険なものばかり生み出してしまうんだ。

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