【短編】[NL]私とあなたで見つけた幸せの形
私は正面で座っている彼にふと思ったことを口にする。
「私たちにとって幸せって何かしら」
「は?・・・なんだよ、急に」
「幸せって何かって聞いてるのよ」
「幸せ?」
「そう」
「・・・難しいなぁ」
「私もそう思う」
「じゃあ何で聞いたんだよ」
「あなたなら答えを教えてくれる気がして」
「俺はそんな大した人間じゃねーよ」
「私から見たら大した人間よ」
「そうか?」
「えぇ」
「どこが?」
「そうね・・・、やることなすこと全部凄いと思う。関心するわ」
「そりゃどーも。俺もお前のことすげぇ奴だなって思う」
「そんな事どうでもいいわ
・・・それで?分かったの?幸せって何か」
「分かんねーよ。分かんねーけど・・・」
「・・・何よ」
「お前と一緒にいたら見つかる気がする」
「え?」
「お前と結婚したら分かるかもな」
「・・・私もあなたと結婚したらわかる気がする」
「ちゃんとしたプロポーズもまだなのにいいのか?そんなこと言って。俺、本気にするよ?」
「本気で言ったのよ、私も」
「・・・ったく、お前ってヤツは・・・」
「褒めないで。今、褒められたりでもしたら私・・・嬉しくて死んじゃう」
「おいおい、結婚する前に死なれたら困るんだけど。
・・・・・なぁ」
「なに?」
「これで、俺もお前も幸せってのに一歩近づけたんじゃねーか?」
「そうかもしれないわね」
「もっと知りたい?幸せって何か」
「そうね。でも、私思うの」
「なんだ?」
「幸せって何か、全て知ってしまったら、幸せじゃなくなるかもしれないって」
「それは大丈夫だ」
「何故そんなことを言いきれるの?」
「例えば、お前の幸せがひとつ失われた、もしくは満たされたとする」
「えぇ、でもそれじゃあ私の幸せは何一つ無くなってしまうわ」
「いいや、そしたら俺がお前にとっての幸せをひとつ見つけてくる」
「私にとっての幸せとあなたにとっての幸せは違うかもしれないのに?」
「大丈夫、長年付き合ってきたんだ。それくらい何となく分かる」
「・・・やっぱりあなたは凄い人だわ」
「そんな奴と結婚出来て嬉しいか?」
「えぇ、心底」
「よかった」
「・・・これからは私たち二人の幸せも見つけられるかしら」
「それはいい発見だ」
「私もそう思う」
「これから予定は?」
「ないけど」
「じゃあ、出かける準備をしよう」
彼は立ち上がる。
「どこに行くのよ」
「まずは、俺ら二人の幸せを形にしよう」
「何を言ってるの、どうやって?」
「婚約指輪を見に行こう」
「気が早いのね」
「新しい幸せに出会いたいんだ」
「まぁ、ロマンチストなのね」
「さ、早く出かけよう」
「そうね」
私は彼の手をとって立ち上がった。