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三角筋ー少女もまた筋肉であったー

「ええええええぇぇぇぇぇぇ!!??」


 ルージュのもはや絶叫とも思える強烈な疑問符がまるで重量挙げのバーベルを落とした時のように響き渡る。


「なななな、なんでこいつ!?なんでそんなに恥ずかしそうにしてるの!?」

「えっと……その、私、昔からたくましい人大好きで。使い魔さんがすごく素敵というか……一目惚れです!」

「リア、あんたどんな趣味してるのよ……?」

「でも、だって素敵じゃないですか!?ルージュだってそうおもうでしょ!?」

「思わないわよ、こんな筋肉ダルマ。素敵とか以前に印象が筋肉一色よ!!」


 見込みがあると思っていればいい気になりおって。またには仕置きも必要であるがまだ、彼女は筋肉の道に足を踏み入れたばかり今回は仕置きではなく愛を与えるべきである。


「汝筋肉を恐れるなかれ!」


 そう言って我輩はルージュを抱擁した。


「いやああああ!!汗臭い!キモい!苦しい!暑苦しい!!!」


 案の定ルージュはまだ筋肉の愛を受け入れていない。


「ずるいです。変わってくださいルージュ!!」


 そう、本来であればそれは幸福なことなのだ。リアの反応が正しいのだ。


「折れる折れる折れる折れる!!!!」


 またしても、ルージュは眠ってしまった。ルージュはどれ程普段休めてないのだろうか。どれ程安心できていないのだろうか。たとえどうであろうと我輩の筋肉は変わらぬ愛を囁くのだ故に安心と安寧を与えられる。


「あ、あの……私にもやってくれませんか?」


 この少女教えられずとも筋肉の愛を知っている。つまり、体はそうでなくとも心は筋肉である。筋肉と筋肉は互いに引力を持ち引き合うのだ。我輩と少女の出会いは必然である。そして、ここで我輩が彼女を抱擁することもまた筋肉によって確定された運命なのだ。


「もちろんである!」


 我輩は少女に抱擁をした。しかし、流石は筋肉の少女嫌がるどころか恍惚とした表情で我輩の筋肉をなぞる。本来であれば両手で抱擁したいが今は片手にルージュがいる。まったく、筋肉でない少女は手がかかるのだ。


 予鈴が鳴る。

 そろそろ教室に戻らねばなるまい。これから魔法即ち筋肉の授業が始まるのだ楽しみである。


「ところで少女よ。」

「リアです。」

「ではリア、お前はルージュの級友であるか?」

「はい、そうです。」


 筋肉の少女リアが我輩と同じ教室なのだ送らねば筋肉バ◯ターを食らってしまう。それは御免である、故にリアを教室まで送ることとする。


「高いのは苦手であるか?」

「大丈夫です!」

「ならば。」


 リアを肩に乗せた。心に筋肉を抱くとはいえ肉体はただの少女だ。我輩の鍛えられた肩は広くリアの尻ごとき軽く収まる。


「うわわ!?すごい……すごいよ使い魔さん!」

「大山剛だ。剛と呼べ。」

「えへっ。剛さん!」


 すごく楽しそうに我輩に話しかけるのだ、可愛いものではないか。

 この後、我輩とリアのこの光景が巨人と少女と言う物語を生むが我輩にはあずかり知らぬことである。

 さて、魔法学校とやらで我輩にも友人が出来始めた。筋肉は友達決して怖くないのである。

 次の授業、召喚魔法基礎の授業である。


「そんで、あんたはことあるごとに私を気絶させて何がしたいわけ?」


 授業開始を告げる鐘で目を覚ましたルージュに問い詰められる。


「気絶?なんのことであるか?」

「とぼけんじゃないわよ!あんたがあまりにきつく締め上げるから私毎回気絶してるじゃないの!?」

「ルージュ、剛さんはそんなにきつくしないよ。ちゃんと相手を気遣ってくれます。」


 リアが援護に回ってくれる。やはり筋肉同士は解り合う定めにあるのだ。


「へー?私が気絶してる間二人でよろしくやってたわけ?」

「よろしくとは心外である。我ら友禅を深めていたまでよ、筋肉同士は惹かれ合うのである。」

「剛さんの筋肉をすごかった。」

「あんたが筋肉フェチなのはわかったわよ……。」


 ルージュはなんだか寂しそうな顔をした。やはり筋肉の愛がまだ足りないのだ。


「皆、授業を始めようじゃないか。さ、耳を澄ませて目を凝らしてしっかり見るのだ。」


 ルージュの追求は授業によって中断される。召喚魔法基礎の授業の始まりだ。


「さて、召喚魔法とは異界や深淵魔界と呼ばれる場所、または精霊界や、神界など様々な場所から対象を呼び出す。何を召喚するかだいたい決めることができるが相性がよすぎる相手がいると割り込まれてしまう。だが、一概に悪いとはいえない。相性が抜群なのだ、間違いなく良い関係を結べる相手だ。今回はみんな、簡易召喚を試してみよう。」


 話が長くてよくわからないが我輩にわかりやすく変換するならこうである。


『簡易召喚、筋肉召喚、モアマッスル!』


 非常にわかりやすい。つまり筋肉と筋肉で無限大ということだ。ならばそれは即ち筋肉が求めること、ギブミーモアマッスルである。


「さて、実践しようじゃないか。教科書の三ページ目に召喚人が乗ってるから別の紙に移して使うんだぞ。」


 言われた通り、全生徒が一斉に別の紙に魔法陣を移して呪文を唱える。召喚されるのは多くが小動物である。


「ふーん、なかなか可愛いじゃない。あなたは何ができるの?」


 ルージュが召喚したのは小さなハムスターの様な生物だった。ルージュはそれに対し猫なで声で話しかけている。

 ちなみに、何が出来るのかと聞かれたハムスターはキレッキレのダンスを踊っている。面白いものだ。


「あはは、本当に相性のいい子が来るんですね!」


 逆隣でリアが成功させる。こっちは我輩も熱いリビドーを覚える程ムキムキの猫であった。猫は我輩とリアを見比べて親指を立てる。我輩も無言で返した。


「ねぇ、あなたの筋肉触ってもいいですか?」


 猫は、自分からリアに体を擦り寄せる。リアは筋肉が大好きなのだ。

 さて、そろそろ我輩もやろう。詠唱といえばこれである。


「マッスル!!!!!」


 我輩の魔法陣から飛び出したのは黒光りするからだ、6つに割れた腹筋、大きく隆起した胸筋、それらを誇らし気に我輩に見せつける悪魔の角を生やした男だった。


「我は筋肉の悪魔、ラーズである。召喚者よ、名を聞かせよ!」


 我輩は一目でわかった。このものは魂レベルで我輩の同志であるということが。


「我輩は大山剛である!」

「良い体だ!」

「貴様こそ!」

「「ふんっ!!!」」


 我輩とラーズは熱い握手を交わした。その時、手と手が触れ合う音を爆発音と勘違いし教官が駆けつけたが我々の美しい友情に感激のあまり絶句していた。何よりラーズとは良き友になれそうである。

少女は筋肉じゃねえよ!!

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