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上腕二頭筋ー魔法、それもおそらく筋肉である。ー

 吾輩、大山剛は現在ルージュと共に魔法学院とかいうカルト臭い場所で魔法の授業を受けている。


 吾輩思うに、もう少し教師は筋肉を語るべきである。そんなことだから、最近の若い者は魔法を理解していないと嘆く羽目になるのだ。筋肉の一言もなければ理解など出来ようものもない。されど、吾輩を召喚した少女ルージュは筋肉をよく理解している。おそらく吾輩の筋肉が伝わったのだ。彼女曰くこうである。


「魔力を気合、魔法を筋肉に置き換えればいいんじゃないかしら?」


 若干投げやりな言い方が気に触るが吾輩はわかっている。まだ恥ずかしいのだ。筋肉の愛を受け、筋肉を愛すことがまだ不安なのだ。


「次、えぇっと君は……?」


 それにしてもこの教官は筋肉が少ない。世界に愛されなかったのであろう。筋肉とは即ち世界であるから。


「大山剛、ルージュ殿の使い魔である!」


「よろしい、やってみなさい。」


 遠くでルージュのつぶやくような声が聞こえる。筋肉曰くこうつぶやいている。


「あいつ、大丈夫かしら……。」


 全く心配ないことを証明してみせよう筋肉は奇跡をも起こすのだ。


 思い出そう、こうだ。

『自分の中に魔力を見出し、それを御して雷の思いを乗せる。それ即ち魔法となり敵を打ち倒す。』


 さて、ルージュに言われた通りに変換しよう。長ったらしい部分は省いてわかりやすく吾輩用にカスタマイズして……。つまりこうだ。

『気合で雷を起こす事が筋肉だ!』


 非常に単純明快である。それが筋肉ならば即ち吾輩自身である。何も恐れる事はない、何も考える事もない最初から最後まで徹頭徹尾筋肉なのである。やはり世界は筋肉で構成されている。


 他の生徒がやっている、長ったらしい詠唱。そんなものは非効率だ効率的な詠唱とは何かを目に見せてやるとしよう。


「マッスル!!!!!」


 やはり、やはりだ。どうだこの威力、どうだこの正確さ。吾輩の魔法はしっかりと的を貫いた、これまで何十人の生徒が魔法を浴びせても焦げ目すらつかなかったこの的が。


「えぇ……あぁ……えぇっと。マッスル……あれ?」


「教官殿、それではダメである。要は筋肉なのだ、自らの内に筋肉を感じそれを筋肉として放出する。刮目せよ、マッスル!!!!!」


 吾輩にはやはり筋肉の才能がある。当たり前である、吾輩こそが筋肉なのだ。万に一つ筋肉に裏切られたなら吾輩は生きては行けない。つまり、この結果は必定であり不変なのだ。


「あ、あぁ……わかったよありがとう。君の魔法の使い方は君にしかできん。生徒諸君きになるかね?」


 生徒一同が揃って首を縦に振る。


「仕方ない、説明しよう。これは、甚だ遺憾ではあるが魔法の最終到達点である奇跡に近い。しかし、魔法の奇跡とは違う。神官が使う奇跡に似たものだ。まず、彼は筋肉を厚く信頼している。それは、信仰といっても差し支えないほどにだ。その信仰が、信頼が筋肉に体内の魔力ではなく世界に存在する万有マナをそこに集積しなぜか魔法に変換して放ったのだ。」


 教官の話は長くわかりづらい。筋肉なのだ当然である。説明などそれだけでいいはずである。そもそも筋肉とは奇跡であり信仰である。という事は、魔法でもあるという事に最近まで吾輩も気づけずにいた事は遺憾ではあるが。

 その後様々な魔法の訓練があったが吾輩は、それらを難なく、そして教官殿より上手くこなして見せた。魔法とはいいものである、筋肉の可能性を伸ばしくれる。


 無論詠唱とはこれである。


「マッスル!!!!!」


 万能言語筋肉語だ。まだ筋肉を理解しきれていないされど有望な少女、ルージュが吾輩に話しかける。心なしか呆れたような顔だが自分の筋肉がまだ吾輩に及ばない事を憂いた表情こそこれなのであろう。


「あんたほんと無茶苦茶ね……。なんでもできちゃうんだもの……。」


「魔法、即ち筋肉なれば我輩に出来ぬ道理はないのである。」


「まぁ、そう言ったのは私だけど魔法は別に筋肉じゃないわ……。」


 この少女やはりまだまだ筋肉への理解が足りない。このままではいくら励もうと我輩に及ぶ事はないのである。矯正が必要だ。


「そんなはずはない、万能にして強靭。さすれば筋肉なのである!」


「はぁ、あんたのは筋肉でしょうね……。どう考えてもかけらも魔法を理解してないもの。」


「理解ならしている。即ち筋肉である!」


「それでいいわよ……もう……。」


 ようやく理解したようだ。万物の理は全て筋肉に収束する。したがって、魔法への理解の根源それに至らんとすれば筋肉にたどり着く。


「ルージュ……。」


 控えめで可憐な少女の声である。もう少し腹筋と肺活量を鍛えた方が良さそうだ。


「なぁに?リア。」


 ルージュの言葉遣いから察するに二人の間柄は筋繊維の絡み合いが如く親密なようである。だが、リアと呼ばれた少女は何故か頬を赤く上気させモジモジと恥ずかしそうにしている。


「あの……使い魔さんを私に紹介してください!」


 我輩は筋肉なのだ声をかけられて当然である。しかし、ルージュはそうは思ってはいなかったようだ。やはり文化が違う。ならばゆっくりと筋肉の素晴らしさを教えていけば良い。


「え?」

筋肉じゃねえよと突っ込みを入れつつ読んでください

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