第零筋―死、即ち筋肉である―
諸君、筋肉とはいいものだ。武器にもなれば鎧にもなる。これ程までに携行性に優れる武器はないだろう、防具もないだろう。
我輩は筋肉を愛している、いや我輩は筋肉である!残念ながら名前もある。
「大山剛さん、残念ながらご臨終です……。」
今呼ばれたのが我輩の名である。いかにも筋肉の波動を感じるいい名前である。
さて、なぜ我輩が死んだのか語る必要があろう。
『あの……このままだと死亡手続きに失敗してしまいますが……。』
自らを閻魔だとのまたうロリっ子は無視である。実際閻魔が何なのか我輩にはわからん。言いたいことは筋肉で語るべきなのだ。
『あの……このままだと色々まずいのですが……。』
さて、我輩が死んだ理由とは非常にシンプルな筋肉を目指すものなら誰でも経験することだ。我輩は毎朝の日課腹筋五千と腕立て五千、それからランニング10キロを終えてタンパク質補給のために生卵の白身をジョッキ一杯一気飲みしたのだ……。
しかし、卑劣な卵どもはそこにサルモネラと言う毒を盛った。それ以外のいかなる事であろうと我輩は筋肉で防いで見せる覚悟があった。
『あの……なんか光ってるんですけど……。』
しかし、毒だけは無理だ。ゆえに我輩は成す術もなく死んだわけなのだ。
「と言うわけで地獄行きを要求する!あそこなら存分鍛えられそうである!」
『もう手遅れだと思います……。』
おかしい、足元が光っている。眩く光ってまるで魔法陣のようである。しかし、愚かな魔術師よ、我輩の筋肉は魔法如きでは貫けん。断じて我輩は筋肉である!
『あー!もうやだー!また始末書書かされるー!』
しかしおかしい、いくら待てど炎の温もりも絶対零度の涼しさも感じない。さては魔術師めしくじったな!そう思った直後我輩は声を上げざるを得なくなった。
「なぬっ!?」
地面が抜けたのだ。いや実際には地面に門が現れ、開かれた。従って、我輩は空を泳ぐ準備もしていなかったため自由落下。見知らぬ部屋にいたのである。
我輩の名誉のために言おう。我輩は筋肉、準備をしていれば空を泳ぐ事もたかだか5秒程度であるが可能である!
つまり、我輩こそが筋肉である!