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Re;BARC  作者: ぜろ
4/6

得るものは少なく失ったものは大きい

全ては始まりから終わる




 あのあとオラさんは烈火の如くオラついた。




 僕とホシちゃんと学園に併設されている喫茶店でお茶と甘味を食し終えた頃には幾ばく落ち着いた様だが、明日絶対〆る、とか言っちゃってる。


 こわいよ、オラさん……。


 オラさんとホシちゃんは女子貴族寮なので喫茶店を後にしたらお別れ。また明日ね。




 学園には様々な木が植えてある。その多くは卒業生たちからの贈呈だそうだ。その為、この学園だけでこの国の様々な植物が見ることができるのだ。


 翌朝、僕は寮から学園へと続く街路樹を歩いて校舎へ向かう。


 この季節だとまだツバキが綺麗に咲いている。この調子だとサクラはまだ当分先かな。



 そんなことを考えながら教室へ。


 ちなみに座席は自由席。みんな思い思いに座っていく。僕以外のまだ来ていない男子がどこに来るかわからないので昨日みたいは争奪戦は起きない。そして、おそらく男子はその日の女子が1番少ない所に座るであろう。



 そんな中で男子1番乗りの僕は今日はどこに座ろう?なんて考えてたら、


 「おーい☆殿下はコッチコッチ☆」


 ホシちゃんの元気な声に引き寄せられた。オラさんはというとまだみたいだね。


 ネコミミちゃんは……いるね。また座ったまま寝てるのかな?


 ネコミミちゃんの周りには誰もいない。もともと貴族は人間至上主義が多いと聞くし、そんな貴族に睨まれるであろうネコミミちゃんにそうとわかっていて近づく鋼の心臓を持った庶民はこのクラスにはいないようだ。


 ……っていうか、ほんとにいたのかよネコミミ族。亜人種いるとか家庭教師兼有能メイドさんからは聞いてたけど、実際にこの目で見るのは昨日が初めてで、やはり感慨深い。




 さわりたい……。



 

 肉球とかどうなってんだろう?髪で見えないけど人間の耳がある部分ってどうなってんだろう?ってか髪ってサラサラなんだろうかフワフワなんだろうか?


 「殿下は猫人族に後執心だね☆わたしが1肌脱いでしんぜよう☆」


 ホシちゃんはそう言うや否や、ネコミミちゃんに突撃。そのままネコミミちゃんを抱きかかえ僕の膝の上に連れてきた。


 ネコミミちゃんはぼくよりだいぶ小さいのですっぽり収まる。

 

 ……とりあえずホシちゃんに親指立てといた。ホシちゃんもいい笑顔で親指を立て返して来る。




 とりあえずハグ。そしてギューーー。


 あぁ癒される……。


 柔いのう柔いのう……。


 ピクピクしている耳は触ると指から逃げるように動く……。ちなみに人間の耳にあたる所には髪の毛が生えている以外は何もなかった。


 ネコミミちゃんを堪能してると不意にネコミミちゃんが僕の膝の上でグルッと半回転。


 目が大きくてかわいいなー、なんて思ってたら。グーが飛んできました。これがホントのネコパンチ。


 痛い……。


 「邪魔」


 ごめんなさい……。


 ハグから開放すると僕の膝の上で丸くなり暖を取り始めた。ヒイラギの月は終わったと言えどサクラの月にはまだ遠く、朝晩は冷え込むからね。



 制服から尻尾がぴょこり。



 昨日はそれどころじゃなくて気付かなかったけど、そうだよね。ネコミミがあれば尻尾もあるよね。



 ゆらゆら。



 ゆらゆら。



 ゆらゆら。



 「おっすー、殿下、ホシ、おはよー」


 「おはよーオラちゃん☆」



 ゆらゆら



 ゆらゆら



 きゃっち!!



 目の前の尻尾の揺れに思わず掴んでしまった瞬間。僕はガバッっと起き上がり膝の上で僕の方に向き直ったネコミミちゃんにより、威力、手数、共にさっきの比ではないネコパンチを喰らう。


 ……が、ネコミミちゃんの背後より現れた人物によりネコミミちゃんのそのネコパンチの連打は止められた。



 我らがオラさんだ。



 「殿下に何してやがるこのクソネコ!!逝ねや!!」


 ネコミミちゃんは脅威の反射神経で躱す――あっ――と僕がいるわけで――ぐはぁ!!――


 や、やばい、ネコミミちゃんの連打とオラさんの一撃だとオラさんの一撃のが強い気がする。


 

 「だ、大丈夫か殿下!?おらぁ!!逃げんなクソネコ!!」


 教室後方のドアに向かって机を跳びながら逃げるネコミミちゃん。そして、それを追いかけるオラさん。



 とその最中にドアが開き昨日の男子4人組が入ってきた。


 先頭の男子の顔にネコミミちゃんが両足で着地。先頭の男子はネコミミちゃんに顔を踏まれそのまま崩れ落ちた。男子の後ろにいた男子はちょうどネコミミちゃんを狙ったオラさんの回し蹴りをくらい後ろの2人を巻き込みながら教室の外へと吹っ飛んでいった。




 これ、やばくね……?




 2人は男子を打ちのめしたまま、教室を出ていった。


 嵐の如き2人に最初はみんなポカンとしていたが、しばしの静寂のあとノックアウトされた男子達の介抱にクラスの女子達は慌て向かっていった。





 「おーし、みんな迷わず来てるかー、ん?何の騒ぎだ?」


 ロッシーは教室の惨状を見たあと、小さくうめき声あげ、


 「関係者は今すぐわたしのところに来い」







 結果、僕らは歴史ある王立学園の停学スピード記録を大幅に塗り替える"入園して2日で停学"という新記録を打ち立てたのであった。


 男子を打ちのめしたオラさんとネコミミちゃんはもちろん、事の発端を作った僕も1ヶ月の停学処分が下されたのだった。



 

全ては終わるから始まる

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