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Re;BARC  作者: ぜろ
3/6

後ろに向かって前進だ

犬派ですか?猫派ですか?



 入園式の後はクラス分け。



 この学園では1年毎にクラス分けが行われる。その振り分けられたクラスで行事などを競い合うのだ。


 それにより、去年の敵は今年の友、ということも大いにあり得る。


 毎年成績を加味してクラス分けが行われる。1年次は入学試験を元に振り分けられる。ちなみに僕は受けていない。一部の貴族子弟はこの入学試験は免除されているのだ。僕は厳密にはいま現在は貴族ではないが、大人の事情で免除された。


 よって、一部の貴族子弟のみ派閥でクラスに入るのだ。


 クラスは全部で5つ。


 紅 白 黒 黄 蒼


 クラスの色自体には意味はないけど、クラス分け後は貴族の派閥の代理戦争みたいなニュアンスがでる。ちなみにどうでもいいけどこの中で僕の好みの色なら紅かな。



 順に名前を呼ばれ講堂から表にでる、僕は残念ながら紅ではなく白クラスで名前を呼ばれた。


 いま講堂の前にいる人はみんな白クラスだ。先生の引率の元、これから1年間の基本的な学び舎として使用する教室に移動する。


 引率した担任の先生は若い女性だった。


 ぱっと見る限り男子は僕を含めて10人もいない。女子はざっと見ただけでも2倍の数の人数がいる。


 「おーし、じゃあ適当に座れー」


 男子は先程の入園式でもうグループでも出来たのか2つの塊になってそそくさと後ろの左右に別れて座席に着いた。


 あらま、あぶれちゃった。


 僕は視力があまり良くないので1人で前の方の窓際席に座った。


 

 ザワザワ……。



 女子は最初男子の様子見をしていたが、男子が全員座ったのを確認すると我先にと男子の近くに向かっていった。



 つまりこっちにも来た。

 


 「そこどけやー!!」

 「おまえがどけやー!!」

 「おらおらおら!!」

 「ヒャッハー!!」


 これが世紀末である。



 「ハローハローハロー。ハロの座席確保ー!!」


 あれ?ハロ?いたっけ?


 いつの間にか後ろの席にはハロがひょっこり座っていた。


 「ひどいーぞ。ハロも混ぜーろ!!」


 ハロがいるならせっかく知り合ったしハロだと嬉しいなとか思っていたら、ガララッ、っとおもむろにドアがあけられ、険しい顔をしたミハエルがやってきて「ハロは私と同じで黄です!!」と言ってハロを引きずっていった。



 ハロォ……。




 「おら、あたしがここ貰うかんな!!」


 あ。どうぞ。群がる女子を物理的にぶっ飛ばし、まずは右

横に1人着座。


 「あたしはメリーツェ=ラオ=エバンス。おまえ殿下だろ?よろしく!!」


 オラついてるなー。ニックネームはオラにしよう。よろしくオラさん!!


 「メリーツェ、ラオ!!、エバンスだ。殿下」


 あぁ、よろしくオラさん!!


 「おらぁ!?」


 オラさんは良く言えばキレ目、悪く言えばつり目。加えてこのオラつき。不良待ったなしだな。


 「横が駄目なら正面で!!」


 オラの後塵に拝した女子が机を飛び越え正面に着座。


 「ふふん、私は――「その手があったか!?残るは後ろだ!!」」


 残念ながらこの女子の自己紹介は周囲の喧騒にかき消された。


 「す、すでに埋まっている……だと……?」

 「ば、ばかな……」

 「端から倍率の高い横を捨て確実に座れる後ろに……」

 「で、できる」

 

 え?ほんと?、後ろを振り返ると確かにいた。



 なんかキラキラしたやつが……。



 「やっほ☆わたしはキララ=キラ=キララキ☆よろしく☆」


 ニックネームはホシちゃんだな。語尾に星が見える。濃ゆいな……。


 他の男子グループの周囲の争奪戦も終わったようで、負けた女子は思い思いに空いてる席に着いていく。


 「おーし、みんな席に着いたなー、私はクラス白の担当のロッシ=ロッコだ。面倒おこすなよー」


 なんか適当そうな人だ。


 「とりあえず1年次はあらゆる基礎の基礎から叩き込む。貴族組の中には家庭での事前学習で既に済ませてるものも多いと思うがこれも定めだ受け入れろ」


 ぶーぶー、とクラスの女子が囃し立てる。が、次の担任の一言でいきり立つ。


 「まあ、あれだ男子の前でカッコつけるチャンスだ。がんばれ少女達」


 この言葉で、キリ、っと女子の顔が変わった様に感じたのは僕の気のせいじゃないはず。


 後ろを振り返ると男子達は、ヤレヤレ、コレダカラオンナハ……、みたいな雰囲気を醸し出している。


 

 クラスを数えたところ、このクラスは全部で41人。男子は僕を入れて8人。世界の男女比の縮図である。


 ともかく、このクラスで僕の学園生活が幕を開けるのだ。


 

「おーし、とりあえず自己紹介は……いいや、あとで勝手にやってくれー。このクラスでお前たちがやることは年に2回の実力考査はもちろん、サクラ、ヒマワリ、カエデの3つの月にある学園行事でクラスとして実績を残すことー。以上だー」


 この先生ことロッシーは簡単に言うが、僕が事前に子爵家の有能メイドさんから聞いていた話では、回生が上に上がるに連れて、これらの成績が効いてくるそうだ。


 いわゆる学歴社会ってやつ?


 哀しいかな、昨今の貴族の社会もこの風習に呑まれつつある。昔と違い、爵位ばかりで威張っては生きてはいけないのである。


 「おーし、本日はこれにて、解散。後は好きにしろ。女子はあまり面倒おこすなよ」


 ロッシーはそれだけ言うとクラスから出ていった。


 男子ならいいんかい?



 ロッシーが出ていくとオラさんが立ち上がって待ってましたとばかりに、


 「おい、殿下。あそびにいこうぜ!!」


 いいよー、どこいく?


 「えー、どこだろう?」


 しらないよ……。


 ウンウンと真剣に悩みだすオラさん。なんかギャップでかわいい。オラさんは僕より身長が高い。僕が170cm強ぐらいだから最低でも180cm弱はあるんじゃないかな?


 ところでオラさんっていくつ?

 

 「あたし?16だ。殿下は……おっと男に歳聞くのはマナー違反だったな」


 数えで16歳ってことは僕より1歳上だね。


 「数え?なんだそりゃ?まぁ殿下はあたしの1つ下ってことか。しゃーねー護ってやんよ」

 

 にしし、と笑うオラさん。性別を除いてもフィジカル的に負けているので本当に護ってもらいそうでこわい。鍛えよう。


 「殿下って15なんだー☆じゃあわたしと一緒だね☆」


 ほしちゃんと同い年か。僕もホシちゃんの家庭で育ったら今頃こんなキラキラ☆していたんだろうか……。

 

 「どっか行くならわたしも混ぜてよ☆」


 いいよー。


 「んじゃ3人でどっか行くか?あたしと殿下と……ホシで」


 オラさんもホシちゃんのことをなんて呼ぶかで悩んだみたいだ。


 「ホシって……☆いいや☆じゃあわたしもオラちゃんって呼ぼっと☆」


 「おらぁ!?あたしのミドルネームはラオだ!!」


 まあまあオラさん。


 「殿下もだ!!」


 なんて、コントを繰り広げていると、クラスの真ん中からわざとらしい大きな声が聞こえてきた。オラさん越しに真ん中あたりを覗いてみると、4人組の男子グループが1人のの女子をイビっているようであった。


 「あーあ、なんかこのクラス獣クサくない?」

 「たしかに?だれか家畜でも連れてきたんじゃないかな?」

 「まったく信じられないね」

 「身の程を知らないやつがいるな」

 

 周りの女子は触らぬ神に祟なしとばかりに知らぬフリをしているか歓心を得ようと同調してるかのどちらである。


 クラスは貴族と平民の混合である。だが、そもそも王立学園は全ての国民に門戸が開かれているとはいえ、貴族子弟の推薦入学と男子入学希望者を除く、学術による一般入学難易度は非常に高く、7:3で爵位ないしは宮廷関係者が多くを占めている。


 一説には庶民に門戸が開かれたのは貴族同士の衝突を避けるスケープゴートを用意する為とも言われる程である。



 「誰だか知んないけど男子にやられるとか弱いな。あたしをイビろうもんならボコボコにしてやんのに」


 「さすがオラちゃん☆」


 「ラオだ!!」



 このクラスの贄にされたはかわいそうだけど……。どんまい。1年の我慢だよ。助けてあげたいけど、ここで助けたらまず間違いなく男子グループの反感買うでしょ?男子は数が少ないから仲良くしないと後々面倒になると思うんだよねー。


 ただこの世界の女子は我が強いので庶民と言えど素直にやられるわけないだろうに、どんな子なんだろう?と気になりチラッと伺ってみると……。



 

 ネ コ ミ ミ 少 女




 気づいた時には僕はそのグループに割って入っていた。



 コラコラ、弱いものイジメは良くないぞ?うん?獣臭い?家畜?いやいやこれこそが癒やしだよ。わかってないね。



 「なんだよ急にコイツ」

 「女子受けでも狙ってるんですか?」

 「まったく信じられないね」

 「僕たちは身のほどを教えてあげてるんだよ」



 ネコミミ少女……。それはロマン。夢。希望。それを馬鹿にするなど言語道断だ!!



 「な、なんだ?」

 「うざっ」

 「まったく信じられないね」

 「わけわかんないけど僕たちに逆らうんだね?」


 最後の1人が言い終わるや否や、僕の胸ぐらを掴んでくる。


 あ、こら。シワができるだろ。


 「やっちゃえ」

 「みのほどしらず」

 「まったく信じられないね」

 「おらぁ!!」


 そして、吹き飛んだ。



 僕の胸ぐらを掴んでた奴が。



 え?



 「男子だからってあたしのダチに手を出してんじゃねぇよ!!おらぁ!!」


 最後の「おらぁ!!」はオラさんだったのか通りでドスが効いてたはず……。


 「あぁん?」


 なんでもないです……。


 「お前こそぼくたちに手を出してタダで済むと思わないことだね!?」

 「ママにいいつけてやる!!」

 「まったく信じられないね」

 「……」


 3人は伸びた男子を引き連れ教室から出ていった。

 

 助かったよオラさん。早速護られちゃった……。くっ……。


 「オラちゃんやるぅ☆」


 「ふん。弱いものイジメは嫌いだ。それとラオだ!!そこのネコミミも女なら自分の身ぐらい自分で守れ!!」


 オラさんちょっと照れてる。かわいい。


 「……」


 あ、あれ?無反応?ネコミミちゃん?


 ネコミミちゃんの正面に回ってネコミミちゃんを見ると……、


 「くぅ~」

 

 ね、ねてる……。うそ……。


 「こ、こいつ……」


 「どうどうオラちゃん☆」


 周りで僕たちがネコミミちゃんを囲んでいると……。


 おもむろにネコミミちゃんは大きなクリクリした目をゆっくり開けたかと思うと、座席で大きなアクビと大きなノビをした。


 猫っぽい。あ、犬歯はやっぱり僕より尖ってるんだね。


 「……授業おわり?」


 う、うん……。


 「にゃら、寮へ帰る……」


 ネコミミちゃんはそれだけ言うとそのままそそくさと教室から出ていった。




 これには僕を含め教室に残されたクラスメートはあぜんとする他なかった。



 

猫派です。

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