Welcome to RORI world ③
気がついたら、公園の中にある木々の茂みにいた。自分でもいまいち記憶が無いのだが、無意識であの場から離れていたらしい。
何やら、とんでもないモノを見た気がするのだが、どうも思い出せない。
確か幼女が、お父さんとか、あなたとか。
「どうせ、おままごとか何かの設定でしょ。ホントに父親なんてあり得ないしさ」
まぁ、ロリ夫婦とか、それはそれで萌えるよね!
ま、でも、さ。もし父親まで幼女だったら、男の人は何処にいるんだよって話だよね。
「だから、ここを出て市街地を見渡してみれば、男だって普通に……あれ?」
公園を出て、出店が立ち並ぶ広場に出た私が見たのは、一面の幼女だった。
自分でもおかしくなったみたいだが、本当にそうとしか言いようが無い。
ファーストフードやら、アクセサリーやらを売る店主のおっちゃん。それを、親にねだる子供と、困り顔の両親。携帯片手にスーツ姿で何やら話し込んでいるサラリーマン。電気屋にあるテレビで映ってる、ニュースの原稿を読み上げるキャスターさん。
それらは、日本でも当たり前の光景。違うのは、それらが全て幼女だという事だよ!
いやいやいや、何コレなんなのコレ。カオスにも程があるよ、この光景。もうアレだ。ここは異世界なんだ。それは、認めるしかない。
確かに私、幼女だらけの世界に行きたいとか、今朝言いましたよ。
でもさぁ、神様。ホントに送る事ないじゃない! 「幼女幼女うるせぇよオメェ。現代じゃどうしようもないから、もうロリ世界に行ってこい。そのまま帰ってくんな」って事なの⁉
「冗談じゃない! 穂村ちゃんの成長も見届けてないし、他にもやり残した事いっぱいあるのに、異世界なんて行ってたまるかぁ!」
幼女だらけの世界は、私にとって魅力的だ。定住出来たら、最高に居心地がいいと思う。
見れば幼女に当たるからねぇ。可愛い幼女、24時間見放題だよ。
それでも、まだ日本にやり残した事が多すぎる。姉として、穂村ちゃんの成長を見届けなきゃならないし、まだ世界の幼女を巡る旅にも行ってない。異世界に転移なんて、その後でも十分だ。少なくとも、この歳で行く必要なんて無い。
「その為にも……そう、L2ちゃんだ! あの娘なら、帰る方法も知ってるはず!」
そうだ、そもそも私は、L2ちゃんに連れられて、この世界に来たんだ。何故だか一緒にいなかったけど、あの娘を探せば、帰る手掛かりを掴めるはずだよ。
でも、何処にいるんだろ、L2ちゃん。日本じゃ交番にでも行けば、どうにかなりそうだけど、ここじゃ全く勝手が分かんないんだよなぁ。そもそも、戸籍も何も無いから、身分証明とか無理っぽいし。
「ダメだ、詰んでるなぁ、私。どうにもなんないよ」
この前読んだ異世界小説の主人公が恨めしい。アイツ、神様みたいなのに、アレコレ教えて貰ってやがったんだよね。只で強くなってるし、ホント、イージーモードだよ。しかも、その神様も可愛い幼女だったしさぁ! チクショウ!
「……妬んでも、しょうがないか。配られたカードで、頑張るしかないもんね。そうだ、そうだよ! 私だって、あんま恵まれた体格じゃ無かったけど、幼女の為にスピードとテクニックを鍛え上げて、巨漢とか倒してきたんだ! だから、今度も何とかなるさ!」
そうだ、やってやろうじゃない! へこたれてたまるもんですか! フハハハハ! ……ハァ。
ダメだ、今度は気持ちだけじゃどうにもなんない。だって異世界だよ。力だけで、どうにかなるもんじゃあ無いよ。あ~あ、ホント、どうしよ。L2ちゃんを地道に探すしかないのかなぁ。
「あ、あのぅ、そこのお嬢さん。困っているようですが、ど、どうかしたんですか? 僕でよければ、力になりますよ。これでも、おまわりさんですし」
おっと、いかんいかん。うなだれてたら、親切な警察官に心配されちゃったよ。
「だ、大丈夫です。ありが――ええっ⁉ あ、あなた……」
「ど、どうかしましたか? 本官が、なにか?」
「いや、だって貴方……」
ロボットじゃん! このお巡りさん、ロボットだよ!
「しかも、ジ○だし! ○ム頭だし⁉」
「ジ、○ム頭? それって、僕の事⁉」
そうだよ、貴方以外に何があんのよ! 頭部が十字で緑だよ!
あ、ちなみに女子高生の私がジ○の事知っているのは、お父さんの部屋にいっぱいガ○プラがあるからです。部屋に行く度に見るもんだから、もう覚えちゃったよ。
よく見たらこのジ○さん、人間に近いスムーズな動きと、感情を持っている。困っていたら、助けてくれようとしてくれたしね。二メートル近い金属の体だけど、ほとんど人間と言ってもいいのかもしれない。
「そ、それでお困りでしたら、え、遠慮なく申してください。な、なんでも、力になりますよ」
照れながら、それでも親切に力になってくれようとしている。なんだか、橙子ちゃんに似てるなぁ、この、人? 恥ずかしがり屋で、親切な所とか、そっくりだよ。
だから、結構信用出来そうだね。この人にL2ちゃんの事、聞いてみようかな。
「レディの扱いがなっていないなぁ、M3。ナンパにしても、もう少し上手くやるんだな」
「ち、違うよM2! 僕はただ、マグナムガードとしての本分を!」
L2ちゃんの事聞いてみようと思ったら、別のロボットが出て来た。
そして、今度は……ザ○だ! 頭部の特徴的な一つ目に、口元のエネルギーパイプ!
「子猫ちゃん、迷子かい? なんなら、この俺様が、エスコートしてやるぜ。最高の、ミッドナイトにな。どうだい? この美男子と、熱―い夜を、過ごしてみないかい」
いや、どうだい? って言われても、ねぇ。美男子って言うか、一つ目だし。私、残念ながら、人間だし。キザっぽい人、正直言って苦手だし。
それに、子猫ちゃんとか、やめて。こちとら、そんな風に言われる様な人生、送ってませんよ。
「おいおい、なに二人して絡んでんだよ。その娘、困ってるだろ~」
「な、なんだと、M1! この俺様の、クールアイに、文句でもあるってのかっ!」
「ぼ、僕は親切心と、マグナムガードとして……」
あ、またでた。今度は……ガ○ダムだ。V字アンテナに、人間みたいな二つ目がついてる。
何か……最初はビックリしたけど、もうロボットにも慣れちゃったなぁ。
「あ、そこの君、可愛いね。お困り? だったら、俺が相談に乗るよ。いい店知ってんだ。そこでお茶でもしない?」
「はぁ……」
このガ○ダム、主人公機のくせになんかチャラいな! なんつーか、渋谷とか原宿にいっぱいいそうな感じだよ!
それにしてもコイツ等、ホンット人間臭いなぁ。ナンパしてるしさぁ。
「ってか、私の初ナンパ、ロボットなんだ。まぁ、いいけどね、ロリコンだし。男とか……興味無かったし。むしろ、撃退する側だったし」
そういや、橙子ちゃんと街で遊んでいる時も、何度かナンパされたなぁ。まぁ、皆彼女目当てで、私はついでだったんだけど。
私って、人間にはモテないのに、ロボットにはモテるみたい。自身の性癖もさるごとながら、我ながらホントにどーしよーもないなぁ、ははは。
「首都が初めてなら、このM1が案内するよ」
「悪いな、この子猫ちゃんは、この俺様がエスコートするんだよ」
「ぼ、僕だって!」
「い、いえ。結構です。お気遣い、ありがとうございました」
「「「‼」」」
いや、ね。お気持ちは嬉しいけど、私はやっぱり人間だし。男ですら無理っぽいのに、ロボットとかハードル高過ぎだし。
「はぁ……M2、M3。これで九十九連敗。やっぱ俺達、モテない星の元に製造されたっぽいなぁ」
あ、なんかすいません。私、人間の上ロリコンなもんで。
「へこたれるな、マイブラザー! たかがまだ九十九だ! 何度敗けようが一度でも勝てば、それでいいじゃないか! 過去を振り返るな!」
うん、その心意気は買うよ。だけど、もう少し自分の敗因を研究した方がいいと思う。過去の経験を生かさなくちゃ。
「ええっと。す、すみませんね、なんか。兄達が迷惑かけちゃって……はははは、はぁ」
ホントすみません。貴方の純粋なハートを傷つけちゃったみたいで。
「まぁ、なにかお困りでしたら、本官にご相談下さい。マグナムガードとして、お力になりますよ」
そうだ……この人警官だった。だったら、L2ちゃんの事も、聞けば分かるんじゃあないかな!
「では、お聞きしますが、L2という娘を知りませんか? はぐれてしまったみたいで、探しているんですよ」
「L2? 正式な製造番号はご存知ですか?」
「い、いえ……」
あ、やっぱり仇名みたいなもんなんだ。この人達も、M1とか言ってたから通じると思ったけど、兄弟の略称だったのね。
「そうですか……では、難しいですね。まぁ、なにか分かったら、こちらの番号におかけ下さい。ご協力させて頂きますので。それでは、私らは失礼します」
「ど、どうも」
チラシを渡すと、兄弟達は互いに慰め合いながら去っていった。なんだか、悪い連中じゃなかったなぁ。結構面白そうな奴等だったよ。
人間として会えたなら、恋人は無理でも友達にならなれるかも。なんて考えながらチラシに目を落としたら、そこには幼女の写真が写っていた。
「か、可愛い! グッドだよ、コレ!」
指名手配犯の写真だったけど、写ってたのは蜂蜜色の綺麗な髪をした、ボブカットのおっとり幼女。
罪状は、国家反逆罪みたいだけど、何したんだろ、この娘。とてもおとなしそうな感じなのに、悪い事するような娘には見えないけどなぁ。人は見かけによらずって奴かねぇ。
「お困りの様ね。どうかしたのかしら。見慣れない顔だけど、首都は初めて?」
「え……」
写真を見ながら唸ってたら、また別の人に声をかけられた。この町の人? は、親切だなぁ。それにさ。
「に、人間だ。それも、大人のお姉さん。ロボでも、幼女でも無くて」
そう、今度話しかけてきたのは、綺麗なピンクのドレスを身に纏った、正真正銘大人のお姉さんだった。
ははは、そうだよね! やっぱちゃんと大人とかいるじゃん! 幼女の世界なんて、流石に無理があるよね!
「貴方、疲れているみたいね。これでも飲んで、一息ついてから話を聞かせて頂ける?」
「あ、どうも」
そう言って、飲み物まで差し出してくれた。いやはや、ホントに親切なお姉さんだなぁ。
その考えは、ストローを口に付けた瞬間に吹っ飛んだ。
「ご、ゴブァ!」
な、何なのコレ!ドロっとしてて、なんだか形容しがたい酷い味がするよ! ってか、明らかに人間の飲み物じゃあ無いんだけど!
「ご、ごめんなさい! ブラッド社の軽油は、口に合わなかったかしら? それとも、バッテリー式だった?」
軽油……軽油⁉ 私はヒーターじゃあ無いんだよ! そんなもの、飲めるかぁ!
「大丈夫? 立てる? 何なら、手を貸すけど」
「ど、どうも……」
それでも、この人に悪意は無いっぽい。今も、心配そうな顔で、手を差し伸べてくれている。だから、怒る訳にもいかないなぁ。
手を取り、体を起こす。その時、ちょっと彼女の手に体重を乗せ過ぎたのか、腕がすっぽ抜けた。
「あら、ごめんなさい。なにせ旧式なもので、ちょっと関節の接着が弱いのよ――って貴方、大丈夫⁉」
私の意識は、もう無かった。色々と起こり過ぎて、もう限界。意識が、飛んでいく。
「問題無い。私の身内。だから、私が預かる。迷惑かけて、済まなかった」
「そ、そう。ならいいけど、ちゃんと整備してあげてね。この子、調子がおかしかったから」
「……了解。対象を確保。直ちに、帰投する」
気を失う寸前。聞き覚えのある声が聞こえて来た。
本日二度目の気絶。一日に二度も気絶なんて、初めてだよ、ははは。