Welcome to RORI world ②
あの娘の家? を飛び出した私は、そのまま十分ほど走ったと思う。気がついたら、どこかの広場にたどり着いていた。噴水や遊具があって、幼女が駆けまわっているから、児童公園かなんかだと思う。
とりあえず、楽しそうにはしゃいでいる幼女を見て、エネルギーを補給。よし、補給完了。
気力も回復したし、とりあえずその辺にあったベンチに座って、状況を整理しようか。
「それにしても、なんだったんだろ、あの、棒?とんでもない威力だったけど……」
私の知る限り、あんな兵器は物語の中にしか無かったはず。少なくとも、現代の科学でビーム刃などあり得ない。
現代じゃ、無かったら?今とは違う世界だったら、そんなモノだって……。
「な~んて、そんな訳ないじゃない。異世界転生なんて、そんな無茶苦茶な」
まぁ、確かに今朝。異世界に行ってみたいとか思いましたよ。でもさぁ、実際に行けるだなんて思えるほど、私も能天気じゃあないよ。
「それに、公園もあるし、道路には車も走っているしね。だから……アレ?」
隣接する道路には車が走っているけど、妙だった。
「タイヤが、無い。空に、浮いてる? それに、あんな形の車見た事無いよ……」
そう、道路を走っているのは確かに車。でも、それは流線形の細長いフォルムで、何より地面から一mほど浮いて走っていた。空飛ぶ車なんて、そんな話は聞いた事が無い。今の自動車技術で、そんな事が出来るとも思えない。
愕然としながら辺りを見渡す。此処は、どこかの町内で間違いない。間違いなんだけど。
「明らかに、日本じゃあ、無いよね」
町並みは、レンガ造りの建物が立ち並び、道路も石畳で綺麗に舗装されている。まるで、中世ヨーロッパの街に来たみたいだ。
ただ、道路を走っているのは馬車では無く、車? だし、公園で駆け回っている幼女たちの服装も、今とあまり変わらない。遠くには、ビルとかの高層建築も見えてくる。
「なんか、中世ヨーロッパというより、現代や未来の古都みたいだなぁ。歴史を守るため、ちょっとだけ町並みをそのままにしてます、みたいな」
ホントに、何処なんだろ、ココ?場所が分かんないと、見当もつかないよ。
だから、まずは聞き込みだ。……そこの、砂場でお山を作ってる、十歳ぐらいの金髪ツインテ幼女、君に決めた!
「あの~訪ねたい事があるんだけど、お姉さんに、お話し聞かせて貰っても、いい?」
「私に?」
「そう! 貴方みたいなレディに、頼みがあるのよ。お姉さんを、助けてくれない?」
「分かった! このレディのフェルトちゃんに、まっかせなさい!」
レディと言われ、気を良くしたフェルトちゃんは、ちっちゃいお胸を張りながら、自慢げに答えた。
ちょろい。背伸び幼女、実にちょろい。このお年頃は、大人びたい心理があるから、簡単にこっちのペースに乗ってくれるんだよねぇ。
そもそも大人のレディなら、自分の事フェルトちゃんなんて言わないんだろうけど、そこに気づいてない所とかも、背伸び幼女は可愛いんだよねぇ~。そういや、穂村ちゃんも、同じぐらいの年頃の時―――。
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「あ、御免なさい。ちょっと、呆けてたわ」
いかんいかん。つい三年前の、大人びたいがため、自分の事レディと言ってた穂村ちゃんを思い出ちゃった。あの頃の背伸び幼女モード、可愛かったなぁ。今は当時の事言ったら、顔を真っ赤にして、滅茶苦茶怒られるけど。
「じゃあ、フェルトちゃんに聞くけど、ココが何処だか分かる? お姉さん、遠くから来たから、この辺の事よく分かんなくて、困っているのよ」
「いいよ、教えたげる。ここはね、アクアリウム公園。アルムヘイブで一番水が綺麗なんだよ!」
ああ、確かにこの子の言う通りだ。噴水の水は、透き通っててそのまま飲めそう。……ってそうじゃなくて⁉
「あ、アルムヘイブ?……それって、ゲームかなにか?」
「何言ってるの、お姉さん。この世界の首都に決まってるじゃない」
この子は当たり前の様に言ってるけど、アルムヘイブ? 首都があるって事は、多分国の名前なんだろうけど、そんな国聞いた事ないよ。
それに、この世界の首都って、変な感じだなぁ。普通、首都は国に対してのものだよね。
「お姉さん、なんか、カッコイイ! アニメみたい!」
そんな事を考えていると、フェルトちゃんが私の姿を見て、カッコイイと言ってくれた。そういや、バイザーは黒髪幼女の家に置いてきちゃったけど、今の私はサンダー・ドラゴンのままだった。
「うへへへ、そ、そうかなぁ。まぁ、作るの大変だったからねぇ」
「自分で作ったの⁉ スッゴーイ!」
はっはっは。幼女に褒められるのは、実に気分がいいなぁっ! このスーツも、苦労して作ったかいが、あるってもんよ。
「あ、お母さん! 見て見て、すっごいよ、このお姉さん!」
「なっ⁉」
お母さん、だと⁉ まずい。この格好は、幼女にはカッコいいけど、大人にとって不審者に映っちゃう。まずいぞ。このままでは、また通報されかねない。
「へ、へぇ。ホント、凄いわね。色んな意味で……」
「!」
私の恰好に対し、引き気味に現れたフェルトちゃんのお母さん。お母さん、なのだが。
「どういう、事? 穂村ちゃんと、あんまり変わんないじゃん⁉」
そう、母親であるはずの彼女は、12、3歳ぐらいの見た目だった。加えて言うなら、金髪碧眼ロングヘア―幼女だった。
この見た目でお母さん⁉ って事は、コレ、犯罪じゃん⁉ なんかエロいよ⁉
まて、落ち着け、怜奈。これは、アリなのか。この姿で、経産婦。
エロいよね、すっごく。でも、どう考えても幼女って歳じゃあ無いし、ロリコンとして、ロリババアってどうなの? アリなの、ナシなの?
ダメだ、私一人じゃあ答えられない。堂々巡りになってしまう。
ならば、我が内に眠るロリコンスピリットに聞くしかない。頼んだぞ、三つの魂よ!
怜奈A「世の中には、ロリ母性という萌えも存在する。むしろ、幼女の可愛らしさと、レディの包容力を持ったロリババアこそ、新時代のロリだ!」
怜奈B「黙れぃ! マスターの定めた幼女の定義は、9~14までの少女だったはず。そもそも、幼女の可愛らしさは、肉体的と共に、精神的にも未熟な果実の、そのみずみずしい感性にある! そのような枯れた幼女など、私は認めん!」
怜奈C「ぶっちゃけ、幼女もふもふクンカクンカ出来れば、何でもいいんじゃね」
怜奈A、B「「黙れ! 不届きものが!」」
ダメだ、アイツ等使えねぇ。延々とロリの定義について堂々巡りするばかりで、目の前のフェルトちゃんママについて、何にも言及しない。
仕方が無い。ここは、理論では無く感性で対処しよう。
「奥さん。ロリ母性ってのも、アリだと思います!」
「は、はぁ……」
Bには悪いけど、やっぱ可愛い幼女を否定出来ない。勿論、私の定義は変わらないけど、コレもコレで、アリって事で。
そう納得していると、ジュース片手に別の黒髪ショート幼女が、同じ髪色をした四歳ぐらいの幼女の手を引いて近づいてきた。見た所、フェルトちゃんママさんと同じ年頃だし、ママ友? かなんかだと思う。
フェルトちゃんが、その人を見つけるなり、まるで親に駆け寄る子供の様に、とんでもない事を言ってのけた。
「見て見て、お父さん! この人、ヒーローみたいでしょ!」
「そうなのよ、あなた。多分スタント型のアンドロイドかなんかだから、近くで、映画の撮影でもあるんじゃないかしら」
え、お父さん、あなた? つまりは、それって……。
怜奈、ABC「あるぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! お父さん、パパ⁉ 何でパパァ⁉」
怜奈A「どういう事だ! ロリ母性ならともかく、父性など聞いておらんぞ! 男の娘の間違いではないのか!」
怜奈B「いいや、違う! パターン青、ロリだ! マスターの幼女センサーは、まず外れる事は無い!」
怜奈C「ぶっちゃけ可愛ければ……無理! なんなんだ! これは一体、どういう事なんだぁぁぁぁ!」
「あ、あの。大丈夫ですか?ウチの家内が何かご迷惑でも……」
「アー、ナンデモ、ナイデス、オトウサン。ふへへ、オトウサン、オトーサン」
怜奈A「いかん、限界だ! このままではマスターが発狂してしまう!」
怜奈B「行動権を取り上げろ。緊急避難だ!」
怜奈C「いくぞ皆! マスターは、私達が守るっ!」