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ロリコンヒーロー サンダー・ドラゴン①

 幼女は、最高だ。


 ちっちゃくて、ぷにぷにしてて、いい匂いがする。


 見た目もさることながら、何より尊いのはその高潔な精神性にある。


 彼女達は、純粋で真っ直ぐな優しい心を持っている。悲しいかな、そうした魂は大人になるにつれ、自然に忘れていってしまう。

 だからこそ、尊いのだ。優しく包み込んでくれるその温かさに、私はどれだけ救われた事だろう。もっと癒して欲しい。冷めた心を温かくして欲しい。世の中、幼女の愛を必要とする人が、もっともっといるはずだ。


 だが、おかしなことに幼女と触れ合う事をこの国の法律とやらは許してくれない。身内でもなければ、幼女を抱っこしたり、一緒にお散歩したり、お風呂に入ったりするのは犯罪だという。


 その為、救われない魂を救済する代替物が必要だ。愛でても、ハアハアしても責められない、そんな魔法のアイテムが……。


 幸いなことに、この国でそれを手に入れるのは容易だ。今日も、登校ついでに買ってきた。

 私は気を整え、拝み、そして読む。

 読み終え、深呼吸する。そして、胸に高鳴る情熱を思いっきり吐き出した。


「エリナちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! 今月も、最っ高に可愛いよぉぉぉぉぉぉ!」


 私、星井怜奈(ほしいれいな)は、今日発売の月刊ロリロリを片手に、朝礼前の教室で椅子から立ち上がり絶叫していた。

 エリナちゃんとは、今大人気の漫画、魔王少女エリナの主人公にして新米魔王のエリナの事である。大魔王だった父の跡を継いだ新米魔王エリナの奮闘記を描く漫画だ。


 いやぁ今月もエリナちゃんは最高に可愛いなぁ。本当は怖いのに、勇気を振り絞って勇者に立ち向かう所とか本当に守ってあげたくなる。私もこの世界には入れたらいいのに。そうしたら、名ばかりの勇者をボッコボコにして、お礼にエリナちゃんに頬ずりして貰って、一緒にお風呂に入って、その後、そんでもって……。


「あ、あの、怜ちゃん。皆、見てるよ。その顔、危な過ぎるよぉぉ」


 妄想を中断し、顔を上げると親友の橙子ちゃんが心配そうな顔をしていた。きょろきょろしながら、周囲の様子をうかがっている。

 園崎橙子(そのざきとうこ)ちゃん。私と同じ二年A組のクラスメイトで、一番の友達だ。


「いいのいいの、気にしないで。周りの視線なんてどうだっていいんだから。それに、皆もう慣れっこだしね」


 その通り。クラスメイト達は何事も無かったかの様に、宿題をしたり読書をしたりと思い思いの時間を過ごしている。誰も、私の事なんて気にして無い。


「慣れっこ、じゃなくて、関わりたくないだけなんじゃ……」

「え~そうかな。まぁいいや、どうでも。こんな連中にどう思われようと、ぶっちゃけどうでもいいし。ゴーイング、マイ、ウェイ! 私は私の道を行くのだよ!」

「れ、怜ちゃん! そんなこと言ってると、クラスの皆に怒られちゃうよ

「気にしない気にしない。例え束になってかかって来ようが、私なら片手でちょちょいのちょいだもんね!」


 その通り、とある目的のために、鍛えに鍛えたこの身体。男子高校生程度が勝てると思うなよ。楽勝だよ、楽勝。


「それに、心から大好きなモノもあるから、今がとっても幸せだよ。可愛い妹も、かけがえのない親友もいるしね」


 ただ、その可愛らしい妹が、最近妙にそっけない。私の通う誠心高校は中高一貫校だから、先月中等部に入ったので時たま見かけるんだけど、会っても他人のフリするし、家でも一緒にお風呂に入ってくれなくなった。昔は、お姉ちゃんお姉ちゃんと懐いてきたんだけどなぁ。


「か、かけがえのないなんてそんな……。皆、見てるよ~。は、恥ずかしいよぉ」


 ?おかしいな。私は事実を言っただけなのに、何が恥ずかしいのか、うつむいちゃったっよ。私、変な事言って無い筈なんだけどなぁ……。


「橙子ちゃん可愛いんだから、もっと自信を持って堂々とした方がいいと思うな~」


 お世辞では無い。橙子ちゃんは本当に、ビックリするぐらいに美少女だ。綺麗な黒髪に、お人形さんのような整った顔立ちをしている。

 ストライクゾーンからは外れてしまっているのが実に悔やまれる。昔は、本当に可愛らしい幼女だったはず。出来れば、その時に会いたかったなぁ~。


「それに、このおっぱい! こんな凶悪なモンぶら下げやがって!」

「うひゃあ!」


 橙子ちゃんのおっぱいを揉みしごきながら、この巨乳の秘密を探る。うん、前々から大きいと思っていたが、こやつDからEになっておる。同い年なのにAAの私とは大違いだ。


「羨ましいなぁ、いいなぁ。私なんてぺったんこだしさぁ。これさえあれば、幼女を抱いた時に母性的な感じが出て、好感度百二十パーセントアップが可能でしょ。それに、自分のちっぱいと見比べて、やきもちとか焼いてくれるしさぁ」

「れ、怜ちゃん……」

「おっぱいの感触で『お母さん』とか呟いちゃったりとかさぁ……ぐへへへ。おっとごめんごめん。ついつい妄想がひねちゃったよ」


 まずい、橙子ちゃんは恥ずかしがりやだから、このおっぱい調査は、三十秒が限度だった。ついつい妄想に入り込んで忘れてたよ。 ちょっと調子に乗り過ぎて、いつもより強くもんじゃったからか、胸を押さえてうつむいてしまった。気まずいのは嫌だし、ここは話題を変えよう。


「そ、そういやさ、今異世界転生とやらがブームなんでしょ。ほら、ネット小説とかでさ」

「そ、そうみたいだね。た、たしか、主人公が剣と魔法のファンタジー世界に転生して、そこで大活躍するみたい」


 そう、昨日寝る前にネットサーフィンしてたら、たまたまそんな感じのWEB小説にたどり着いたのだ。そこで主人公は、現代日本からファンタジー世界に転生して、神様から貰った力で大活躍してハーレムを作っちゃうんだよね。


 憎らたしい事に、その中には獣耳やらエルフの幼女もいやがった。そんな可愛い幼女にちやほやされる主人公を見て、危うく嫉妬でモニター叩き潰すところだったよ。しかし、あくまで構成要素の一つで、メインは同年代の王女様、幼女は脇役でしかなかったんだよね。


「だったらさ、幼女だけの異世界があっても、いいと思うんだけど!」

「……え?」

「だからさ、人間すべてが幼女の異世界。そこでさ、悪党を倒しまくって、幼女を救いまくってロリハーレムを作ったりするんだよ!私ならさ、素手で盗賊ぐらいなら余裕で倒せそうだし」


 私のアイデアを聞いた橙子ちゃんは、呆れたような顔で呟いた。


「……確かに怜ちゃんなら、盗賊どころか、ドラゴンにだって勝っちゃいそうだよね。……はぁ、怜ちゃんは法律がきちんと整備された世界に生まれて、本当に良かったよ。中世レベルの世界に生まれていたら、どうなってたことやら」

「失礼な! 私はロリコンである前に、紳士でもあるんだよ !幼女が悲しむ様な事は絶対にしない! 誠心誠意愛を込めて接するよ。足りない分は二次でカバーだ!」


 そう、私にとってロリアニメやロリ漫画は、この身にたぎる幼女への愛を制御する為の、大切なガス抜きなのだ。そうして幼女成分を補給する事で、私は今日も穏やかに生きられるのです。じゃなきゃ、とっくに犯罪者になってるよ。


 私と橙子ちゃんが異世界について議論していると、何処からともなくささやきが聞こえて来た。本人たちは聞こえない様に小声で言ってるみたいだけど、おとなしい幼女の小さな声を聴くべく鍛え上げた私の耳なら、息遣いまでバッチリ聞こえてるのだ。


「くそう、星井の奴、さっきから言いたい放題言いやがって……」

「ああ、その気持ちは俺にもわかる。でもな、誰もアイツも止められないんだ。知ってるだろ、竜二先輩率いる爆龍団を素手で潰した伝説を」


 爆龍団とは、三年の竜二先輩が不良生徒をまとめて作った、チンピラ紛いの集団だ。たしか、橙子ちゃんにしつこく言い寄ってたから、構成員ともども、おしおきしてやったんだよね。どいつもこいつも怖そうな見た目だけで、てんで弱かったんだよなぁ。


「アイツ、何であんなに強いんだろうな。人間辞めてるよ、化け物だな、ありゃあ」


 大変失礼なワードが聞こえて来たので、流石に私も黙っちゃいない。その男子の所まで行って、顔面にアイアンクロ―。掴んだまま三十cm程持ち上げてやった。


「化け物とは失礼な。私は、幼女が大好きなだけの唯のロリコンよ」

「いだだだだっ! す、すみませんでした。は、離して……」

「そうね、私も大人げなかったかな。痛かった? ゴメンね」


 いかんな、ついやり過ぎてしまった。顔に跡がついちゃってるよ。


「み、見たか、佐藤を掴んで、腕一本で持ち上げちまったよ。星井の奴、なんつー握力してんだ」

「あ、あの細腕で、一体どうやって持ち上げたんだ?」


 あちこちから、そういった疑問が聞こえてくるけど、みんな分かってないなぁ。腕だけじゃなくて、腰を回して体全体の力を使えば、人一人結構簡単に持ち上がるもんなんだよ。

それに、私の体は増量と減量を繰り返して、全身とことん鍛え上げたんだよ。今増量期だから、ちょっと二の腕ぷにぷにしているけど、この中には、長年鍛え上げた筋肉さんが詰まっているんだから。


 前に、橙子ちゃんにこの事を話したら、「女の子なのに、どうしてそんなに鍛えているの?」と不思議そうな顔をされた。


 確かに、唯の女子高生なら、体を鍛える必要なんて無いかもしれない。だが、私は違う。自身に課した使命の為、体を鍛え武術に励む必要があるのだ。

 ま、武術って言っても、映画の中で憧れた俳優の真似ごとしているだけなんだけどね。ジークンドーとかって、かっこいい上実戦的でとっても便利だ。


「そういや、そろそろかかってくるはずだよね。さて、とっとと片付けてくるか。遅れると思うから、橙子ちゃん。ゴメンけど言い訳よろしく」

「れ、怜ちゃん⁉」


 私は、荷物片手に教室を飛び出した。そろそろ、下手人がやって来る頃だ。手元のモニタ―には、昨日仕掛けた隠しカメラにバッチリ映っていた。確認を終え、急いで校舎裏の森へ急行する。




「行っちゃったよ……どうしたんだろ、一体」

 怜ちゃんが去った教室で、一人呟く。


 そういえば、お友達になってから、もう半年ぐらいになるけど、怜ちゃんが何で鍛えてるのか、全く分かんないんだよね。


 さっき、私の事可愛いとか言ってたけど、怜ちゃんだって相当なものだと思う。

 鍛え上げられた全身は、まるで美しい日本刀が如く、美しい。顔立ちも、美少女というよりは美人といった感じで、どこか大人びて見える。日本人離れした美しいショートの金髪も相まって、まるで、外国のモデルさんみたいだ。


 美少女では無く、美人だと思えるのは、彼女の眼にある。その蒼眼は、射貫かれるかの様な強い輝きを放っており、見つめられるだけで吸い込まれそうになる。その眼が、実年齢よりも数歳、彼女を大人びて見せていた。


 童顔で、未だに中学生と間違えられる自分とは、正反対だ。大人っぽくて、カッコ良くて凛々しくて、男女問わず好かれる外見をしている。私は、そんな怜ちゃんが大好きなんだけど、彼女の美貌に悪い虫がつかないかちょっと心配だ。


 まぁ、中身がアレだから、そうはならないんだけどね……。


「竜二先輩がきっかけでお友達になったんだけど、怜ちゃん、普段何やっているのか全然分かんないんだよなぁ。親友だったら、教えてくれたっていいのに……」


 一人途方に暮れていると、携帯電話の着信音が鳴り響いた。相手は、怜ちゃんの妹である穂村ちゃんだ。

「園崎さん! 今ウチのバカ姉が、高笑いしながら中等部で走っているのが見えたんですけど、何か変な事言ってませんでしたか?」

「え、ええ。片付けるとかなんとか言ってたけど。どうしたの、いきなり?」

「そんな。よりにもよって、ここでだなんて……ううっ、最悪、夢なら覚めてよ」


 穂村ちゃんは怜ちゃんの四つ下の妹で、私も家に遊びに行って何回か会った事がある。姉とは対照的に、クールで落ち着いた感じの女の子だった。

それが、今は明らかにうろたえていて、電話越しでも、慌てているのがよく分かる。


「ど、どうしたの⁉」

「すみません。答えている時間は無いんです。あーもうっ! 急いでバカ姉を止めないと、私の学校生活はお終いよ! ですので、もう切りますありがとうございました!」


 そう言って、穂村ちゃんは慌てた様子で電話を切った。


「バカ姉って怜ちゃんの事だよね。穂村ちゃん、すっごく慌てたたけど……怜ちゃん、私の知らない所で、一体何をやっているんだろう……?」



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