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ふくろうとハンバーガー

2月も終わろうとしている頃、東京駅丸の内にあるKITTEで真田はランチを食べていた。KITTEは、旧東京中央郵便局の局舎を一部改装した商業施設なようなもので日本の伝統文化商品や雑貨そしてレストランスペースがある。真田は海外に行く際は必ずここでお土産を買っていた。ベタなお土産より凝っているが、日本らしさはバッチリというちょうどいい塩梅が気に入っていた。


真田が1Fのベーカリーショップでパンをかじっていたとき、急に電話が鳴った。

携帯画面を見ると「橘」と表示されている。食事中なので後で折り返したかったが、忙しい橘が折り返しの電話にでてくれる可能性は限りなく低い。

しかたなく真田は、パンと貴重品をもって店の外へ出た。お願いだから昼時の電話だけはやめてくれというワガママだが切ない想いは隠しながら。


「もしもし、お疲れ様。」


「お疲れっす。真田さん、先日の謎かけみたいの…少しわかりましたわ…」


「おお、ありがとう!」


真田はそう答えたが、なにか橘の声は暗いというか元気がなかった。どんなに忙しくても無駄な元気が彼のポイントなのに…。

今回調べてもらった内容がたいして面白くなかったのだろうか…真田は一瞬そう心配した。橘のようなフリーランス的な職業の人は、自分が面白いと思えば盛り上がるが、そうでないと果てしなくテンションが下がる。


「それで…今晩、会えませんか?」


橘はいつものお調子ものの声ではなく、やはり硬い声できいてきた。普通なら、メールや電話で用事を済ましたがる橘の行動に、真田の不安は確信めいたものになった。これはお礼に酒でも奢らなければ…。


「わかった。じゃ夜の…えっと8時くらいで…いつものバーでいいか?」


「了解っす。」


真田は手帳をめくりながら答えたが、やはり橘の「っす」は元気がなかった。


「いったい何がでてくるのかな…」真田は、不安と期待の半分半分だった。橘が面白く感じていないということは、まったくのガセか、またはなにか危険なことだったのだろうか。夜の世界のことなので、一般のお方でない方も絡んでいることは十分にあり得た。しかし、真田は諦める気はなかった。二十歳のキャバ嬢が絡んでいる!そこに真田は無限のパワーを感じた。


実は、真田は「キャバ嬢の噂話」にはたどり着けなかったが、「TOTO」という店の情報はすこし得ていた。それは、ほんとに偶然の出来事だったが真田の飽くなき探究心からだったが、場所の手掛かりだけは掴めていた。


真田は、先に場所だけは見てこようと考えていた。そのことはマキにはまだ言っていない。別に言ってもいいのだが、最近のマキのメールは相変わらずプライベートの心理ゲームのようなものが多く、言うタイミングがなかったからだ。それに、調べ上げてマキを案内すれば、もしかしたら素敵なご褒美がもらえるかもしれない…とつまらないことが頭をよぎる。


昼食を素早くすませ、真田は東京駅丸の内地下に入り、丸ノ内線の駅を目指した。丸ビルからJR、営団地下鉄を網羅する地下はこのところ丸の内の再開発によりよりとても綺麗になっていた。

JRのホームがひしめく東京駅構内と違い、若干人はまばらだ。真田はその場所をつかつかとせわしなく歩く。いつもはノンビリが真田のモットーだが、今日は心が急いていた。


昼間の丸ノ内線は空いていた。マキに会いに行ったバレンタインディの夜はかなり混んでいたが昼間はそうでもなさそうだ。


「しかし…仕事の合間とはいえ、あまり褒められたもんではないな。」


サラリーマンが多い車内で、自由な自分をなんとなく謝った。キャバ嬢から持ちかけられた「日記」の謎を解く為という日本の経済活動からは程遠い内容だ。

気持ち的には、周りの人に土下座して謝りたいくらいだが。



20分ほどで真田の目的地、池袋についた。真田は前回のように明治通りの下をくぐらず、そのまま1Fに出た。そして、信号を渡りドンキホーテを見ながら左手にそれる。


「このあたりなんだけどな…」


真田がたっているその場所は、ふくろうのデザインで有名な例の交番とマクドナルドのある場所だった。











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