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交番


池袋駅東口を出て、明治通りを渡ると交番がある。ふくろう交番とも呼ばれ、独特なデザインと変なカタチをしていて一見交番には見えない。その目立つ外見から一応池袋での待ち合わせスポットということになっていた。ただ駅の交差点に立つと分かりやすいが、グリーン通りやサンシャインの方から駅へ向かってくる人には、裏側しか見えずそこが交番だとわかる人はほとんどいないだろう。


そんな最初の待ち合わせポイントとしては微妙な交番の横に、ファーストフード店のマクドナルドがある。2Fと3Fが店舗になっていて1Fはレジになっているいかにも都会のマックの形だ。池袋らしく若者でいつも混んでいた。


「あれ…またいるな…」


交番勤務の磯谷巡査長は、そのマクドナルドを見ながらふと呟いた。

この交番からグリーン通り、サンシャイン通りへと向かっている道はいつも人の往来で非常に混み合っている。駅から歓楽街や街に向かう人と帰っていく人だ。そんなせわしなく歩いている人を無視するかのようにそのマクドナルドの前で上を見上げながら立っている男がいる。

今夜は雨だったので傘をさしている。そういえばあそこに立っている人を見るのはいつも決まって雨だった。


「磯谷、どうした?なんかあったのか?」ずっと一箇所を見つめる磯谷に同僚の斎藤巡査長が声をかけた。

「いや、あいつなんだけど」


磯谷は、そのマックの前に立つ男を指差す。斎藤が雨で曇った眼鏡を吹きながらそちらを見ると傘をさした中年の男が、マクドナルドの上の方を見つめながら立っている。小刻みに震えているように見えるのでもしかしたら泣いているのかもしれない。


「ん…あのおじさん、泣いてるのかな…」

「だろ?実はさぁ、ここ半月ばかりよく見るんだが、なんか変でさ。って、思わねぇか?」


斎藤は、磯谷の言葉をきいて少し考えたが


「まぁ、あの店に思い出があんじゃねーか?レジのお姉さんに惚れたとか…むかしの待ち合わせ場所だったとかよ。それより雨強くなってきたからカッパきろよ。ここは俺がみとくからよ」

「ああ、ありがとう。そうするわ!」


斎藤は磯谷のようには、あの男のことを気にならなかったらしく磯谷に交代を促した。

だが、磯谷はなんか心にひっかかった。中年の男が道の真ん中で、しかも人通りが激しいこの道で人目をはばからず泣くというのも変だし、それが何度もあるというのも変に感じた。

確かに犯罪の匂いはしないし、あの男が悪いことをしているわけでもない。


「今度みたら、声をかけてみよう」


磯谷は、まだそのまま立っているその男を窓からみてそう思った

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