再会
その頃、真田はサナのマンションがある高田馬場駅にいた。
「なんか、久しぶりだな…」
相変わらず学生でごったがえすこの駅で、彼はそう呟いた。サナと会わなくなってから一週間しか経っていなかったが、なぜかすごく懐かしく思える。(これは俺の想いなのか、さなやんの想いなのかわからんが)と真田は苦笑する。
思い当たる節から、自分のカンだけでユキを探してまわった。新宿、池袋そして、真田の携帯にある「さなやんの日記」でみつけた所沢まで行ってみたが残念ながらユキの足取りはつかめなかった。
そんな時に、サナから「ユキはここにいる」とメールがきたのだ。真田はその意図がつかめずに返信はしていなかったが。
(ただ、会えばわかるのだろう)
と、漠然な気持ちだけでこの駅にきたのだ。トランクルームで見つけたiPhoneも、あれから真田なりにいろいろ試したが電源がつくことはなかった。
ただ、サナに会うことはなんとなく気が重かった。真田は、先週の月曜日に変わらずサナを迎えにいったが、彼女から連絡はなく完全にシカト状態だった。
おそらく箱根旅行でいろいろあったのでその時は、(怒ってるな〜)と会うことを諦めたが、自分がさなやんだったとキチンと言える証拠が揃うまで…ユキと会うまで彼女に会うべきではないと考え直して今日に至る。
彼女から何度か電話はあったが、何を話していいのかわからず出ていなかった。
だが、いろいろ考えたが、今、自分が一緒にいたいのはユキではなくサナだと直感で思った。
去年、どれだけ真田がユキを好きだったのかは思い出せていない。というか、顔も声も想いだせていない。だから、サナがどれだけ機嫌を損ねているかはわからなかったが、「必ず戻る」というメールを送ったのだ。
その返信が「ユキはここにいる。早く戻ってきて」だった。
サナの部屋に、ユキがいるということなんだろうか…。それともまた店に現れたんだろうか…。
真田は、そう思うとなかなか足が動かない。
とりあえず、高田馬場駅の喫煙所までいく。
と、一人の男が真田に声をかけてきた。
「ほほほ、奇遇じゃの…。こんなとこで会うとはの。さなやんさん。」
それは、上品なスーツに身をつつみ杖をついた紳士、TOTOだった。