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驚愕


由香は、その後も1年前のユキのことを懇々と話し続けた。


だが、その話の内容にピンとくるものは特にない。由香はサナにコーヒーを「どうぞ」差し出しながら話を続けた。


「ユキ姉は3月の終わりか4月のはじめ頃だったのかな…突然店にこなくなって。噂では、なんかよくない事に巻き込まれたって…」


「…」


サナは、それがTOTO絡みだとわかった。もし自分が本当にユキなら、その頃はTOTOとの契約後で、さなやんと海外逃亡を図っている頃だ。サナは彼女の言葉をひとつづつ覚えていく。もう二度と忘れるもんか…と。由香の話を一通り聞き終えるとサナは、さっき疑問に思ったことを尋ねてみた。


「ねぇ、由香。貴女、最初に私の家にきたこと覚えてる?つい3日前なんだけど…」


「え?あたし?」


「そう。あなたは自分のことをユキだと言って私の家に尋ねてきたのよ。」


「そ、そんな…こと」


由香の表情からサナは、この娘はなんにも知らないことがわかった。だとすれば、彼女は自分のように記憶を消されたか。だが、彼女は最初ユキのふりをしていたので、操られていたと言ったほうが正解かもしれない。


(これはTOTOに相談するしかない…)



サナがそう思った時に電話が鳴った。画面には「TOTO」と出ている。(また恐ろしいタイミングね…)サナはそう思いながら電話に出た。


「もしもし」


「ほほほ、TOTOじゃ。今から家に行ってもいいかの…と言ってももう家の前じゃが」


「人がいるけどそれでも良ければ。」


「ほほほ、わしも連れがおるからの」


「どうぞ〜」


サナは呆れながらそう言った。相変わらずなんでも知っているのだろう、もしかしたら、由香のことも知っているかもしれない。前に彼に「ユキにあった」と話した時も特に驚きもせず、むしろ関心がないように思えた。その時点で由香がユキでないことを知っていたのだろう。


TOTOは電話で言っていた通り、すぐにマンションのエントランスにやってきた。サナはすぐにエントランスとエレベーターの鍵をあける。由香には、お客様がくるとだけ伝えたが彼女は気にしないようだ。やがて、家のチャイムが鳴った。





TOTOはショートカットがよく似合う女性をつれていた。歳はサナよりすこし上だろうか…だが、彼女はサナを見るなり


「ユキちゃん!ユキちゃんじゃん!!私だよ、恵よ。懐かしい」


と言ってサナの手をとる。サナは勿論記憶がなかったが、相手の喜びようから歓迎されているようだった。(やはり私はユキなのか…)サナは微妙な感覚に陥った。


「あー、恵さんだ!」急に由香も、TOTOと一緒にきた娘、恵に声をかけた。


「あら、マキちゃんじゃん!おひさ〜」


恵も由香に声をかける。どうやら2人は知り合いだったようだ。サナは、頭を整理すために2人には本名で呼ぼうと提案する。


「えっと…ユキちゃんの名前しらないんだけど…」2人が声をそろえてサナに聞いてきた。


「サナっていうのよ。私、言ってなかったんだ…」


「うん。だってユキちゃん、秘密主義だったからね〜」


結局3人は、サナ、由香、恵 と呼び合うことになった。サナは若干、緊張していたが3人は仲よさそうに話している。TOTOはその様子を満足そうに眺めていたが、急に口を開く。



「わしも恵さんから、聞いた時は耳を疑ったが…まさか、サナがユキとは…」


「TOTOさん…わたしそれが疑問なの。なぜ貴女が、私を知らなかったの?」


「ふむ。わしも記憶を消されたようじゃの。今でもピンとこないしの…」



TOTOは悔しかったのか珍しく険しい顔をしていた。他の2人は、「記憶を消された」ということが驚きだったが、サナをみるかぎりそういうことなんだろうと漠然と理解する。


サナはまず、恵のことを聞いた。なぜ、彼女を連れてきたか…ということが謎だった。

恵は以前サナと店の中で一番仲がよかったと、彼女自身が言っている。


「恵さんは、新宿のラウンジにいたのじゃ。間一髪、悪い奴らから救うことができたんじゃが…」


TOTOは、ほっとした表情で言う。恵がそのあとにつづける。


「わたしね。雪って名前で働いていたの。ほら、貴女に日記を預かっていたでしょう?さなやんさんが、尋ねてきたときにすぐにわかるようにって、雪って名前にしてたの。そうしたらこの前、さなやんを探しているって男が店に来て私はいろいろ話してしまったの…。そうしたら、急に店にTOTOさん来て…私を連れ出してくれて…」




「あの店のオーナーはわしの知り合いなんじゃ。店長に話したらすぐに恵さんを渡してくれての…。で、話をきいたらユキを知っとるというじゃないか。で、恵さんにユキの写真をみせてもらったのじゃが…それがサナだったのでの。ここにつれてきた次第じゃ…」




サナはその話を頭の中で納得がいくようにまとめる。


おそらく、店か、またはユキを探しに来た男の携帯に、R.Eといのうが仕込まれていてTOTOは恵の存在を知ったのだろう。そして彼女がTOTOの言う「悪い奴ら」に狙われていることを知り急遽、連れ出したのだ。恵はおそらく店長の言うままにTOTOについていった…そこで2人はユキの話をして、サナがユキであることを知り、ここに来た…ということか…


「TOTOさん、悪い奴らって…?」


「ふむ…一言でいうと、警察じゃな…」


3人は合わせて驚愕した。



























































































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