表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/190

TOTOの指名


ミナミが更衣室から待機室に移ると、また不思議な光景をみた。



なんとサナが待機室の女の子と楽しそうに話していたのだ。サナはいつも、一人で携帯をいじっていることが普通だった。本人が意識していたかどうかは別にして、いつも「話しかけるなオーラ」を出していたはずだ。


この店の待機室は、往々にしていつも静かだったが今日は賑やかだ。

それは、一重にサナが話し込んでいるからだが…


やがてサナがフロアに呼ばれ、待機室からでていく。


ミナミは、店で一番仲のいいユミに話しかけた。


「ねぇ、ユミ〜。マキちゃん…今日変じゃない?」


「なんか…ねぇ…。まぁ、話しかけたの私だけど…」


ユミは不思議そうな顔をしながら、この顛末を話す。実は、ユミは以前からマキの私服を気に入っていて、ブランドを教えてもらっていたらしい。今日は、出勤前にその店で服を買ってきてサナに見せていた。以前も、丁寧に店の場所を教えてもらっていたが今日は殊更、マキは話に食いつてきて、服の話から好きな音楽のはなしまで広がったとユミは話した。


「いやぁ、さすがナンバーさんだけあって話うまいし…ちょっと緊張したけど…面白い人ね。マキちゃんって。確かミナミちゃんとは同じくらいに体入したんだよね?」


「うん。前はほとんど話さなかったけど…」


「私も最初、話しかけるの怖かったけど…話すと明るいし。なんかもっとツンツンしてると思ったのにな…」


「それ、私も思った。マキちゃんって可愛すぎるからもっとお高くとまってのんかと思ったけど…」他の嬢もそういい出す。


「でもなんか今日はさぁ…オーラあったね?」


「あった。あった。いいオーラね〜」



待機室にいた嬢が口々に言いだす。ミナミは完全に面食らった。彼女にいったい何があったのだろうか…と心配になるほどだ。





サナはフロアでも元気に仕事をこなしていた。いつも来てくれる馴染みの客までもが「今日は張りがあるね」と褒めてくれている。だが彼女に別段気持ちの変化はなかったのだが…。だがなにか今日はいろいろなものが見える気がした。客が次に話そうとしていること、周りのフロアの状況、スタッフの動き…


そんな時、接客中のサナに急にスタッフが近づいてきた。指名かぶりをしているとはいえ、まだ移動には早い時間だ。


「マキさん…ちょっと…」


新人のスタッフが心配そうに申し訳なさそうに話しかけてくる。


「どうしたの?」


「あの、植田さんの知り合いで、マスターと言う人が、遊びにきたと…」



サナはすぐにそれがTOTOだと気付いた。「それで?」サナが尋ねると


「いや…あの…すごく偉い人みたいで、どうすれば…」


と新人スタッフは申し訳なさそうにサナに言う。周りを見渡すと、今日は客が多い上に植田がいないのでスタッフはてんやわんやになっている。サナは、


「うんと…VIPルームにすぐに席の用意をお願いね。私が出迎えにでるわ」


と言い、今、席にいるお客さんに丁寧に断わりをいい、受付に向かった。スタッフは軽くお辞儀をしてVIPルームへといく。

(植田さんめ〜)サナは少しスタッフリーダーの不在を嘆いたが、今はどうしようもない。


受付にいくと、TOTOと初めて見るメガネをかけた紳士が待っていた。メガネの紳士もスーツだったが、一目見てしっかりとしたスーツだ。ネクタイ、靴、タイピン等もお金持ち特有のオーラがでている。


「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。」


サナはそう言ってお辞儀をする。


「ほほほ、サナ…今日はマキちゃんだの。ちょっとここで飲ませてもらえんかの。連れもおるでの…」


「はい、VIPルームをご用意していますがそちらでよろしいですか?」


「無論じゃ。商売上手じゃの…」とTOTOは笑う。「では、こちらへ」とサナ自身が席へと案内した。


サナはTOTOにそっと近づき


「もう!TOTOさん!来るなら連絡ちょうだいよ!」と文句を言う。TOTOは「すまんすまん」を笑う。VIPルームに着くとさっきの新人スタッフが用意を終えていた。サナは、そっとスタッフに近づき


「私の席にだれか、女の子つけてきてくれない?」


「あ、はい…。でも誰を…」


「いい?今は店が混んでるから、ヘルプがいる席または本指でも場内でも長くついている子を選ぶの。そして終わったらすぐにここへ戻ってくるのよ?」


サナは自分自身も信じられない言葉を発している。なぜか頭から自然と言葉が溢れ出してくる。新人スタッフは「はい!」と答えると急いでVIP席を離れた。


サナは、TOTOと連れの男を席に案内する。そしてその連れの男には


「初めまして、マキといいます。今日はご来店ありがとうございます」と挨拶する


「初めまして。近藤です。…あの失礼ですがこのお店のママさんですか?」


TOTOの連れの男、近藤はそう尋ねた。サナは目が点になり、TOTOが豪快に笑った。


「いえ、ただのホステスです。」サナが驚いて答えると


「あ、これは失礼した。やけに若いなぁと思ったのだが…忘れてください」と席についた。


サナは、TOTOに「ご指名は、ございますか?」と尋ねるとTOTOは、


「ほほほ、ではここのママさんにお願いしようかのぉ」と笑った。それを聞き、近藤も声をあげて笑った。



サナは、「はい、ありがとうございます。」


とすこし照れながら2人に答えた。
































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ