表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/190

やるしかないっすね!

橘は、新橋のBARで真田が起きるのを待っていた。


結局、彼はあの時から1時間くらい寝ている。2人はバーの常連でもあったので店のマスターも大目にみてくれ、真田のことは見て見ぬふりをしてくれていた。


「ほんと、この人はあかんわぁ…」


橘は呆れ顔で、スースーと眠る真田を見ながら呟く。しかしその言葉に悪意はない。むしろこの何事にも楽観した性格は素晴らしいとさえ思う。去年は、真田が忙しいらしくほとんど会ってはいないが、それまでは月に2,3回は飲みに行く間柄で仕事も2人でよく協力してやっていることも多かった。ドンブリなところも多いが、根は生真面目で冒険心にあふれている性格だと橘は感じていた。


「ん…ここは…」


ふと真田は目覚めた。最初自分がどこにいるかわからなかったようだったが、あたりを見渡すとそこはいきつけのバーであることがわかった。

店の若いマスターは、苦笑しながらおしぼりを持ってきて


「おはよう、真田さん」


と一言いって手渡した。続いて橘も「おはようさん」と続けた。


「あ、橘…あー、すまない。寝てしまったのか…」


「ですね。真田さん、あかん状態でしたわ」


と橘は笑い出した。とりあえず、真田に水をすすめる。真田は水を一気に飲み干すと、「よし!」と自分自身に気合をいれた。眠そうだった真田の目がすこしづつ大きくなっていく。なにせ明日は、マキと映画だ!と、橘とは全然関係のないところで元気を取り戻した。

橘は、その様子を見てゆっくりと話し始める


「起きたみたいっすね!じゃ話しますわ…うーん、何から話そうかな…」


橘は、いろんなことがおきすぎて頭がなかなかぐちゃぐちゃだった。真田が寝ている時に整理しておけばいいのだが、そこはギリギリまでなにもしない橘の真骨頂だ。


「そんなに複雑なことなのか?」


真田はすこし笑いながら問いかける。こいつは俺より寝ぼけてるんじゃないかとも思った。


「まぁ、複雑っすね。久々に、燃えましたわ!」


橘はそう言うと、タバコに火をつけて真田の方へ体を近づけた。それを聞いて真田はホッとした。どうやら橘も興味をもってくれたらしい。だったら、昼の暗そうな声はなんだったのかとも思ったがとりあえず話を聞くことにした。


「まず、キャバ嬢の噂話からいきますわ。これは1年ほど前から都市伝説的に伝わっているもので、とある「バー」に行って、一ヶ月間そこにいる男性とお付き合いするだけで大金が手に入る…というものです。噂の出処は定かではありませんが、池袋と新宿のキャバ嬢に主に出回っていたそうですわ。要は、割のいいデートクラブか愛人契約的なものでしょうな…。彼女風に言うとキャバで頑張らなくてもお金持ちのパパと出会えて一発逆転っという感じらしいですわ。」


「ほう…」真田は頷く。いかにもありそうな話だとも思った。ということは、マキはパパが欲しいってことだろうか。しかしなにか釈然としなかった。橘は続ける。


「しかしその話は、どうも誰かのつくり話しっぽいですわ。だいたい地位とお金のある男性がクラブならいざ知らず、いつペラペラ喋るかわからないキャバの女の子なんて相手にしないですわ。でも、火のないところには煙はたたずっと言うことでいろんなとこで話をきいて来ました。キャバ、風俗、そして警察。」


「は?」真田は思わず声を出した。キャバや風俗はわかるが、警察は意外だった。というか、キャバや風俗って…請求が怖いが…橘は、そこはほれと言わんばかりに話を続けた。


「そこでたどり着いたのが「R.E」いうやつですわ。そう、真田さんがSNSで拾ったといっていたやつっす。あ、ちなみに今日現在、そのワードの乗っているSNSは全て消されているっす」


真田はびくっとした。今の話はなかなか怖い。わずか2週間でひとつのワードだけのSNSのデータをすべて消せるなんてどういうことだろうか…


「R.Eは、正確には(リアル.アイ)と言うらしいですわ。ただそれがなんなのか

詳しいことは今、正直わかりません。さすがにそれ以上は警察の方も口を閉じてしまいましたから…あと、R.Eのことを話していたキャバ嬢も見つけたんやけど、それがなにかまではみんな知らんみたいやったっす。」


「なんか、それ…やばくない?」


真田は、若干引き気味で答える。橘は間髪いれずに首を縦にふった。

さらに、追い打ちをかけるように、橘は先ほどの真田スマホ乗っ取り偽メール事件と高田馬場で自分に降りかかった災難について話した。


しばらく二人は沈黙していた。この予想以上の出来事に、混乱が得意な2人はすっかり頭がくるくるしていたのだ。


「これから…どうしようか…」


しばらくして真田がウィスキー…ではなく、水を口につけて呟く。

橘はすこし笑って


「とりあえず、自分は探偵つづけますわ…真田さんはどうします?」


ときいた。真田はすこし迷っているように見えたが


「どうするって…こんなおもしろいこと久々だわ!」


と、ニヤリとして答えた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ