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ここでさなやんでますか!?



サナが14歳の時だった。



その頃のサナは学校にもあまりいかず、夜な夜な仲間たちと夜の街へ繰り出していた。田舎から電車で上京し歩く夜の街は、キラキラでいつもサナたちを迎えてくれたいた。だがそのころのサナはここが欲望という化け物がうずまく街ということを知らない。ただ、怖いものなしで友達と闊歩している…そんな状況だった。



ある日、サナはいつものように夜の新宿の街を歩いていた。サナの住む地元から急行で30分くらいの距離なので、ほぼ毎週きている。ただこの日はサナは一人だった。別にどこも入る店はないが、ただここを歩いてるだけで大人になった気分になる。


「お、サナじゃん」


そんな時、サナは急に声をかけられた。見ると、前回遊びに来た時に友達とともにナンパされた男だった。確か名前を青山といったかなっとサナは思い出す。


「ああ、青山くん…」


サナは少し声を細めていう。この間あったときから散々誘いのメールをうけていたが、サナは返信していなかった。


「なにしてるん?暇ならカラオケいかね?」


金髪に、鎖をジャラジャラつけたチャラいを絵にかいたような男だったが、サナはメールのことと、特に今することがないので「いいよ…」と言った。


「ノリいいね!じゃこの間のやつらも呼ぶから、いこうぜ」


青山はそういうと、歩きながら電話をかけている。サナはなんとなく不安があったが若さが勝った。(女の子もきてくれるといいけどな…)


青山が連れて行ったのは、シダックスとか大手のカラオケではなく、昔から個人でやっているような狭く汚い店だった。従業員はおじいちゃんとおばぁちゃんだけで、そのくせ3階まであった。青山はなぜか3階の一番隅の部屋を選んでいたようだった。


部屋についてからしばらくすると4人の男たちがやってきた。青山を揃えると5人だが…


最初は特に何も起こらずノリノリで、歌を歌っていた。青山たちは高校生くらいの年だったが、テーブルの上には酒が並びタバコの臭いが充満している。

そんな時、サナに青山が近づいてきた。


「なぁ、俺たちつきあわねぇ?」


サナはびっくりしたが、もちろんその気はまったくなかった。

しかしまわりの男たちもそれを聞いて騒ぎ出す。


「おお、いいじゃん!付き合っちゃえよ」


「キスしちゃえ。キス!」


「もうエッチもしちゃえ!」


「おれら見ててやるから!」


集団の心理というのは恐ろしい。サナは恐怖でなにも言えない。

青山がのしかかってくる。周りにはさらに卑猥な言葉が飛び交う。


「いや…」


サナがやっと発した言葉に、青山が突然キレた。


「ふざけんな!!」


バーンという音がする。サナは顔を殴られ、そのまま気絶してしまった。





サナが次の瞬間に目覚めると、まわりには誰もいなかった。カラダ中が痛い。音がなにもしない…。頭は真っ白だったが、まわりの風景がさっきの出来事を思い出させた。

ふと自分の体の方を見る。夢であってほしい…と思ったが、残念ながらサナは裸だった。ただ、黒いジャケットが上からかかっていた。


まわりをみると、サナの服と下着が散乱している。

サナは、ぼうっとそれらを拾う。不思議と涙は出なかった。

なにも考えたくなかった。ただ散らばった服を集め、一枚一枚着ていくとだんだん涙が溢れてくる。


サナはそのまま何もなかったように、部屋をでた。体を引きずりながら受付にいくと、ラストまでお金はもらい済みだという。サナはお金をほとんど持っていなかったので、それは助かったが…



TOTOは、なるべく悲しい現実のところは上手く言わないように語ってくれていた。だがその話はまさに、サナが体験したそのものだった。


TOTOは続ける。

「じゃが、サナさんや。おまえはその時、最後まで乱暴されたと今でも思ってるじゃろ?」


サナは、思わず声をあげる。辛い体験の話を蒸し返されたので涙はこぼれていたが。


「違うの!!?」


「ああ、あのクズどもが、お前の体を隠すようにジャケットをかけるかの?金を払っていくかの?」


サナは、はっとなる。確かにそうだ。



「あの時、あの状況で一人、飛びこんでいった奴がいたんじゃ」


「そ、そんな…」


サナはおもわず声をあげる。


「かなり、ぎりぎりだったらしいがの…」


TOTOは、そう言っておそらくTOTOが一番嫌いだと思われる男の名前を口にした。


「その男の名は、さなやんじゃ。」
























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