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マキとの探検

マキが見事お客の説得に成功したのはわずか2分後だった。


「よし、しんちゃん大丈夫だ!」


マキは何事もなかったように再び彼の横に座る。真田は若干、マキのお客さま対応に「それでいいんかい」と心で突っ込んでみたが、あえてなにも言わないことにした。ハタチの感覚というのはこんなもんかと納得することにした。


これが大人な俺との差だぜ!


と真田はかっこいいことを考えたていた。多分、相手のお客さんはマキと会うのをすごく楽しみして、何日も何日も今日の構想を練っていたはずだ。まぁその構想の中身は真田にはわからないが。だがこういう目にあうということは、けしからんことを考えてたんだ…きっと と思い直した。天罰があたってしまったと思うことにした。もし自分だったらかなりイラつくこと間違えないと思ってはいたが…


そんなことを考えていて無言になった真田を見て、マキはちょっとテンションを落として話し始めた。多分、真田がいいかげんな自分に怒ったかと思ったのだろう。


「しんちゃん、なんか怒ってるでしょ?いいじゃん、キャバなんて合法的な詐欺みたいなもんよ」


「…」


真田は無言で頷いた。

素晴らしい名言だと感心した。と、同時に俺だけは騙してくれるなと、切実に願う。心が弱い真田ならおそらく、寝込んでしまうだろう。


「そういえば…マキさぁ、ですねん口調ないんだけど?」


急に真田は話題を変えた。時に意味は無かったがなんとなく場の空気を和まそうと思ったのだ。さっきのお客さんのこともそうだが、なんとなくマキと仲良くやっていきたいと思ったからかもしれない。

マキはお店では、語尾の後に「ですねん」とつけることが多かった。それを可愛いととるか、頭わるいのかととるかは人次第だが…

するとマキはすこし微笑んだ顔になって


「あんなの、しんちゃんだって作ってるもんだって知ってるでしょ?」


と逆に聞いてきた。


「あ、やっぱり!」真田は、漫画のように手をぽんっと叩く。あの作られた世界では十分ありえると思ってはいたが実際に本人から聞くとなかなか微妙な気分になった。


「でも、あのキャラ設定、評判いいんだから。指名が倍増したわ。あ、私はお客さんによってキャラかえてるの。知らなかったでしょう?」


「確信はなかったけど…な。でもキャラかえてるのは知らなかった。で、で、他にどんなキャラがあるんだ?」


「うんとね。私の手持ちは、妹キャラとSキャラと純情キャラ、そしてバカキャラ!」


「そうなんだ!えーーー、俺は妹か純情キャラがよかったよ」


真田は本気で悔しがった。が、それとともにホッともした。

この無駄にかわいい女に純情キャラなんてやられて、惚れてしまったら地獄だ。

やはり女は恐ろしいと自分を戒めた。


二人は、そんな会話をつづけながら、結局1時間以上ムダ話になってしまった。


しょうもない改めとりとめのない会話が一通り終わった後、真田たちはここを出ることにした。


「とりあえず、この周辺でさがしてみよう」


「そうだね!」


マキは元気に答える。この元気さはキャバクラで働いているマキとあまり変わらない。素でやっているとこと、作ってるところ二つの顔をもってるんだと真田は実感した。そもそも演技とか言っても女優じゃないんだから、全部まるっとかわれることはないのだ。


真田は席をたつと、マキの分も紙カップを出口付近のゴミ箱に捨て、階段の踊り場にでた。そこでふと気付いた点があった。


「ん?」


真田は、普通に階段を降りようとしたがその踊り場に2Fに下がる階段とは、逆方向に伸びる狭い通路に目を留めた。

段ボールが積まれていてお店に来た時には気付かなかったが、確かに奥に行ける道がある。


真田はなんだが冒険心に火をつけその狭い通路の方に進んでみた。


「ちょ、ちょ、どこいくん?」


若干変な関西弁を披露しながら、マキも真田のあとに続く。するとまた左に曲がっていて、その先には4畳ぐらいの小さい部屋があった。しかも中央に4階に行けるであろう階段が見えた。


ただ2人は、そこからは進めなかった。階段の手前に鉄格子があったからだ。しかもかなり頑丈な鉄格子で新しいものとも古いものとも検討がつかない形をしていてその格子には大きな鍵がかかっていた。

真田はその格子がなんとなく貴族の門構えに見えた。この上に貴族が住んでいてマックが大好物なら面白いのに…と相変わらず意味のないことを考えていた。


「へ?この建物って4階建てだっけ?」


マキは階段を見て、そう呟いた。真田は無言で頷きながらも、なんとなくこの階段と鉄格子の構造に違和感を感じた。とてもこの古びたビルに似つかわしくないし、この位置に階段があるのがおかしかった。階段は広間の中央にあったからだ。ドラゴンクエストのダンジョンじゃあるまいしとココロの中で突っ込んでみた。と、同時にこの上にあるものに興味がわいた。

マックの店舗は3階までとなっている。となるとこの上は荷物置き場か事務所と考えるのが普通だがこの鉄格子はなんともおかしい。普通はドアだろ!と鉄格子につっこみをいれてみた。


「なんか隠し階段みたい。この上ってなんだろうね…」


マキは真田のつっこみを全く無視して真田の前にでると、鉄格子に手をかけ上を覗いてみた。だがその先は暗く、急な階段になっていて先が見えない。マキはなんとか見てやろうと、中腰で下から覗き込むがやはり暗くてよく見えない。


「!!」


マキが鉄格子から階段を覗き込んだため、真田は彼女のセクシーショットが目に入ってしまった。見てはいけない、見てはいけないと心に呪文をかけたが残念ながら、呪文は失敗におわったようだ。マキが顔をあげないことを心から願っていた。


「しんちゃん、そこに交番あるじゃん、聞いてみようよ」


マキが急に顔をあげたのでとっさに真田は視線を逸らした。


「交番?ベタに、TOTOってお店しってますかー?って聞くってことか?」


「そう!」


マキはそう言い終わらないうちに立ち上がり、小走りで階段の方へ向かった。

真田は、ゆっくりとマキに続き、頭を整理した。


マックに4階があり、怪しい階段があること

マキが胸元にスキがあり、意外に胸があること


新たな発見に胸を踊らせ


「もうすこし、眺めていてほしかったよ…」


と詮無いことをおもいながら、真田はマキのあとをおった。












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