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赤井陽:最終話 狼娘の部屋

 久しぶりにやってきた陽の部屋は実に様変わりしていた。

「……チャイナ服にいつか見たナース服、セーラー服にブレザー、ウェイトレス衣装にバニーか……」

 他にも色々と置かれている。

「凄いでしょ? バイトしたお金で集めたんだよ」

 自信満々に胸を張るが俺は首を振るしかない。

「何故こんなに?」

「いつだったっけ。ほら、冬治君がコスプレしてほしいって言ってたじゃん。だから集めてみたの」

「よりどりみどりだねぇ」

 端っこにすごくエッチな衣装を見つけたが……これは見なかった事にしよう。

「それで、まずはどれからみたい?」

「え、マジで見せてくれるのかよ」

「う、うん。冬治君がどーしても、みたいって言うのなら見せてあげるよ?」

「お願いします」

 俺は分離礼をして頼み込むのであった。

「そこまで頼まれたら仕方がないね。どれから行く?」

「じゃあ、この狼のきぐるみ」

「本当にそれでいいの?」

「ああ」

 なんだかなーといいつつきぐるみを着こんでくれた。

「お、すげぇ。狼人間だ」

「……馬鹿にしてる?」

「してないって。そして頭をとると興奮した狼が……」

 きぐるみの頭をとったが、そこには憮然とした陽の顔があった。

 そういえば薬を飲んだから満月じゃないと見た目は狼にならなくなったんだっけ。力はそのまま出せるから何かの冗談みたいな存在になった気もするが。

「うーっ……」

「……よいしょっと。じゃ、好きにしていいんだよな?」

「え、好きにしていいとは……」

 俺はそのままきぐるみに抱きついた。

「うあー、もふもふだー……すげぇ、よさそうな質感してたけど、身体全体で感じるとこんなにすげぇんだな」

 子どもがきぐるみに抱きつくのもわかる気がする。

「胸もいつもより増量している気が……ぐはっ」

 おふざけが過ぎたのかひざ蹴りが鳩尾へ入った。

「そんなにおっぱいが大きい方がいいの?」

 久しぶりに聞く心から怒った時の声だった。

 表情がわからない分、狼状態よりもこっちの方が怖いかもしれない。

「あー、陽さんや。そういうつもりで言ったんじゃない」

「じゃあ、どういうつもり?」

「成長したと思ったんだ。陽の胸が!」

 ちょっと苦しいいわけだと思う。

「……うん、よくわかったね」

 え、マジか……なんてへまはしない。

「そうか、まだ成長する余地があったんだな」

「それ酷くない?」

「こほん、失礼しました……あのさ、俺が何できぐるみを選んだかわかるか?」

「もふるためでしょ」

 拗ねたような口調に俺は首を振る。

「違う。買ったりするとき胸の所見てなかったのか? どうみても余剰が発生するだろ」

「う、うん……でも、冬治君は大きい胸好きでしょ」」

「俺はお前の胸が好きで付き合い始めたんじゃないんだぜ? そのぐらい気にするな」

「でも……」

「それと、だ。まずは時間を見ようぜ?」

 そう、実はまだ朝の時間帯だ。

 休みでも何でもない、学園のある日なのだ。

 迎えに来なかった陽から連絡がありたまには迎えに来てほしいと言われてやってきた。

「そ、そうだったね」

「ああ、ほら、行くぞ」

「うんっ」

 俺の彼女の元気が無いと俺まで元気が無くなってしまう。

 元気をもらうために付き合っているのか……そう聞かれたら曖昧に頷くしかないだろう。

 それもあくまで一部だ。

 陽にはずっと笑っていてほしい、馬鹿をやっていてほしいのだ。


どうもお久しぶりです。作者の雨月です。今回で赤井陽編終了です。彼女はアホです、そしていい子です。それが伝わればいいのです。サクサク読めればそれでいい……なんちゃって狼人間のお話でした。気になるあの子と非日常では最終話がだいぶ違うものでした。まぁ、たまにはいいかなと。大抵、私はバッドエンドを考えてしまう性質があるのですが、ちなみに陽編では野性に目覚めてしまった陽が冬治を頭からがぶりと……ま、あくまで構想ですからね。さて、次回は青色の名前を冠した人だった気がします。

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