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晩冬六花:最終話 一組として

 六花先輩との初めての初詣っ。

 あれ、初が被ってる……でも、初めてだから仕方がないのだ。

 六花先輩と、美也子先輩、百合先輩、がっちゃん先輩が来る予定だ。

 さすがに夜中は女性が多い為やめていたりする。

「待たせたかしら?」

 一番最初に来たのは俺、次は六花先輩だった。水色に、雪模様で、よく似合っていた。何を着ても様になるんだろうけどな。

 もちろん、彼氏補正抜きでだ。

「見惚れてる?」

「ええ、まぁ」

「馬鹿……」

 もっともっと、六花先輩の事を見ていたい。

 ぼーっと見ていれば六花先輩が恥ずかしがってしまうので頭を切り替える。

「意外と早かったですね。まだ、四十分ありますよ」

「早く来ないと君が電話してくると思ってね……『六花先輩っ好きですっ』なんて他の人に聞かれたら他の人が不幸になっちゃうでしょ? ああ、あんな幸せそうなカップルは眩しすぎる……ってね」

「なるほど、確かに」

 俺は居住まいを正し、咳払いをする。

 周りなんて気にしない、俺の目には六花先輩しか映っていない。

「六花先輩、好きですっ」

「……よろしい」

 周りから見たらあほなやり取りをしていると思うに違いない。しかし、俺と六花先輩が幸せならそれでいいのだ。

 こっちに、近づいてくる足音が三つ。

「年始のあいさつが『好きです』ってどうかしら」

「いいんじゃねーの」

「お二人とも、あけましておめでとうですわ」

「先輩達、あけましておめでとうございます」

 どうやら、俺の愛の告白はばっちり三人に聞かれているようだ。

「あら、早かったじゃない」

 六花先輩はいたって普通のあいさつをしていたりする。

「取り乱さないわね」

「おもしろくねぇなぁ……」

「何故ですの?」

 てっきり取り乱すと思っていた(俺も思ってた)面子に六花先輩は宣言した。

「……いずれ私は晩冬冬治になるわ。冬治が私のことを好きというよりも、私のほうが、冬治の事を好きだから……何の問題も無いの」

 良く意味がわからない六花先輩理論のようだ。

「あ、ああ、そうなのね……」

 何だか突っ込むと面倒な事になりそうだと懸命な美也子先輩は手を引いたようだ。笑顔が引きつってる。

「そうかい……おれにはよくわからんが幸せならいいんじゃね」

 がっちゃん先輩も似たような結果に到着したらしい。

「…てbんつまり、どういうことですの?」

 百合先輩だけが小首をかしげて俺に尋ねてきた。

「……ふふ、よく聞いてくれたわね」

「わたくしは冬治君にきいたつもりでしたけど、説明してくれるのならお願いしますわ」

 あちゃーという顔が百合先輩に向けられる。

 百合先輩に何やら伝えている六花先輩はおいておくとして、美也子先輩達に訊ねてみた。

「先輩達も来るのが早いですね」

「いや、おれらはもう来てたんだよ。あそこの喫茶店で待ってたんだ」

 そういって指差すさきに個人の喫茶店があった。

「まだ開いていないようですけど?」

「あの店、百合の実家なのよ」

「そうなんですか」

 てっきり、豪邸に住んでいるかと思った。

「ま、あの家に泊まってたから早かったんだよ……それより、冬治はいいのか?」

「何がです?」

「六花と二人っきりで初詣に行きたかったんじゃないの? ほら、もう卒業しちゃうじゃないの」

 がっちゃん先輩の気遣いは嬉しい。俺だってちょっとは思ったよ。

「……そうですけど、俺としては……美也子先輩、がっちゃん先輩、百合先輩たちとも初詣に行きたかったんです。だって、先輩達も卒業してしまいますからね。お世話になりました。少しの間ですけど……とても、楽しかったんです」

 あの時六花先輩に電話をしなかったら、不安な気持ちに苛まされていた俺だったら二人きりで初詣に行っていたと思う。そっちのほうがいちゃいちゃ出来た。でも、今は違う。いちゃいちゃは終わってすればいい、先輩たちとも出来るだけ一緒に居たかった。

「冬治……お前ってやつは……」

「ぐへぇああっ……こ、これが無くなるとちょっと寂しっ……いです。涙が……出ますもん」

「六花ぁ、これもらっていい?」

「それは私のよ。駄目。ほら、さっさと離しなさい」

 解放されて、一息つく。

「ふぅ……」

「冬治、まさか三年の最後になって……あなたみたいな可愛げのある後輩が出来るなんてねぇ……心底、六花が憎いわ。いっそ、刺し違えようかしら」

 美也子先輩は年始から何て物騒な事を言い出すんだろう。

「……六花、一週間だけ貸してくれない?」

 一週間で私なしには生きられない体にするからと言っている。

 残念ながら、今ではすっかり『晩冬六花専用』という肩書きがついてます。

「駄目、ほら、触んないで。しっしっ」

 二人を追い払っていると、百合先輩が近づいてきた。

「冬治ちゃん……いえ、冬治君は偉いですわね。ふられても、六花さんにしっかりと自分の想いを告げられたのですから」

 百合先輩が近づいてきていつものように肩をぺしぺしと叩いてくれた。

「いやいや、あれは……偶然が続いただけです。気まぐれとか、百合先輩達に出会えてなかったら……在り得なかったと思います」

「人生、そういうものですわよ。偶然は運命とは違いますもの」

 やたら重みのあるセリフであった。

「さ、行くわよー」

 六花先輩が俺の手を掴み、宣言する。

「まだ時間ありますよ」

「誰を待つって言うの? 全員そろってるのに」

「まぁ……そうですね」

「さ、おみくじ引くぞーっ」

「寝とり運で大吉を引かないとね」

「でしたらわたくしはおかし運で大吉を勝ち取りますわ」

 友人達と一緒に行く初詣とはまた違う雰囲気だ。

 一番普通そうな美也子先輩が寝とり運とか言ってるし…。

「冬治、他の男から睨まれてるわよ」

「はは、そりゃあ、そうですよ。何せ、六花先輩なんて綺麗な先輩に腕組まれてますから」

「よろしい、『ハーレムっすよね』って答えていたらどぶに捨てていたわ」

「冗談でも言うわけ無いです」

 今年は、きっと楽しい事がもっと起こるはず。

 卒業式じゃ、泣くだろう。

 先輩がいなくなって、俺が三年の教室を使っても少しはへこたれるかもしれない。

 でも、多分大丈夫だ。

 六花先輩は……学園から歩いて五分の大学に通うのだから休み時間だってきっと、きてくれる。

 そう思うと楽しくて仕方がなかった。


今回で晩冬編終了です。さて、いかがだったでしょうか晩冬編。我儘生徒会長? はぁ? くたばっちまえと思うかもしれません。作者は思います。しかして、それを踏まえても年上に命令されるのは非常に、喜ばしいことです。作者がMってわけじゃないとは思います。これにて【気になるあの子は隣のコ】に投稿していた分は終了、ってわけでもないんですよね。春夏秋冬編は終了ですよ。こほん、では晩冬編を一区切りとして……評価感想メッセージその他、ありましたらよろしくお願い致します。次回はおそらく、晩冬編に出ていたサブがかかわってくるんじゃないかなと思います。

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