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秋口紅葉:第九話 放課後遊園地

 放課後に遊園地へ遊びに行くとかどんだけ遊園地が好きなんだよ。

 そう言いたい相手は残念ながら風邪をひいていた。

 昨日は超元気だったのに、その後電話をかけたら何故か風邪をひいていた。嘘とは思えない、元気のなさで言っている事も弱気だった。

「じゃあ、行こうか」

「うん」

 秋口さんがいるので二人で遊園地だ。

「しっかし、和也が風邪をひくなんてねぇ…」

「へ、変かな」

「ほら、馬鹿は風邪引かないっていうじゃん」

「……そうかも」

「あれって確か、馬鹿は風邪をひいてもわからないから…って理由だったっけ」

「どうだろう」

 そんな話をしながら遊園地までやってきた。

 秋口さんの態度が若干気になる。

「今日は夜遅くまでやってるんだってさ。和也はほーんと、残念だろうなぁ」

「そっか……だから和也君は……」

「え」

「ううん、何でもない」

 入り口でお金を払おうとすると秋口さんからチケットを渡された。

「和也君が今日までだっていってたよ」

「ああ、なるほど」

 期限が今日までだから遊園地に誘ったのか。

 一日フリーパスを手に入れた俺達に怖いものなんてない……けども、時間は存在するので全部のっているわけにはいかない。

 そもそも、制服だからちょっと問題がある。

「どうしようか」

「じゃあまずは一番近いお化け屋敷に行こうか」

「そうだね」

 秋口さんはお化けが怖いわけではないらしい。

 彼女は言った。

「お化けは怖くないけれど……ごきぶりが部屋中居たら卒倒する自信あるよ」

 俺だって、卒倒すると思う。

 コンニャクが縦横無尽に襲ってくるエリアを抜けると、次は底なし沼のエリアだった。

「くるよ、来るよ……きゃーっ」

 どこか楽しんでいる悲鳴だ。この程度の悲鳴なら心配する事も無いだろう。

 最後はおそらく全速で追いかけてくるゾンビを相手に(後で聞いたらグールだったそうだ……違いがわからね)逃げまくって出口へとやってくる。

「ふぁー走った走った」

「凄かったねー」

「ああ、楽しかったよ」

「次、どうしようか?」

 あと一つしか乗れない時間帯だ。

 半分以上周れたわけでもない。

「観覧車、どうかな」

「観覧車?いいよ」

 二つ目で最後なんて勿体ない気もする。でも、時間を守らないとやばいだろう……そもそも、学生服では基本的に来てはいけない場所だ。

 秋口さんと観覧車に乗ると、ちょっと変な感じもした。何せ、目の前に秋口さんの顔があるのだ。それだけ中が狭いのである。

 向こうもどうやら意識しているようで、気恥かしかった。

「っと、終わりか。あっという間だったね」

 照れているだけで気付けば一周していた。恥ずかしくて帰り道に普段通り話せるか不安になる。でも、俺とは対照的に秋口さんはちょっと怖い顔をしていた。

「後一周、乗って。お願い」

「……わかった」

 有無を言わせぬ目をしている。これが、幼いころの秋口さん……暴君秋口なのだろうか。

「冬治君っ」

「は、はいっ」

「こ、紅葉って呼んで! さんとか、先輩とかつけなくていいから」

「えぇ? いきなりなんでさ」

 いきなりすぎて話についていけない。

「和也君の事は和也だよね?」

「そうだけども」

「じゃあ問題無いよ」

「あるよ。だって、秋口さんは一歳年上だよ。いくら友人だからって呼び捨ては…」

「じゃあ、ちゃん付けでもいいよ」

 そっちの方が問題あると思う。

 押し問答の末、更に一周して(係員さんが俺らの……性格には秋口さんの顔を見ると逃げていった)結論がでた。

「紅葉さんで、いいよね」

「うん、満足」

 こうしてようやく解放された。

「手、繋ごう?」

「うん?って、もう繋がれてる…」

 何かあったのか、それとも心境の変化なのか…紅葉さんは俺と手をつないで大喜びだった。

 もしかしたら遊園地に来て童心を思いだしたのかもしれないなぁ……。


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