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秋口紅葉:第六話 夏休みを終えて

 夏休みの友から目をそらし続けた結果が今……俺、いや、俺達の目の前に広がっている。

「残りのページの驚きの白さ」

「どこぞのCMみたいだね」

「うん」

 真っ白な夏休みの友。いっその事、記憶も消したかった。

「俺ら、一体何をしてたんだろうなぁ…」

「夏休みを満喫したよ」

「おれは水族館が一番楽しかったぜ」

「俺は遊園地だなぁ…」

「私も遊園地」

 各々が夏休みの思い出に現実逃避しつつ手を動かす。もちろん、その動きは緩慢でやる気の無さをみとめているようなものだった。

「終わらぬ事には明日は来ない。もっと真面目に取り組むぜ」

「冬治、助けて」

「無理だ」

「先生が戻ってくるまで後三十分。俺はもうやるべきところまでは終わらせたから」

「私も終わった」

 和也はこの世の終わりがやってきたような顔になった。

「うっそ。冒頭で真っ白とかぬかしてたじゃん」

「範囲はとりあえず終わったんだ」

「じゃ、じゃあ見せてくれよ」

 必死である。

 この前の告白の時みたいだ。

 そういえば、あれはどうなったんだろうな。下世話だとは思っていても、気になってしまう。

「見せてもいいけど、監視員がいるぞ」

 先生に雇われた生徒は雑談なら特に反応しないものの、不正しようとすると遠慮なくちくられるのだ。

「……わ、わかってるさ。買収してくる」

 そういって和也は春成さんに近づいて行った。

「ハロー、春成さん。ご機嫌いかがかな」

「あと三十分だよ。先生に遠慮なく言うから大人しく戻ったほうがいいよ」

「……はい」

 あっさりと引き返してきた。あんな堅物の委員長様を相手に出来るほどあいつはレベルが高いわけじゃなかったのか。

「優等生値MAXだからな」

「うん……」

「所詮俺達とは住んでる畑が違うのさ」

 結局、和也は先生と一緒に合宿する羽目になった。

「可哀想に」

「同情するなら変わってほしい」

「四季、ほら、こっちだ」

「いやーっ、掘られる―」

「変な事を言うなっ」

 先生に連行される和也に二人で手を合わせ、帰ることになった。

 夏の夕焼け時、針は普段なら晩飯を食べている時間を指していた。

「冬治君」

「何」

「聞いてほしい話が、あるんだ」

 ついてきてほしいと言われてほいほいついて行くと危ない目にあうそうな。いたいけな少女を連れて一体何をするのかは知らないが、決まってそういう時は『いい事』という言葉を連発する。

 変な人に会ってもついて行かないようにしようね。お兄さんとの約束だ。

 連れてこられたのは近所の公園だった。さすがに、この時間帯に子供はいなかった。

「それで、一体何を聞いてほしいのさ」

「この前さ、和也君に告白されたの」

「ああ、そう」

 俺はどういえばいいんと思う。

 気にはなっていたけれども、こうやってコメントを求められても困る。

「えーと、それだけ? それなら……俺は帰るよ」

「ううん、これはどうでもいいことなの」

 じゃあなんで言ったのさ!

 というか、あいつ可哀想だなー……どうでもいいって言われたぞ。

「まずはジャブから。冬治君の態勢を崩すために」

「そ、そう?」

 ジャブ? 俺と闘う気なのだろうか。

「えーと、これからが本番。実はね、私……黙ってたけど和也君や冬治君より一歳年上なんだ」

 それは知らなかった……いや、待て。そういえば和也から話を聞いていた気がする。

「留年したってこと? それとも、一年遅れて入学したとか?」

 相手から話してきた事なので色々と聞いても問題はないだろう。

「留年したんだ。病気になってね、今は完治してるけど出席日数がどうしても足りなくなってさ」

「そっか、大変だったんだなぁ」

 下手な事は言えないので当たり障りのないものにしておく。

 どんな病気で、どこにいたのか。俺は病院に入院した事が無いので毎日何をして過ごすのか気になるけれど、今、聞く必要は無い気がした。

「……私の事どう見てる?」

「どう見てるって……」

「ごめん、漠然とし過ぎてたね。私の事、活発そうに見える? 正直に答えてほしいんだ」

「うーん、知り合う前は暗そうな感じだって思ってたよ」

 話してみたら、慣れてみたら……秋口さんはかなり積極的な人間だと言う事を知った。そうそう根暗な人なんていない。人見知りがちょっと強い人が多いだけなのだ。

「そっか」

「うん」

「私ね、子供の頃はもっとわがままで、更に積極的だった」

 想像がつかなかった。積極的ならわかるけども、我儘と言うのが納得いかない。

「そんなに我儘だったの?」

「うん、友達が帰るって言ってもそれを許さなかったし、本当にお前のモノは俺のモノって感じだった」

 それはまた、凄いジャイア○様だ。

「気付いた時には友達なんて、和也くんぐらいだったかな」

「それはまた寂しいねぇ」

 和也一人が友達って、俺だったら引っ越すよ。

 しかし、何故こんな話をするのだろう。

 そういった俺の考えが表情に出たのか、秋口さんは苦笑していた。

「ごめん、回りくどいよね」

「うん、回りくどい。つまり、秋口さんは何が言いたいのさ」

 秋口さんは一度、深呼吸をするとファイティングポーズをとった。

 本当に戦うつもりなのだろうか。

「私、我儘だから…今後、迷惑かけると思う。だから、先に謝っておこうと思って」

「待って、わかったけど、そのポーズの意味がわからない」

「拳で語り合いたいの」

「迷惑だよ!」

 何気にいいパンチを繰り出しそうだ。

「えーと、拳で語るのが目的?」

 冗談だよねと言うニュアンスを含めて笑って見せる。

 しかし、相手はやけに真剣な目つきで俺を見ていた。

「いや、手段。もっと、もっと冬治君と仲良くなれると思うから」

 そうはっきり言われては流されそうになるなぁ……だからと言って、殴るわけにはいかないが。

 今一つこの状況が飲み込めていない俺はどうすればいいのか頭を抱えていたりする。

「……二学期もよろしくお願いしますとか、一緒にもっと仲良くなる方法をかんがえようとかじゃ、駄目なの?」

「……ううん、それでいい」

 そのまま公園を出て秋口さんを送って行った。一体、俺は何をしていたのだろう。というか、彼女は何がしたかったのだろう。


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