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帰宅部だって立派な部活だ!  作者: 儚夢
5.聖夜の奇跡
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あの時の答えは――②


「んぅ…………」

 目を覚ますとそこには、見慣れた自室の天井――ではなくて、テーブルの脚だった。……ああ、そうか、そういえば月夜の家でクリスマスパーティーをしてて、プレゼント交換の話になったのか。それでオルゴールをかけたら眠たくなって、寝てしまった……と。


「……瀬戸君?」


 上体を起こして、寝ぼけた頭で声の主を探す。――と、入り口とは反対に位置する窓の近くで、雪雛がこちらを振り返っていた。

「おう……お前も寝てたのか?」

 寝違えたのか、痛む首をさすりながら立ち上がる俺に「うん」と雪雛が小さく頷いた。落ちている鞄や、床で寝ている月夜と咲夜を踏まないようにして雪雛の隣に並ぶ。

「楽しかったな、パーティー」

「……うん」

 空に瞬く無数の星を見上げながら、今日の話をした。主には劇の話で、柿太郎は誰なんだーとか、あれからトナカイはどうなったー、とか。

「きっとヤンデレラ嬢はさ――」


「――……ねえ瀬戸君」


 ――お嬢様じゃなくて狩人(かりうど)だろ? と続けようとした俺の言葉を遮って、雪雛が重々しく口を開いた。そのいつもからは想像のつかない声音(こわね)に、思わず「んっ?」と声が裏返ってしまう。

「……私が」

 緊張したように唇を振るわせる雪雛を見て、俺にまで緊張が伝わって来る。


「……期末テストの時にした告白の返事……聞かせてね」


 ――期末テストの時にした『告白』?

「えっと……」

 何か言われたか? と記憶の糸を辿るが――思い出せない。

「……わ、忘れたの?」

 ――シュンとしおらしくなった雪雛の姿に、罪悪感を覚えた。……って言ってもな……身に覚えがない。


「……私、瀬戸君に『簀巻きにして海に沈めたい』って言ったのに……」


「そっちの告白かよ!」

 確かに言われたけどさ! 「好きです」とかじゃなくて「実は……」の方かよ!

 でもその返事って何だ? 沈めさせていいか悪いかを答えろってことか? いや、駄目に決まってる。……と混乱を抑え切れない頭で必死に理解しようと試みる。――が、一向に分からないままだった。

「……でも私、あんなこと言うつもりじゃなかった。……あの時は恥ずかしくて言っちゃったけど」

「そ、そうなのか?」

 つまり、全然思ってもいなかったことを言ってしまった……と?


「……うん。だから……今、言わせてほしいの」


 ――再び蘇る、あの時と同じ気持ち。ドキドキして胸が張り裂けそうな、痛くて息苦しい、そんな感覚。




「……あのね瀬戸君……私、瀬戸君のこと……す、すっ……す――――簀巻きにして瀬戸内海に沈めたかったの」




「――改めて言う必要ねえよ畜生!」

 海が瀬戸内海になっただけだった。

「……はぁ」

 ――でも、雪雛の朱に染まった頬を見て――胸の高鳴りが一層強まった。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「ん~! 楽しかったなあ」

「だな」

 結局――明日も学校があるし、夜遅くになってしまった、ということで解散となった帰宅部のクリスマスパーティー。今は咲夜と肩を並べて帰宅中だ。


 まあ……あれからプレゼント交換をして帰ったんだけど。母さんの用意したプレゼントが何なのか、手汗が止まらなかったのは秘密だ。

 ちなみに俺に回って来たのは、月夜が用意した「悪魔にヘッドロックをかけられている天使」の人形だった。……見た瞬間、悪魔の顔が西内に変わったが、条件反射ということで見逃してほしい。


 雪雛はどうしたのかというと、「……月夜に話がある」と言っていたので、不本意ではあるが置いて来た。その表情が真剣そのもので、そうせざるを得なかった……っていうのもあるけど。

「またやりたいね! パーティー!」

 隣を歩く咲夜がニコリと微笑む。その笑顔が綺麗で、思わず見蕩れてしまった。

「そ、そうだな。――今回はありがとな。咲夜がパーティーやりたいって言ってくれたから、凄く楽しいイヴになった」

 感謝の意を込めて微笑み返すと、咲夜は「そんなことないよ」と照れ笑い。……だけど、これは本当に感謝することだ。咲夜が言わなかったらパーティーなんてなかっただろうし、俺は家にいたと思う。


「あっ……じゃあ瀬戸君、一つだけお礼してもらってもいい……かな?」


 急に立ち止まって、咲夜が俺に向き直る。

「ん? 俺にできることなら何でも言ってくれよ。日頃から世話になってるしな」

 いつも俺を支えてくれている咲夜の頼みごとだ、何としてでも叶えてあげたい。悩みごとなら解決するまで付き添っていたいし、どこかに行きたいとかなら俺が全額負担しようじゃないか。


「ありがとう。それじゃあ――そろそろ文化祭の時の返事、聞きたいな」


「へっ?」

 思わず間抜けな声が出てしまい、恥ずかしくなった。

「瀬戸君のことが好きだっていう……あれ」

「あ、ああ……」

 分かってはいたけど……さっき雪雛とそんな会話をしたばかりだったから、驚きを隠せなかった。


 ――でも、答えなくちゃな。もう三ヶ月も待たせたんだから。


「咲夜――」

 ゆっくりと頭を整理する。自分が何を言いたいのか、それをちゃんと伝えられるか。

「はい」

 ……と、咲夜はあの時のように返事をした。


 ――咲夜も同じだ。緊張してるのは俺だけじゃない。


 そう自分を納得させて、口を開く。

 可愛くて優しくて頭が良くて素直で、でもたまに弱い表情を見せて俺を惑わせて……。普段は大人しいのにいざという時は肩関節を外して来て……。


 ――でもそれも、嫌じゃなかった。


 初めて関節を外された時は流石に驚いたけど……でも、咲夜を嫌いになるとか、そんなことは一度もなかった。

 同棲は、咲夜のことをたくさん知るいい機会だったな。文化祭の時、初めて咲夜の「怒り」という感情を見た気がする。そして、泣き顔も初めて見た。

 笑う時は声を上げて笑うことも、泣く時は声を殺して泣くことも。父親が――大好きだってことも。

 全部、文化祭を通して分かったことだった。


 ――俺達の出会いは体育祭だったけど、始まりは文化祭だった。


 きっと文化祭がなければ、咲夜は俺に「好き」だなんて言わなかっただろう? だって好きになるきっかけは文化祭を通して生まれたんだから。


 ――伝えよう。


 しっかりと、自分の気持ちを隠さずに。

 俺を「好き」って言ってくれた咲夜に、言おう。


「俺さ――――」


 ゆっくりと口を開いて、俺は自分の気持ちを口にした。勇気を出して告白してくれた咲夜に、想いが伝わるように。

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