↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰宅部だって立派な部活だ!  作者: 儚夢
4.東雲高校文化祭!
PR
41/77

まとめ役

「一年B組、E組の生徒ー、全員聞こえるかー?」


 二クラス分の生徒が席に着いたのを確認すると、西内が右手をグーにして頭上に突き出した。その姿はまるで向かって来る敵を無双した騎士のようでもあった。

 そんな姿を見た生徒は、固唾を呑んで紡がれる言葉を待っている。まさかこの西内から「文化祭、楽しむぞ」みたいな台詞が――

「これからジャンケンでここにいる全員のまとめ役を二名決める」

 ――聞ける訳ないよな!


「全員手を出せ。ジャンケンで負けた二名は文化祭終了までの間、雑よ――ん゛んっ! えー、会計とか片付けとか司令官とか、まあいろいろやってもらうことになる」


 ……今コイツ絶対『雑用』って言おうとした。絶対言おうとした。つーか仕事内容がもう雑用じゃねえか。

「各クラス一名ずつが好ましいが……まあいい。運の無い奴は自分を恨め」

 西内のこの発言に、E組の生徒が「何それ」といった顔をしている。……まあ、普段はコイツと絡む機会なんて無に等しいからなあ。免疫あるのなんて辛うじて咲夜くらいだし。

「行くぞー最初はグー、ジャーンケーン……」

 明らかにやる気ゼロの掛け声に嫌々手を上げる生徒。……って、この人数を二人でまとめるって結構な重労働だな。


 俺⇒グー 西内⇒パー


「グーだった奴、立て」

 あいこも勝ちかよ!? グーを出した生徒はおよそ三分の一くらいにまで減っている。ヤバい……勝たなきゃ、ただでさえ遅い帰宅時間が更に……!


「行くぞーじゃーんけーん……」


 なっ!? コイツ、「最初は~」の下りを省きやがった! 俺の心理戦作戦が台無しじゃないか! くっそ……コイツは何を出す!? グーか? ああもうどうとでもなれ――!


 俺⇒チョキ 西内⇒チョキ


「あれ……?」

 勝った……。いや、あいこだけど勝った……。ということは――!


「パー意外、座れ」


 ――よっしゃああぁぁあぁああぁぁ!!!

 これで最悪は免れた!


「じゃーんけーん……」


 飽きっぽい西内の掛け声が段々と短くなり、遂に「けーん」から始まるジャンケンになってしまったその時、決着はついた。

「ったく……やっと終わったか。っつーことで、B組とE組のまとめ役は……今立っているB組坂場(ばんじょう)世良せらと、E組涼月(すずつき)咲夜だ」

 紹介された二人は軽く頭を下げて――って咲夜!? ま、負けたのか……。


『ああああ、あの!』


 ――え?

 急に、咲夜が帰宅部に入部した経緯が頭をぎった。そういえば咲夜の親って凄い厳しいんじゃなかったっけ? 後から聞いた話じゃ、門限も早いって……。

「無理じゃねえか……」

 隣に座るクラスメイトに「どうした?」と声をかけられ、上の空状態で「いいや」と答えた。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「西内!」

 顔合わせと出し物の打ち合わせが終わり――ちなみに俺達B・E組の出し物は『メイド喫茶』と『お化け屋敷』になった――各自解散となったところで、会議室から出て行った西内を捕まえた。

「何だ瀬戸。いつまで教師を呼び捨てにして――」

「そんなことより! 咲夜がまとめ役って、無理なんじゃ――」

「――だろうな」

「だったら!」

 反論を試みた俺に、西内は「……はあ」と一息吐いて遮った。


「一人の生徒を特別扱いしたら、やっかまれるのはソイツ――涼月なんだぞ? 理解しろ。今ここでもしもアイツをまとめ役から引き摺り下ろしたとしても、その埋め合わせは誰がやる? 涼月の為に自分がやるって思うヤツと、何でアイツだけ特別なんだって思うヤツ……どっちが多い?」


 ここで咲夜にまとめ役を続けさせるのは、咲夜の為……? そんな……そんな馬鹿げた話――俺は認めない。

 確かに咲夜はいろいろと言われるかもしれない。じゃあそれを言わせなければいいんだ。第三の道を、自分で作ればいい。


「――なら、俺もやる」


 咲夜と代わるのは駄目だ。もう一人の坂場から何か言われる可能性があるから。……じゃあ、俺が加わって少しでも作業効率を上げるしか手は無い。

 ――ピシィン!

「いってえ!」

 突如繰り出される、ノーモーションからのデコピンに、涙目になってしまった。……いや! でもこれマジで痛いからな!

 俺に攻撃できたからか、満足そうに微笑んだ西内は、


「――それが正解だ」


 と、これまた満足そうに告げて歩き去って行った。――って!

「俺……攻撃され損じゃねえか!!」

 くっそ……次会ったら覚えとけよ……。絶対デコピン二発は喰らわせてやる……。

 何故か、西内への恨みは晴れないのに、俺の心は晴れていた。まあ……西内もたまには役に立つな。十六年に一回くらいは。

「――確かまとめ役はこれから会議あるって言ってたよな」

 ふと、そんなことを思い出した。つまりこの会議なるものには俺も参加しなければいけない……よな。でも遅れて出て来てどう説明すればいいんだ? ……まあとりあえず向かおう。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


『――徒に危険な行為をさせるようであれば、そのクラスの出し物は永久封印となりますので注意して下さい。』

 会議中と思われる教室の前に辿り着いた俺は、どうするか悩んでいた。


 ――どう割り込む?


 話の内容的にも、強引にというのはあまり望ましくない。ここは無難に静かに入って近くの先生に事情を説明するか。


 コンコンッ。


『誰ですか?』

 外からでは声が篭っていて、誰が話を進めているのか分からなかったが、どうやら佐伯先生のようだ。扉を少しずつ開いて行くと……会議室内にいた生徒・先生全員の視線がこちらに注目した。

「えーっと……訳あって俺も『まとめ役』に加わることになって……」

 あまり直接的に触れてはいけない部分もある為、濁しながらの説明となる。……この場には咲夜もいることだし。

「……事情は分かりませんが、とりあえず座って下さい」

「はい」

 きっと後から説明してくれると思ったのだろう。佐伯先生は俺に着席を促した。

「せ、瀬戸君……どうしたの?」

 空いている席が丁度、咲夜の隣の席になってしまい、当然のようにその質問が投げかけられた。

「あっいや……ほ、ほら。説明聞こうぜ」

 目を逸らしに逸らして、この場を切り抜けようとするが……咲夜は俺にジト目を向けたまま「ふうん」と、納得行かなそうにして視線を前に戻した。


「……後で関節技ね」


 そんな声が聞こえて来たのは、幻聴だと思いたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。