結果発表
『――私と付き合いなさい!』
その言葉が頭の中を駆け巡って、止まらない。
月夜らしいと言えば実に月夜らしい物言いだった。俺にとって、人生で二回目となる告白。
返事は「考えさせてくれ」と言って来た。
月夜は十分に魅力的な少女だ。周りへの気配りがしっかりできる、優しい子。俺なんかにはもったいないくらいに……。
でも、そんな彼女が俺を好きだと言ったんだ。しっかりと自分の気持ちに向き合って答えを出すのが筋だろう。
俺は――どうする?
――どうすればいい?
どうするのが――――正しい?
結局、答えは出ないまま、眠りに着いた。
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「期末の点数発表するわよ!」
次の日の放課後、部室棟5-3教室にて、月夜が扉を開け放って開口一番に言ったのがそれだった。
先に部室に着ていた俺と雪雛と咲夜は呆然と月夜を見上げている。
「っ! ……は、早く競うのよ!」
一瞬月夜と目が合って、電光石火の如き速さで逸らされた。――その頬が赤く染まったのは、黙っていた方がいいだろう。……身の為に。
「じゃあまずは……世界史ね」
どうやら一日目の一教科目から順々に見せていくようだ。……そういえば点数一番低かったら一週間パシリになるんだよな。
「せーの! はいっ!」
それにしても、どうして月夜はこんなにもテンションが高いんだ。
という疑問はさておいて、展開された点数を見る。
「……ほう」
羅列された点数に、我が目を疑った。
俺 九十点
月夜 八十九点
咲夜 九十五点
雪雛 三十七点
「赤点ギリギリじゃねえか!!!」
そう突っ込まざるを得なかった。
ここは進学校ということもあって、普通校よりも赤点が若干高く設定されている。大体の高校が二十九点なのに対し、ここは三十五点。……で、雪雛の点数は三十七点。
「……ギリギリじゃないわ。後二点低かったら留年かもしれなかっただけ」
「それをギリギリって言うんですけどぉ!?」
……と、不毛な言い争いは続きに続いて――、
「えっと……最下位は雪雛……よね?」
「だな」
「頑張ったのにね……で、でもまた次頑張ろうっ?」
月夜の確認、俺の賛同、咲夜の奨励によって……最下位は雪雛に決定した。
「なあ雪雛……本当にいいのか? 髪切るって、そん――」
「……うん、いいの」
俺が心配してかけた声を遮った雪雛の表情は――晴れていた。
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次の日の登校中、昨日の帰りに西内が「気を付けて帰ろよ、瀬戸内海」と言って来たことに対する対策を練っていた。
何が楽しくてこの暑い時期にあんな奴のことを考えて坂を上らなくちゃいけないのか……。
「ううむ……やっぱり靴の中にミミズを……」
前にやろうとした時は呆気なく見つかってしまい、その日一日の間「ミミズ」と呼ばれた。
あの時の屈辱を以て、以て再戦しよう。
「今度こそは靴にミミズぶち込ん――」
「……せ、瀬戸君」
俺の脳内完全計画を遮る形で、後ろから控えめな声がした。
振り向きながら、確認するまでもない相手の名前を呼ぶ。
「よう、雪ひ……な?」
でも、そこにいたのは確認しないと分からなかった。
「……おはよう」
「お、おう。おはよう」
綺麗に整えられていた長髪は、肩より少しだけ長い。
短くなったことによって、髪が肩に当たり、ハネるのだろう。前のような統一感は見られない。
けど――、
「すっげー可愛い」
いつか俺は思ったはずだ。俺は、雪雛はショートの方がいいと。
「あ……――」
俺の言葉を聞いた雪雛は、一瞬何かを言いかけたように口を開き、すぐに閉じて笑みを作った。
そして、トトッとこちらに駆け寄り、耳元まで顔を近付けて――、
「――ありがとう」
と囁いた。




