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帰宅部だって立派な部活だ!  作者: 儚夢
2.東雲高校体育祭!
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崩れ行く教師像

「あの、西内先生」

 体育祭が迫って、朝練なんかも始まって来たこの時期。グラウンドに目をやると「イチッニッイチッニッ」と声を合わせて走っている他クラスがいた。

 俺達のクラスは何もしなくていいんだろうか……等と、ガラにもなく考えながら我がクラスの担任、西内先生に声をかける。

 彼女は職員室で、学校から教師に一人一台支給されたノートパソコンを使い、オンラインゲームをしているところだった。

「何だ……私は今、アイテムを集めるのに忙しいから後にしろ」

 それが用事が有って教師を訪ねた生徒に対する態度か。

「西内先生」

 だが、負けじと声をかける。

「チッ……今レベ上げしてんだ」

 レベ上げって、経験値ちょっとしか溜まってねえじゃねえか。後何時間かかんだ。

「あ、あの……西内先生。ちょっと宜しいでしょうか?」

 そこへ、俺の後ろからひょこっと顔を出す見知らぬ女子生徒。ああ、無駄だぞ。これからこの人レベ上げに後何時間も費やすから。

「ん、涼月すずつきか。どうした?」

 おい待て。何だその態度の違い。何をそんなにニッコニコしてんだ、皺が目立つぞ。

 明らかすぎる対応の差に、理不尽だろうと怒りを覚える。……って言っても、この先生だしな。

「えっと……せ、瀬戸君が先に並んでたなら……どうぞ」

 控えめな性格。細いようでしっかりと整っている声。俺はそれに、聞き覚えは無かった。

 涼月と呼ばれた子を視認する。……おぉっ、可愛い。

 全体的に茶な髪色は、それでも『垢抜けている』といった部類には入らない、おしとやかな色。サラサラのそれは指を入れても一度も絡まないだろう、という程に手入れされている。

 そして圧倒的なのが、彼女の顔。これでもかっというくらいに愛らしい目は、純粋無垢なチワワを連想させる。小さな唇はまるでハムスターのようで、頭を撫でてあげたくなる。

 垂れているとも吊っているとも取れない、綺麗な目だった。

「あ、あの……瀬戸君?」

 ただ、気になる。

 こんな美少女が、何故俺を知っているんだ……?

「え、ああ……いや、俺はいいよ」

「そ、そう? ありがと……」

 ふにゃっと笑った彼女は、見ているこちらまで溶けてしまいそうな笑みを見せた。な……何だ、この小動物みたいな奴はっ!? 俺を殺す気か?

「えっと……西内先生、部活動のことで――――」

 ちょっと後ろに下がって、なるべく涼月と西内先生の会話を聞かないように努力した。きっと個人的なアレだろうから。


「は、はい……。何とか説得してみます」

「頑張れ」

 涼月が悲しそうな表情でそう言い、西内先生に頭を下げて職員室から出て行った。ほうほう、礼儀も分かる子なのか。

 そして俺がさっきから呼んでいる西内先生は、俺をチラッとだけ見て――、

「さぁて、キングアカラコを狩るか」

 ――ノートパソコンに目を落とした。てーかキングアカラコって超雑魚モンスターだろ。そんなんでレベルが上がると思ってんのか。

「ちょっと待て――下さい。明らかに今、俺を見ただろ――でしょう? さっきから俺が呼んでんのに気付いてんだろ――ますよね」

「チッ……分かったから、無理に敬語を付けるな。気持ち悪いぞ」

 お、俺の努力が……気持ち悪いだと? 全く……生徒の努力<キングアカラコだとは思わなかったぞ。

「で、何だ」

 涼月に見せていた笑顔(十割引)を前に、震える拳を押さえる。な、殴っちゃダメだ……! 殴ったら俺の体から関節が無くなる……っ!

「おね――「無理」――表出ろやぁぁぁああああ!!!」

 止められない止まらない~コイツ~をなっぐりたぁ~い!♪


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「で?」

「っ!!!???」

 なぁにが「で?」だっ、このクソ教師がっ!

 乱闘のあった職員室を追い出された俺と西内先生は現在、校庭に来ている。これが可愛い――さっきの涼月のような――子とだったらとんでもないラブコメ展開なのだが、それがこのニ十台後半強のオバサンだからな。

「おねが――「無理だ」――っ……くっ……」

 ヒクヒクと痙攣する顔に鞭を打って笑顔を作る。

(大人になれ……俺……)

「お――「チッ」――こんの給料泥棒がぁぁぁああああああああ!!!」

 ここまで残酷な給料泥棒を、俺は今までに見たことがない。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「チッ……じゃあ一つだけだぞ」

「ありがとうございますぅ!」

 もう、ヤケになってた。

「ふぅ…………先生、図書委員会からの、お願いがあって、来ました」

「はぁ?図書委員? ……さっさと言えよ」

「アンタが無理無理言ったんだろ!?」

 何なんだこの人は!? 本当に教師かっ!?

「っつーか……お前、図書委員だったんだな」

 アンタは俺の担任だろうがぁぁぁ……!

「んで? 図書委員がアタシに何の用だ」

「図書室の鍵を貰いに来ました」

「あぁ? それだけか?」

「は、い……!」

「チッ……さっさと言えよ」

「くっらぇぇぇぇぇええ!!!」

 俺が放とうとした渾身のラリアットを西内先生は片手でいなす。そして空いている方の腕で俺にラリアットをして来る。

「くっ! 食らうかぁ!」

 上体を反ってそれをかわす。……この位置なら……イケる!

 体を起こす勢いで西内(元)先生に頭突きを――!


「甘いな」


 ――かまそうとしたら額を膝蹴りされた。

「ぅがぁぁぁあああぁぁああああぁぁぁ!!!」

 崩れ行く意識の中で一つ思う。


 コイツ……る……!!!



 体育祭まで、残り二週間と四日。



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