2)プロローグ党 邂逅派
……それから時は過ぎて入学式の翌日、鍵が掛かっているドアの前に佇む一人の男がいた。
端から見たら奇妙な光景だろう。
鍵が掛かっているといっても、その鍵は古びた南京錠一つ。ドアそのものもキズや汚れが目立っていて、そんな誰も近付かないような所に人がいるという時点で十分不自然だ。
だが、それ以上に目に付くのは、頭頂部分から鼻先まで伸びたその男のアホ毛。時間を気にする性格なのか、そのアホ毛の毛先には時計が結び付けられており、その存在が余計に彼の不自然さを際立たせている。
アホ毛の男「ここで間違いないはず……針金一本で十分ですね」
手際よく鍵を開け、音も立てずに部屋の中に入る。だが……
?「おー、結構早かったなー」
アホ毛の男「!!!!!!!!!?」
誰も近付かないはずの部屋には、一人の男が歓迎の笑みを浮かべていた。
アホ毛の男の頭に負の感情がよぎった。そこには当然焦りもあった。だがそれ以上に大きく強い感情……恐怖があった。
……もしアホ毛の男が常人だったなら、恐怖という感情は感じなかっただろう。実際、彼の身長は高く見積もっても160半ば(椅子に座っているのであくまで推定だが)と男子大学生としてはやや小柄で、ピッキングして入室して来た相手に笑顔で接するあたり性格も温厚と、見た感じ親しみ易い印象を受ける。
しかしアホ毛の男の鋭い嗅覚は確信していた。彼の目の前に居る男の特徴的なツンツン頭。まるで空気に触れて酸化した血のようなくすんだ赤褐色が、その頭を一層際立たせている。……いや、彼の嗅覚が正しければ、比喩等ではなく、本当に……
ツンツン頭の男「よーこそ我がゲーム同好会へ……っていってもオレ『我が』とか言うキャラじゃねーんだよな」
アホ毛の男「……………………………………」
ツンツン頭の男「……まぁ、おめー事情を知ってるみてーだし、この説明じゃ不適切ってヤツだな。そーゆうことで改めて……」
ドアの汚れの匂いで掻き消されたのか、それとも怠慢故に無意識に嗅覚をシャットアウトしていたのか……いや、気配に気が付かなかったことを考えると恐らく後者だろう……
そんなアホ毛の男の後悔を他所に、ツンツン頭の男は軽く咳払いをした後に、純真な表情で言い放った。
ツンツン頭の男「よーこそ、テロ組織、
『迷走名簿〈ロストブリスト〉』へ」