18)自己紹介党 キャッカ派 第2部隊
コータク「なんか……遅くね?」
フキ「そういえばそうだね。どうしたんだろ?」
ジェノ「……大体察しはつくがな」
ジョズの席移動から早5分、リストナンバー4の男は未だに来ない。呼んだ後のやり取りを含めれば6、7分は経っているので、そろそろ来てもおかしくはない。
コータク「? あぁ、確かにあったなそんなこと」
フキ「入りたての頃は毎日のようにあったよねー」
最初は来るのが遅いことに疑問を感じていたコータクとフキも、ジェノの一言で何があったかを察したようだ。
ジェノ「学習能力がねーっつぅか何というか……」
ジョズ「……何があったのですか?」
当然、今日入ったばかりで事情を知らないジョズは左手で頬杖を突いて呆れているジェノに、そのことについて訊いて見る。だがジェノは、頬杖を突いたまま顔をコータクの方に向けて、右手でジョズを指さしてこう言う。
ジェノ「キンピカー、コイツ連れてキャラ男迎えに行ってくんない?」
コータク「オッケー」
ジョズ「……他人(〈ひと〉と読む)の話を聞いて下さい」
二つ返事で了承するコータクだが、納得するはずの無いジョズはこう抗議する。
ジェノ「ちゃんと聞き尽くしてるっての。何があったのかは付いて行けば分かり尽くすからとっとと行ってくんない?」
ジョズ「……分かりました。行けばいいのですね、行けば」
適当にあしらうジェノに対して、何を言っても無駄だと悟ったのか、渋々了承するジョズ。
ジェノ「行ってらっしゃ~い」
一方ジェノは口調こそ明るいものの、相変わらずと言って良い程の仏頂面でジョズを見送った。
フキ「素直じゃないなぁ、ジェノは」
ジェノ「……好きの裏返しでこんなことやってるとでも思い尽くしてんのかオメーは」
コータクとジョズが行った後に放ったフキの一言に対して、先程とは打って変わって不機嫌そうな低いトーンで返すジェノ。しかし彼女は特に動じる事も無く、少し首をかしげながら尋ねる。
フキ「じゃあ、嫌いなの?」
ジェノ「当たり前だ。コッチが言い尽くすのもなんだが、いや、むしろこんな性格だからこそネガティブシンカーは嫌いなんだよ、コッチは」
フキ「それなら、どうしてジョズ君の席を移動させたの?」
と、続けざまに質問をするフキ。返答するのも億劫だと感じたのか、
ジェノ「お察し下さい」
と一言。だがフキは、
フキ「了解っ」
と、笑顔の敬礼で切り返す。
ジェノ「あー、……ちゃんと分かり尽くしてる?」
と、予想外の反応に対して若干戸惑うジェノ。だが彼女はそれに構う事無くジェノの言う事に答える。
フキ「もちろん! そもそもジョズ君の席を『キャッカの席から』わざわざ移動させる理由なんて1つしかないじゃん」
ジェノ「…………………………………………」
図星だったのか、黙り込むジェノ。そんな彼にフキがもう一言付け加える。
フキ「素直に伝えたら分かってくれるよ、ジョズ君も」
ジェノ「……はぁ、わーったよ。んじゃ、行って来るわ」
フキの心の声(今行くんだ……)
そう言ってアジトを後にするジェノ。一方その頃……
コータク「はい、とーちゃーく!」
そう言って二人がたどり着いた所は、保健センターだ。
ジョズ「保健センター……病弱なのですか?」
コータク「まぁ説明は後でするから。んじゃ、早速だけどお邪魔しまーす!」
と、元気良く入って行くコータク。
ジョズ「他の患者もいるのですから静かに入って下さい……」
そう言いながら、ジョズも続く。
コータク「ほら、あのベッドだよ」
そう言ってコータクは入口すぐ左のベッドを指さす。
ジョズ「……あれは本当に患者用のベッドなのですか?」
コータク「そーだよ。ちょっと変色してるけど」
ジョズ「先輩、『ちょっと』の意味、ちゃんと分かっていて使ってますか?」
そう言って、ジョズはコータクが指さしている『鉄臭い』ベッドを一瞥してこう続ける。
ジョズ「あれは『真っ赤』と言います」