第9話 考えるガ-ゴイルと焦る騎士団長
残酷な描写、不快な表現があるかもしれません。
人の死が多く書かれていますので、嫌だという方はお戻り下さい。
また、人物、職業等批判している訳でもありません。
あくまで見る方向が違うとお思い下さい。
それでもいいという方だけお読み下さい。
ピコ-ン、脳内電子音が鳴った。
相変わらずこの音は何なんだろうか。
『レベルが上がりました、強化しますか?』
戦闘のあった広間から歩き始めるとレベルアップの音がした。
それより今回の戦闘で分かった事が多くある、目からレ-ザ-は以外と使い勝手が悪いという事だ、何せ目を向けた方向にしか撃てない、先ほども目線から読まれていたとしか思えない(実際は発射する直前光っている事に気づかれた所為である)
しかし、レ-ザ-は捨てがたい、将来的には巨○兵やラ○ュタのロボット兵が夢だ、誰か薙ぎ払えと命令してくれないものだろうか?
よし、決まった。
俺の望みはレ-ザ-が誘導式になる事だ!
『魔力レ-ザ-が強化されました』
ピコ-ン
『レベルが上がりました、強化しますか?』
むむ、2つもレベルが上がるとは、あの騎士達の経験値は大きかったようだ。
さて、どうしようか?防御か攻撃を強化するか?それとも新兵器を望むか?
新兵器の構想はあるが、次にしよう。
俺の願いは指からレ-ザ-を発射したいだ!
ジ○オング・・あれはいいものだ。
『魔力レ-ザ-が強化されました』
さて、改めて見直してみよう。
現在の俺
【名前】 俺
【種族】 ブレンド・ガ-ゴイル(30%鉄製・55%鋼鉄製・10%ミスリル製・5%アダマンタイト製)
【LV】 17
【属性】 物理・魔法防御+
【スキル】 爪発射・遠隔操作LV1・魔力レ-ザ-(半誘導)LV2
【特性】 無機物吸収・材質変化LV2・形状変化LV2
【ストック】魔晶石(小)×4
・・はて?魔力レ-ザ-(半誘導)LV2、完全な誘導はやはり無理だったがLVが2に上がっている、強化された所為だろうとしても、形状変化もLV2に上がっている、何故だ?
戦闘で頻繁に変化させたからだからか?そうだとすれば使うほどLVが上がると考えていいもんだろう。
それなら、どんどん使えばいつかは極太魔力レ-ザ-が撃てるという事になる、何気に楽しみだ。
しかし、レ-ザ-などのものに頼り過ぎるのも考えものだ、やはり戦闘経験が足りないのは痛い。
先ほどの戦闘を思い出すだけでしょんべんがちびりそうになる(出ないけど)、敵の武器がもっと高性能だったら、敵が3人だったら、救いの声(笑)が無かったら、俺は死んでいたかもしれない、攻撃が当てられずジリジリと身体を削られる恐怖、トラウマになりそうだ。
何より、敵の使う技?スキルを知らないのが困る。
戦闘中にいきなり『ハ-トブレイク』と叫びながら攻撃してきたから、心臓(核)を守ってしまったのだが、何て事ない胴体攻撃だった。
そして「ちっ、効かないか!」などと言ってくる。
どう言う効果を期待していたんだ?名前から行動麻痺のようにも思えるが確証が無い。
などなど困惑もあった。
今、思い返してみると進入して来た冒険者達もそれっぽい事をしていたが、奇襲&集団フルボッコだったんで技の発動する間も無く殺っていたのだろう、次からは気をつけて見ておこう。
色々考えているうちに身体の修復も終わったようなので、再び迎撃に行くとしよう。
騎士、魔法兵Side
グレック第一騎士団団長がフラフラとダンジョン外の駐屯地に着くと
「グ、グレック団長、そのお姿は・・?」
「な、何があったのですか?」
「他の者達はどうしたのですか?」
駐屯地に居た騎士達が心配そうに声を掛けてきた。
それもそのはず、グレック団長の姿は、ボロボロな服以外、ほぼパンツ一丁であったのだ。
身体に傷はほとんど無いが、ガ-ゴイルに鎧を奪われた際、下に着ていた服は適当に破かれた所為だ。
「う、五月蝿い!それよりも騎士達を集めろ、私の鎧を奪い返しに行くのだ」
彼の着ていた豪華な鎧は、彼にとって自慢であり誇りであり、何より国の宝であった、代々の第一騎士団団長が着るあの鎧を失ったとあれば、団長の座を失うばかりか死刑とされても文句は言えない、何としても奪い返さないとならなかった。
鎧がガ-ゴイルの胃(?)の中だという事を気絶していた彼は知らない。
彼は鎧が既に、ダンジョンマスタ-の所に持っていかれたものと思いこんでいた。
「いいから言われた通りにしろ!私は着替えてくる」
そう言うと団長は自分のテントへと入って行った。
言われた騎士達は困惑しつつも
「先遣隊に何かあったようだ、救助に向かうぞ、部隊を整えろ!」
いよいよ第一騎士団本体が動きを始めた。
ガ-ゴイルが遭遇したのは先遣隊であり、グレック団長は先遣隊だけでダンジョンの攻略が出来ると信じていた。
ゆえに先遣隊はグレック団長と子飼いの部下で編成され、財宝と名誉はすべて彼らが貰うつもりであった。
だが、侵入したダンジョンは予想以上に広く、罠に満ちていた、さらにゴブリンごときと思っていた敵は武装化がなされ、組織だっていた。
準備を整えた騎士達は団長の登場を待った。
そして現れた騎士団長は、普段の豪華な鎧ではなく、彼らと同じ鎧を着ており事情を知らない騎士達は不思議がった。
彼らの前に立ったグレック団長は
「いいか!我々の目的地は最下層にある宝物庫だ、そこを発見したら私にすぐ知らせるのだ、いいな!」
それを聞いた騎士達はざわざわと騒ぎ出した。
「俺達の目的はダンジョンで行方不明になっている人間の救助じゃなかったのか?」
「何で、冒険者達みたいな事をするんだ?」
「救助もしくは遺品を持ち帰るんじゃないのかよ」
「宝物庫に遺品があるじゃないのか」
「先遣隊はどうするんだ?」
そんな騒ぎを聞いたグレック団長は、険しい顔で
「急ぐんだ!今すぐこの忌々しいダンジョンに突入するのだ!」
そう叫んだ、ところで
「お待ち下さい、グレック団長」
声を掛けてきた人物がいた。
「今は急いでいるのだ!ギルバルト王宮魔術師総長殿」
顔を顰めながらグレック団長が言い放つが、ギルバルト王宮魔術師総長は
「このダンジョンは、そう簡単にはいきますまい、我々と連携して事にあたる方がよろしいのではないかな?」
そう言ってきた、この提案は普通なら受けるところだが
くっ、それでは私の鎧の事がばれてしまうではないか、騎士達ならばいくらでも誤魔化しが効くのだが、邪魔をするな・・そうだ!
「ギルバルト王宮魔術師総長殿の言う事も分かるが、そう言う訳にはいかない、何せ先遣隊が全滅した理由が魔法使いの爆発魔法が原因だからだ」
「あやつら私が止めるのも聞かずにダンジョン内で爆発魔法を使いおったのだ」
グレック団長がどや顔で言うと
「そ、そんなはずは・・ダンジョン内でそんな魔法を使うはずが・・」
顔を青ざめた、ギルバルト王宮魔術師総長を見て少し気分の良くなったグレック団長は
「これだから魔法使いどもは使えんのだ、ちょっと戦闘になりおったら恐怖であんな魔法を撃つのだからな」
大声で嘲りの言葉を放った。
グレック団長は魔法使いが嫌いであった、戦場の後方でちょろちょろしている(魔法を使っている)だけの癖に、大きな顔をしているのが気にいらない。
平民だと言うのに軽がるしく貴族に接して来るのが気にいらない。
しかも魔法の事で命令してくるのだ、お前達は我々の言う事に従っていればいいのものを、彼はそう考えていたのだ。
「それは何かの間違いじゃ」
と叫ぶ、ギルバルト王宮魔術師総長を無視して騎士達はダンジョンへ入って行った。
ニヤニヤと嘲りの視線を向けて
「ぐっ」
落ち込んだギルバルト王宮魔術師総長に
「ギルバルト様、我々はどうしますか?」
魔法兵団の魔法使い達が問いかけた。
「我々も後を追うぞ」
第一騎士団と魔法兵団は互いに溝を作ったまま、本格的なダンジョン攻略へ行動を開始した。