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第5話 ダンジョンマスタ-の努力とそれを知らないガ-ゴイル

残酷な描写、不快な表現があるかもしれません。

人の死が多く書かれていますので、嫌だという方はお戻り下さい。


また、人物、職業等批判している訳でもありません。

あくまで見る方向が違うとお思い下さい。


それでもいいという方だけお読み下さい。



ダンジョンマスタ- Said


「ふぅ~~やれやれ、ようやく解析魔法の構築が形になったわい」

羊皮紙に描いた魔法陣を見渡しながら一息をついた。


このダンジョンに篭り始めて早10年、ついに解析魔法の完成に目途がたったわぃ。

「見ておれ、王宮魔術師総長め!わしの理論が正しかった事を証明してくれるわ」


そこに居たのは白く長い髭を生やした初老の老人だった。

「些細な失敗でわしを殺そうとした事忘れはせんぞ、そして、この魔法が完成したあかつきには失われた魔法付与技術が復活するのじゃ、そうすればあやつに替わりわしが王宮魔術師総長じゃ」


老人の目はギラギラと光を帯び、魔法陣を見下ろしていた。



この老人、昔は王宮魔術師副総長にまでなった人物だった、主な研究内容は解析、多くの物を解析魔法により分析し王国に新たな産業と利益をもたらした。


武器や鎧、薬の構成、成分を解析し同じ物、品質の良い物を作れるようにした、その功績は大きく彼は副総長の座と貴族の地位を手に入れた。


だが、その解析魔法は魔力の無い物に限られていた。


彼はさらなる功績を求めて解析魔法の研究を続けた、失われた古の技術、付与技術を復活させる事、これさえできれば一時的な魔力付与の魔法ではなく、恒久的な魔法剣に魔剣、聖剣すら製造出来るようになるのだ。


そうすればこの国は世界を征服すら出来るようになる、そして彼の名は永遠に語り継がれると確信していた。


そして彼は何度かの成功ののち、勝手な行動に出た。


それはこの国の国宝である聖剣の無断解析である。


その聖剣はこの国の初代国王が神から授けられたとされ、宝物庫の際奥に保管されていた、国王の戴冠式や重要な式典の時にしかつける事が許されないほど重要な物であった。


彼は自分の地位を利用し聖剣を持ち出すと、解析魔法を使用した。

絶対の自信を持って。


だがしかし、それは失敗に終わった、ただの失敗で済めば良かったのだが自信のあった彼は大量の魔晶石すら使い解析魔法を使い続けた。


結果、聖剣はただの剣に成り下がった。

光輝く輝きを失い、抜けば神聖なオ-ラを発していた剣はただの鉄剣になってしまったのだ。


慌てた彼は剣を始末しようしたが、大量の魔力に何事かとやって来た王宮魔術師総長に見つかってしまった。


そこで彼はきつい叱咤を受け、さらに国王に報告すると言われた。


これはまずいと感じた彼は、研究用に宝物庫から持ってきておいた、ダンジョンクリスタルや宝物を抱え持つと転移魔法で屋敷へと逃げだした。


屋敷へ戻った彼は、自分のやってしまった事に恐れ慄いたが、きっとこの国は自分を見捨てないはず、軽い刑罰で済むに違いないと信じる事にした。


そう思っていた彼であったが国は非情だった。


彼の殺害命令を出したのだ、その理由は聖剣が力を失った事を隠す為、聖剣はこの国の象徴であり権威を示す力であったからだ、それが失われたなど、とてもではないが外に出す訳にはいかない、貴族達に知られようなら王権すら揺らぎかねない、よって知っている者の口封じが必要であったのだ。


彼は家にて王宮騎士が来るのを待ったが、替わりに来たのは王家直轄の暗殺者だった。


彼は傷を負いながらも暗殺者を撃退したが、想いは裏切られた。


彼は荷物を纏めると、人目を避けるように王都を逃げ出した。


その後もしつこく暗殺者は彼を狙った、そして彼はついに暗殺者の毒牙にやられたのだが、彼は死後、息を吹き返した、その理由は宝物庫から持ってきておいた救命の護符のおかげだった。


その後、彼は名を変えると冒険者になり各地を彷徨った。



ある程度、金が貯まると彼は再び国へ戻って来た。


そして人の居ない辺鄙な場所でダンジョンクリスタルを使うとダンジョンの製作を開始した。


ダンジョンクリスタルは周囲の魔力、生命力を吸い取り物質を変換しながら地中にダンジョンを作り上げ、徐々に大きくなっていった。


だが、ここで問題が発生した、魔力、生命力不足だ。


彼はダンジョンの拡張を止め、維持だけに留めると本格的なダンジョン経営を始めた。


最初ダンジョンには何も居なかったが、ゴブリンの集団がまずやってきて巣を作った、それだけではゴブリンの巣が出来ただけなので彼はゴブリンの生命力を吸い取りながら洗脳を始めた。


じきにゴブリンはダンジョンに居る限り言う事を聞くようになった。


彼はゴブリンにジャイアントラット(巨大鼠)の飼育を始めさせた、食料の為だ。


そしてダンジョンにはジャイアントバッド(巨大蝙蝠)、グレ-ウルフ(灰色狼)などが住むようになっていった、それらもダンジョンに入ると徐々に洗脳されていき忠実な駒となった。


ダンジョン維持に余裕が出来てきた彼は、次にインプ(使役魔)を召喚した。

彼らはダンジョンの修理、掃除、雑事をおこなった。


ようやくダンジョンらしくなったところで彼は冒険者を呼び込む事にした。


街に行ってはダンジョンの噂を流し、ダンジョンの曖昧な地図を売りつけ、宝があるように言って回った。


やがて彼のダンジョンには徐々に冒険者がやって来るようになった、上手くいった場合もあればゴブリンを全滅させられそうになった事もあったが何とか彼はダンジョン経営を軌道に乗せる事が出来た。


それもすべては執念のなせる業だった。


この国に思い知らせてやりたい、自分の研究は間違っていない、俺のおかげでこの国は豊かになったはずなのに何故俺が、と彼の思いは尋常ではなかった。


冒険者時代の経験もあり彼のダンジョンは巧妙かつ悪意と魅力に満ち冒険者を飲み込み続けた。


多くの者はダンジョンで命を落とし、魂すらダンジョンの糧となったが数少ない成功者達が多くの財宝を持ち帰り噂を広げていった。


彼が成功した理由には、金銭欲が無かった事があるだろう、冒険者が僅かな金銭を持ってダンジョンに入り命を落とす、そして貯まった金銭や武器、防具を成功者達が大量に持ち帰る、ある意味循環型と言える。


だが彼も執着した物があった、それは魔力が付与された物、それだけは彼の懐へ入っていった。


それを使い彼は解析魔法の研究をおこなっていたのだ。


ゆえに彼のダンジョンは魔法の品は手に入らないが成功した時がなかなか良く、それなりの罠にそれなりのモンスタ-と初級、中級の冒険者に好評だった。


だが最近、彼の元へ来る物が減っていた、同時に武器や防具の数も減っているとの報告を受けていた。


彼は単純にダンジョンに来る冒険者が減ったと考え、また噂や地図をばら撒こうと考えていたが、本当はどこかのガ-ゴイルが喰べていただけであった。


運の悪い事にガ-ゴイルが居る広間はこのダンジョン中層にある宝部屋として地図に大きく載っているのだ。


そんな事も知らずに彼はガ-ゴイルに餌を与える為、噂と地図をばら撒きに行くのであった。


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