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インザダークネス
闇夜の道場を照らすのは月明りだけだった。
薄暗く反射する己の姿を、俺は鏡で見つめた。
ナルシシズムに浸っているように思えるだろう。
だが、俺、芝井宗錬の合気道とはそういうものだ。
合気道は相手との距離感をゼロにするものだ。
それは心理的な部分でもあり、物理的な部分でもある。
それを見つめるために闇は必要だ。
人は闇を見つめることを恐れる。
自身が人でなしであることがばれるのを怖がるからだ。
俺は恐れない。
受け入れる。
そうすることでゼロになる。
一体化してしまう。
それこそが合気道の真実の理法だと思っている。
それになにより
「落ち着くんだよな」
誰に言うでもなく、俺は言った。
俺の独り言が道場にこだました。
ゆっくり目を閉じ、思い返す。
さあ、最低の至福の時間がやってくる。




