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ボヘミアンフィスト  作者: 弐番
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芝井との接触が終わった後、ぼくは家に戻った。

スマートホンを机におき、ベッドに崩れる。

枕に顔を埋め、強く目を閉じた。

頭の中で先ほどのことが暴れだす。

芝井宗蓮、恐ろしい男だ。

読めない、というよりもまるで掴めない。

通常は立ち方や構え、運足で相手の技量はある程度は読める。

だが芝井のものは全て不明だ。

何をしてくるか、いや、何をしてこないかさえも分からない。

自然体の立ち振舞い。

頭のてっぺんから爪先にまで張られた気。

軽口を叩くときですら重心や目線に変化がなかった。

かなりの使い手だが、なんの使い手だ?

ぼくの殺気に反応しなかった……

ごろん、と寝返りをうち天井を見つめた。

安いアパートの天井にこびりついた染みの点を追う。

追うと、人の形が浮かび上がる。

その人形がつつつーと動き出す。

まるで水面を走るかのように動く。

格闘技ではありえない移動式。

つまり、決められたルールの中で連打によって相手を仕留めるような動きは想定していないということだ。

もし想定しているなら重心はアップライトでリズムをとるように身体が上下する筈だ。

だが、芝井のそれは間違いなく足全体に重心がかかっていた。

それでも膝を軽く曲げた。柔軟性があった。

神秘性などではなく確立された技術があるはずだ。

次に会ったとき、勝てるだろうか。

手の内が分からない場合は勝てるとは言い切れない。

闇の中に放り込まれた気分だった。

何かヒントがあれば……

そう考えながら、ぼくの瞼は重くなっていった。

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