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ボヘミアンフィスト  作者: 弐番
12/30

スクリュードライバー

こんにちは、半田真理です。

私は今、鬼哭館の皆さんと一緒に暮らしています。

もう、この生活が二ヶ月程経ち今は五月です。

皆さん、ゴールデンウィークということで朝から練習に来ています。

だから雑用係の私はいつも大忙しです。

でも、道場の皆さんが一生懸命に練習している姿を見ると勇気が湧いてきます。

鬼哭館の皆さんは口にこそ出しませんが「道場は家族」とおもっているようで、

お互いのことを気にかけながら練習してらっしゃいます。

思い返せば二ヶ月前。

琴乃さんがうちのお母さんとお父さんに暴力を振るって、

無理矢理判子を奪って、

途中のネットカフェで書類を適当にこさえて、

そこに奪った判子を押して、

それを琴乃さんの師匠の牛頭先生に渡しました。

牛頭先生はニコニコしながら「よし、ではうちに置こう」と言って下さいました。

自分のお弟子さんを心のそこから信じている、優しい先生だと思います。

琴乃さんは師匠に嘘をついたことに、罪悪感を覚えないのでしょうか。

少しばかり心配です。


色々なこと、身の回りのこと、鬼哭館のことは江利香さんが教えてくれることになりました。

江利香さんは、態度こそぶっきらぼうな人ですけど、本当に優しい人です。

自分の苦しかった体験とかそういったことを話してくれます。

それをどう乗り切ったか、そして、どんな人が助けてくれるか。

自分の中の感情を隠さずに話してくれました。

そうやってさらけ出すことが出来るのは、本当に強い人なのだと思います。


道場の人たちも本当に良くしてくれます。

漫画とかおやつとかくれます。

あるときなんて「なんかもっと良いもの着なよ」とか言って、お金までくれました。

江利香さんが「フビョードーだ!」と怒っていました。

最初は気を使っているとか、下心があるとか、そういったものかと思っていました。

しかし、本当に違うんですね。

「おやつを食べたそうな顔をしているな」と思ったから、おやつを渡す。

「こいつはもっと良い服を着ろ」と思ったから、お金を渡す。

素直に思ったことを素直に思ったままする人たちなのです。

多分、私を誘うときには率直に「デートしてくれ」というのだと思います。

鬼哭館にはそういう価値観が流れているのだと感じました。

それもこれも、牛頭先生や琴乃さんのように本当に強い人たちの心がけのお陰でしょう。

だから他の門下生の方も、それにならっているのでしょうね。


ある日、琴乃さんに連れられて街に出ました。

それは私の服を買うためです。

「たまにはお洒落しなよ。可愛い顔してんだから」

琴乃さんは私をおだててくれました。

お世辞って分かっていても、嬉しかったです。

「琴乃だけじゃ不安だから、あたしも着いて行くよ」

江利香さんもそう言ってくれます。

服の事とかわからないから、一緒に選んでくれる人が居ると心強いです。

琴乃さん、江利香さん、私。

3人でのおでかけ。

なんだか心が躍りました。


街に着くと、色々な服を江利香さんが見立ててくれました。

二人で色々と服を見ます。

3時間は見たでしょうか。

途中で琴乃さんは飽きたのか、

「ゲーセン行ってくるわ」

と告げてどこかに行ってしまいました。

いくつか候補を挙げ、江利香さんイチ押しは、レースで出来たトップスでした。

とても可愛らしくて、気に入っちゃって、買いました。


ああ、楽しかった。

本当に楽しかったんですが、どことなく寂しくなってしまいました。

いつまでここに置いてもらえるんだろう。

どうしたら、ずっと皆さんといられるんだろう。

そう考えると、涙が止まらなくて。

止まらなくて、溢れちゃって、江利香さんが慌てちゃって。

そんなとき、頭をポンと叩いてくれる人が居ました。

琴乃さんでした。

「何故泣いてるは分からないけど、俺たちがいるよ」

その言葉に頷くしか出来ませんでした。

でも、本当に心強い言葉でした。

勇気づけられました。

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