第5話:Aランクパーティーの挑発と、ダンジョンへの誘い
野宿と雑用の日々も悪くない。
少しずつ信頼も芽生えて、街の人たちとも馴染んできた頃――
僕たちの前に現れたのは、Aランクパーティー。
その実力差は歴然。
でも、なぜか彼らは、僕たちを"煽るように"ダンジョンへ誘ってきた。
「へぇ~、お前らが"話題の"Fランク雑用パーティーか」
それは突然だった。
ギルドの掲示板前で依頼を確認していた時、背後からそんな声が飛んできた。
振り返ると、そこには四人組の冒険者がいた。全員、装備は高級。動きも洗練されている。
ギルドの壁に掛けられたランク一覧――そこに載っていた。
《Aランク:パーティー名《黒嵐の牙》》
リーダー格の男は、口元に薄い笑みを浮かべながら言った。
「最近、街で話題なんだぜ? 雑用だけでギルド評価上がってる"勤勉パーティー"ってな」
「……別に評価とか気にしてないけど」
ラクトが軽く睨むように言ったが、男は余裕の笑みを崩さない。
「ま、俺らには関係ないさ。でもな――お前ら、そろそろ"本物"やってみたらどうだ?」
「本物?」
「ダンジョンだよ」
一瞬、空気が止まった。
「ま、無理だとは思うけどな。せいぜい一階で全滅ってとこか。俺らは来週、五層突破に向かうからさ。それまでに入り口ぐらいは拝んどけよ」
そう言って、男たちは肩を揺らしながら去っていった。
「……なんだあいつら」
ミナがつぶやく。
「挑発してるようにしか見えなかったね」
トーレスもやや警戒気味に言った。
アキは少しだけ考えた後、言った。
「ChatGPT、意見を聞かせて。今のは、何の意図があると思う?」
『表面上は挑発。しかし、情報共有と間接的支援の意図もあります』
「つまり、"お前らも来てみろ"ってこと?」
『可能性としては高いです。嫉妬や優越感もあるが、同時に"可能性への期待"もあります』
「ふーん……」
アキは問いの書を開いた。
Q:今の僕たちでも、ダンジョンに入るべき?
A:入るべき。"試しの一歩"が、成長の扉を開きます。
「――よし、行こう」
「はぁっ!?」
ラクトが素っ頓狂な声を上げた。
「いやいや、あいつら煽ってきたんだぞ!? 本気にするのかよ!?」
「でも、たしかにそろそろ"戦わなきゃいけない壁"に向き合う時期だと思う」
アキが静かに答える。
「俺も……正直、ちょっと行ってみたいと思ってた」
トーレスの言葉に、ミナもうなずいた。
「じゃあ、決まりかな」
アキは真剣な目で仲間を見渡した。
*
「まずは、準備しよう。ChatGPT、ダンジョン探索初級者に必要な装備と魔法リスト、出して」
『了解。推奨装備:食料三日分、携帯結界石、反魔障符、回復薬×5、魔力回復晶×3……』
それは、情報と準備の戦いだった。
アキたちは町の人たちから物資を借り、武器屋の掃除を手伝い、肉屋から干し肉を受け取り、宿屋の女将からお弁当まで手に入れた。
「……なんか、旅立ちっぽくなってきたね」
ミナが笑った。
「ChatGPTが全部教えてくれるし、なんとかなるかもな」
ラクトはそう言いながら、背負い袋の底にしまった"1週間分の干し肉と硬パン"をちらりと確認した。
(念のため……だよな。誰にも言わないけど)
トーレスは無言でうなずく。
*
それぞれが、小さな覚悟を決めた。
次の日、彼らはギルドへ向かい、ダンジョン行きの申請を出した。
受付嬢がやや驚いた顔で言った。
「本当に……行くんですね。皆さん、まだFランクで……」
「はい。でも、今のままじゃ、何も変わらないので」
アキは静かに、でもはっきりと答えた。
こうして、彼らは"はじめてのダンジョン"へと足を踏み入れることになる。
冒険とは、挑まれるものじゃない。
「自分で問いを立てたとき」に初めて、扉が開く。
次回、ついにダンジョン突入!
支援魔法・生活魔法・問いの知恵を駆使して、"最初の壁"に挑みます!