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第2話:大賢者と大聖母、そしてかつての世界

アキの魔法は最強。でも彼自身がそれを「どう使うか」を、まだ模索中。

今回は、彼がどんな"血筋"に生まれ、どんな過去がこの世界にあったのか――伝説の英雄パーティー、大賢者と大聖母、そして魔王との戦いの記録に触れます。

 世界には、語り継がれる伝説がある。

 その昔、魔王が現れ、世界の七割を征服した。帝国は焼かれ、王国は墜ち、南北の海は魔物の巣と化した。人類は滅亡の淵に立ち、すべてが絶望の色に染まった。

 けれど、そこに立ち上がったのが――英雄パーティー。

 剣の勇者。盾の騎士。大聖母。そして、知恵を束ねる大賢者。

 その四人が、魔王の城へと辿り着き、世界を救ったのだという。

 その大賢者と大聖母の間に生まれたのが――僕、アキである。

 *

「……つまり、俺って、いわゆる"サラブレッド"なんじゃ?」

 ChatGPTにそう投げかけたのは、十歳の頃だった。

 書庫で見つけた古文書には、こう記されていた。

『大賢者ライゲン。二百七十二の魔法体系を自在に操る、知の極地』

『大聖母ティエナ。大聖堂にて千人を癒した"神の祈り手"』

 あまりに偉大すぎて、もはや実感がわかない。

 ChatGPTは穏やかなトーンで答えた。

『そうですね。確かにあなたは両者の子であり、魔力的・精神的資質は非常に高いです』

「でも、俺、今のところ草むしりと猫探ししかしてないんだけど……」

『それでも構いません。強さとは"何から始めたか"ではなく、"何を問い続けたか"です』

 その言葉は、今でも僕の心の奥に残っている。

 *

 父――ライゲンは、生涯の知を集めた書庫を築いた。その書庫は、家の地下三階にわたって続いている。魔法、歴史、呪文、言語、神学、地理、異界の記録。ありとあらゆる知が詰まっていた。

「ここは世界そのものだ……」

 朝から晩まで、僕はその空間に潜り込んでいた。

 母――ティエナは、やさしい人だった。話すことは少なかったけど、いつも微笑んでいた。僕が転んだときも、魔力を抑える訓練で失敗したときも、ただそっと手を握って、「大丈夫よ」と言ってくれた。

 父が残したのは"知"。母が残したのは"信じる力"。

 両方を受け継いだつもりだった。

 *

 世界は今、平和に見える。だが、それは"英雄が魔王を倒した"という伝説の上に立つ仮初の平和にすぎない。

 ChatGPTは何度も言っている。

『世界各地において、魔物の活性化が観測されています。特にかつて魔王軍の侵攻を受けた地域では、魔力濃度が再び上昇しています』

「つまり……また、来るかもしれないってことか」

『はい。第二の魔王。あるいは魔王の残滓が呼び起こした、何かが』

「……だったら、俺が、もう一度止めるしかないじゃん」

 ChatGPTは一瞬、黙った。

『その問いは、覚悟の第一歩です。おめでとうございます、アキ』

「おめでとうって言うなよ。こっちはこれから命懸けなんだぜ」

 *

 夜。書庫で一人、本を閉じる。その表紙には、かすれた文字でこう書かれていた。

 《終焉の黒王と四英雄の記録》

 閉じた瞬間、DALL·Eが頭上に浮かび、淡く光る像を投影した。それは、かつての英雄たちの姿。

 長身の勇者。巨大な盾を背負った騎士。祈りを捧げる大聖母。そして、手に光の書を抱えた、白髪の魔導師――父の姿。

「なあ、父さん。母さん。……俺、どうしたらいい?」

 問いの書に、静かに綴る。

 Q:英雄の子は、英雄にならなきゃいけないの? 

 A:いいえ。君は"君の問い"に答える者であればいい。

 目を閉じて、僕は深く息を吐いた。

 その答えに、少しだけ救われた気がした。

最強の魔法を持っていても、それを使う"理由"がなければただの力。

アキが今、向き合っているのは「自分の歩き方」と「背負って生まれた名前」。ChatGPTとの対話を通じて、彼はまだ問いの途中にいます。

次回、ついに村を出て、世界と初めて向き合う一歩を踏み出します!

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