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93話『復讐者』

「ダイチ……。」

体を痙攣させる半裸の青年、星宮を見ながら夢野が呟く。

「夢野……助けて……。」

星宮が顔を上げながら震える声で話しかけてくる。

「なんでこんなこと……。」

「別に、私は深川と先生に今までされたことを数日かけて仕返しするだけだから。」

手袋をはめ直しながら鷹見が話しかけている。

正直、全く状況が飲み込めない。

「深川はどこだ?」

夢野が尋ねると、鷹見が手を叩いた。

木の裏から出てきたゴーレムが胴体のキューブをドアみたいに開く。

中には腕と足が向いちゃいけない方を向いた深川の姿があった。

「鷹見!深川に何をした!」

夢野が叫びながら空へと飛び上がり、盾と槍を構える。

「君はそこまでしてないけど、このクソ女は度を超えているから。」

鷹見は地面につきそうなほど長いコート左のポケットから丸いコンパスみたいなものを、右のポケットからは手のひらに収まりそうなサイズの木製の銃みたいな物を取り出している。

俺たちが状況を理解できずに固まっている間に、次々と鷹見が小さな銃から石の塊を次々と上空の夢野に撃ち出していく。

「俺たちも行くぞ!」

横からタツヤが肩を叩いて鷹見に向かって走ろうとした瞬間、地面が動いた。

すぐにタツヤのジャケットの襟首を掴んで引っ張ると、地面から口を開けたワニが這い出てきた。

もしそのままタツヤが突っ込んでいたら、死にはしなくても重傷を負っただろう。

「ヒイッ!!」

福田先生が震えながら近くの木の裏へと隠れる。

元から臆病だし少し前にゴーレムに負けているのを思い出すと、あまり戦力にならないことは察していた。

ワニの方を振り向くと、さっき戦った奴と同じように背中から銃を構えていた。

なんならその後ろから3体くらい人型のゴーレムが増えていた。

しかも手にはワニの背中にある砲台が装着されていた。

「隠れるぞ!放たれろ!」

ワニの口の中の赤い核に槍の穂先を打ち込む。

崩れていくワニから視線を逸らして、急いでタツヤと共に福田先生とは別の木の裏へと隠れた。

「他3体はどうしてる?」

「全員鷹見と共に上空に砲台を向けて石を打ち込んでる。」

タツヤの返事を聞いて、少し安堵する。

手に持った槍の穂先はさっきワニに使ったから少し時間を置かないと使えない。

「さて、どうやって鷹見を止めるか……。」

「というか、なんで鷹見は俺たちを敵対視するんだ?」

横からタツヤが不思議そうに尋ねてくる。

彼らは隣のクラスの奴らだから、福井先生と今戦っている2人、それとゴーレムに拘束されている深川たちに聞くしかない。

ふと、違和感を感じて木から顔をだす。

上空に砲撃しているゴーレムの足元に、ぐったりしたままの星宮の姿があった。

「あいつ完全に気絶してないか!」

「嘘だろ!?」

タツヤが驚きながら木から顔を出す。

夢野を砲撃しているゴーレムたちが向きを変えるために足を動かす。

星宮の真横に左足が下ろされていた。

「あのままだといつか踏み潰されるじゃん!」

「まずあいつを安全な場所に避難させるぞ!」

俺は叫びながら、カバンからクナイ槍を取り出して走り出す。

1体のゴーレムが俺に気づいて砲台を俺に向けてきた。

不安になりながらクナイ槍で防ぐ構えになったところで後ろから飛んできたナイフがゴーレムに突き刺さり動きが停止した。

「ナイスタツヤ!」

「今のうちだ!」

ゴーレムが止まっているうちに、倒れている星宮に近寄る。

息はあるから気絶しているだけだ。

急いで星宮を抱えて別の木の裏の影に向かう。

後ろを何かが勢いよく通過するような音と風を感じて寒気を感じた。

「あのゴーレム、もう動けるのか!すまん!」

咄嗟に星宮を木の裏に投げ込んで、砲のついた腕を向けるゴーレムと対峙する。

すぐに手に持ったクナイ槍を逆手に持って振り上げる。

力一杯投げたクナイ槍はゴーレムの赤い核にぶつかった。

核がひび割れてカケラが落ちると同時に立方体の山が次々と崩れていった。

「よっしゃ!」

「すぐに戻ってこい!」

木の影から糸でナイフを手繰り寄せながらタツヤが叫んでくる。

背中の雷竜の槍を掴みながらタツヤのいる木の裏へと戻った。

「セーフ。」

「とりあえず、これで星宮が巻き込まれる可能性は少なくなったし、後は鷹見を止める方法を……。」

タツヤに相談しようとした瞬間、福田先生の隠れている木に次々と石の塊が衝突してきた。

石が衝突する木の裏で、福田先生が悲鳴に近い声をあげていた。

「これいつ俺たちに飛んできてもおかしくねえな。」

タツヤが震え声で呟いていると、槍の穂先が再生し終わっていた。

「狙撃してみる。」

俺はタツヤとは反対側から槍をライフルみたいに構えて鷹見を狙う。

鷹見と彼女の作ったゴーレムたちは福井先生の隠れている木を砕き始めていてこっちを見る素振りもない。

「わかった、気をつ……。」

後ろから聞こえてくるタツヤの声が突然途切れると同時に、福田先生が隠れていた木が砕けて次々と石の塊が撃ち込まれて、土煙を上げていた。

「おいタツヤ、どうし……。」

後ろを振り向くと、そこには本を開いて震える福田先生の姿があった。

「え?タツヤは?」

周囲を見回して、福田先生が隠れていた倒木に視線を向ける。

土煙が晴れて、倒れているタツヤの姿があった。

「タツヤ、なんで!?」

俺が驚いていると、鷹見とゴーレムたちの銃と砲台が俺たちの隠れている気に向けられた。

「そこね。」

冷たい声で呟き引き金を引こうとする鷹見に、上空から夢野が槍を振り下ろしていた。

咄嗟にゴーレムの1体が体のキューブを組み替えて壁を生やして防いでいた。

「邪魔をしないでもらえる?」

鷹見は呟きながら俺に銃口を向け直した。

急いで立ち上がってタツヤの元へ走り出す。

鷹見とゴーレムたちに撃たれるかと思ったが、俺に目をくれずにさっきまで隠れていた木に向かって集中砲火をする。

「タツヤ、大丈夫……か!?」

近寄ってタツヤの肩を揺さぶる。

「ショウ、あまり揺らさないで……。身体中めっちゃ痛いから……。」

顔を青くしたタツヤの返事を聞いて、すぐに手を離す。

外傷はあまり見当たらないが、身体中に石の塊がぶつかった以上骨折とかの方が多いはずだ。

「待ってろ、今ポーションを……!」

急いでカバンからポーションを取り出そうとした瞬間、気づいたら木の裏にいた。

顔を上げると、タツヤを飛び越えて福田先生が必死に走って逃げていた。

何が起こっているのを考えていると、横から腹部に何かが叩き込まれる感触が伝わってきた。

「え?」

振り向いた時には、木を砕いた石の塊たちが次々と飛んできていた。

咄嗟に腕で庇おうとするが間に合わず、体に次々と石がぶつかってくる。

地面に倒れ込むと同時に身体中に今までに感じたことのない痛みが全身に襲いかかる。

なんとか腕を動かそうと上げると、二の腕から上が曲がっちゃいけない方向に曲がっていた。

「マジかよ……。」

痛みを必死にこらえていると、足音が聞こえてきて視界に鷹見が映り込んだ。

鷹見は俺に声をかけずに銃口を俺に向けて周囲を見回している。

「夢野、福田先生を私の前に連れてきて。連れてこなければこのまま蒼山くんを撃ち殺す。」

鷹見が声高らかに喋ると同時に、風が強くなってきた。

近くまでグライダーのように飛んできていた夢野の前にゴーレムが立ち塞がった。

「クソッ!」

夢野は叫ぶながら急上昇してゴーレムへの衝突を回避していた。

ゴーレムは俺と鷹見を夢野から覆い隠すようにキューブを組み替えていた。

「北東から1人来ている。迎え撃って。」

左手に持った丸いものを見ながら鷹見が少し離れた位置にいるゴーレムに向かって叫ぶ。

地面から石を掬ったゴーレムが頷いた後、多分北東の方向に両腕を向けた。

腕の砲台から次々と掬い取った石が打ち出されて、森の奥へと撃ち込まれた。

石がぶつかる衝撃音と共にカエデの悲鳴が聞こえてきた。

「カ……エデ……。」

俺は痛む体を動かして必死に起きあがろうとする。

「起き上がらないほうがいいよ。」

鷹見は呟きながら丸いものを見る。

「放たれろ!」

森の奥から、赤い刃が飛んできて、ゴーレムの胴に直撃した。

下半身のキューブがバラバラになりながらも、ゴーレムは石を撃ち続けるのをやめない。

「今度は誰が来るのかな……。」

鷹見がため息をつきながら左手を下ろす。

左手に持った丸いものに4つの停止している針と、忙しなく動く1つの針が映っていた。

おそらく、あのコンパスで人の位置がわかるのだろう。

「やめ……ろ……。」

「悪いけど、止める気はな……!」

鷹見が振り向いて返事をした瞬間、目を見開いて腕を交差した。

組み替えられて壁みたいになったキューブに氷のナイフが突き刺さった。

「お願いサイアちゃん!!」

ゴーレムが石を乱射する方から聴こえるカエデの声と共に、俺の横に見慣れた水色髪の獣人が立っていた。

『任務を遂行します。」

サイアが手から氷の刃を何本も作り出しながら返事をしていた。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

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