表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/120

84話『恐想』

無事wordが復活しました。

楽しみにしてくださっていた皆様、申し訳ございませんでした。

引き続き、『友達100人見つけなきゃ! 〜気がつけば学年規模で異世界転生されていた。』を読んでいただけると幸いです。

目の前に立つランスマスターが再び薙刀を俺たちに向けてくる。

身につけている胸部のチェストプレートの傷つき具合と、腹部付近から灰色の服を赤い色が現在進行形で染めているのを見る限り、恐らくあの暗黒騎士にやられた時の姿だろう。

ただ彼女は今、ディモンド王国で意識不明で眠っているはずだ。

目の前にいるのは本人ではなく、『恐想書簡』によってショウのトラウマから生み出されたやつだろう。

「サイア、床を凍らせて距離を取ろう。」

サイアが頷いて床に手を置くと、サイアを中心に氷がランスマスターの元へ向かっていく。

少なくとも目の前のランスマスターは腹部に致命傷と言ってもいいくらいのダメージの状態で戦っているだろう。

そうじゃなければさっきの一撃で俺が死んでないのがおかしい。

それなり長い廊下で、ランスマスターとの距離が離れていく。

「とりあえず、大丈夫なんですかね?」

「ここの廊下が屋敷の外周に据え置きされていることを把握して俺たちより早い速度で回り込まれなければな……。」

目の前のやつならやりかねない事を呟くが、ランスマスター自体は周囲を見回してため息をついていた。

勢いよく壁に薙刀を突き刺して、そのまま壁に足をつけた。

「おい、待て待て待て待て!」

俺がサイアを庇いながら必死に後ろへと下がっていく。

ランスマスターは壁に突き刺した薙刀を軸に横の壁を走ってこっちへ向かってきた。

「嘘だろ!?」

「サーキュレーションカノン!」

青ざめている俺の後ろから富士が杖を向ける。

杖の先端から緑色の渦が作り出され、幾つもの魂みたいな緑色のエネルギーがランスマスターへと放たれた。

ランスマスターは不規則な軌道で飛んでくるエネルギーの隙間を縫う様にかわしながら俺に薙刀を振り下ろしてきた。

咄嗟に白いダガーで防ぐが、車がぶつかってきたような衝撃が手に伝わってくる。

華奢な体かつ重傷を負っているとは思えないくらいの一撃だ。

ダガーで塞がれた薙刀はすぐに切れない方向でダガーをぶつけてくる。

「危ない!」

俺の横を通って、サイアが氷で覆われた手で薙刀に掴み掛かった。

触れられた薙刀の片方の刃は凍りついた交代で俺の脛にぶつかってきた。

もし凍っていなければ、俺が脛から頭部にかけて両断されていただろう。

脛への直撃がすごく痛いが、我慢しながらそのまま薙刀の柄を握った。

「お前ら今だ……!」

「バーンピラー!」

「リビングボール!」

俺が後ろの2人に叫びながら振り向くと、すでに2人は杖を構えて詠唱をしていた。

躊躇とかないのかよと思いながら、俺もランスマスターの赤色が広がっていく腹部へと蹴りを叩き込む。

全力で叩き込んだつもりだったが、逆に俺の足が悲鳴をあげていた。

後ろからエネルギー弾と赤い炎がランスマスターへ向かっていた。

しかし、ランスマスターは俺が掴んでいるのを利用して、新体操みたいな動きで回避していた。

驚いている俺の顔にランスマスターの蹴りが額に叩き込まれた。

俺が額を抑えるために手を外した瞬間、ランスマスターは薙刀の凍った刃の部分を壁に叩きつけた。

纏わりついていた氷の砕けた刃が再び俺に向かって伸びてきていた。

「あっぶね!」

咄嗟に頭を横に曲げて刃を交わすが、首から温かいものが吹き出す感覚が伝わってきた。

肩を見ると、徐々に血液が溢れ出ているのがよく見える。

「ブレイズブラスト!」

宇喜田が炎の球を飛ばしてランスマスターを追い払う。

再び距離が取れたのは幸いだが、同時にサイアが凍らせた床の氷が溶けていった。

一直線に出来た赤い道の先でランスマスターが薙刀を突き出す構えに入った。

多分ショウに教えていた槍技だ。

「どうしよう小畑くん……。」

後ろで富士が震え声を上げている。

俺は目の前のランスマスターの殺意の満ちた視線を見る。

「覚悟を決める。2人はサイアを連れて逃げてくれ。」

俺はそう言いながらその場でかがみ込んでダガーを持った右手を後ろに伸ばす。

タイミングを見誤ったら死ぬのは確実だ。

息を整えて、ランスマスターの動きを観察する。

ランスマスターの足が少し後ずさったのが見えた。

「ここ!」

俺は叫びながら右手を前に出した。

「は!?」

後ろから困惑した声が聞こえてくる。

最も、俺が右手を出す際にダガーを落としていたから驚くの無理はない。

顔を上げると、肩に俺を袈裟斬りにするべく伸びてきていた薙刀の刃が存在していた。

動きは、完全に止まっていた。

後ろを見ると、白いダガーは床に突き刺さっていた。

「よっしゃ!」

俺は叫びながら立ち上がって、青銅のダガーとダイキの作った青い鉄のダガーを取り出した。

俺の神器でもある白いダガー。

これは生物に刺した時だけじゃなくて、壁や床で別の効果があった。

気づいたのは長谷と戦っている時に、俺が地面に刺した時だった。

俺にあの棍棒が振り下ろされると思った時、地面に刺している間は誰も動かなくなっていた。

その時の経験が、今生きていた。

目の前の薙刀を振り下ろそうとする姿勢で動かないランスマスターの脇腹から鉄のダガーを勢いよく刺しこんだ。

少し躊躇したくなるが、目の前のやつは宇喜田の神器で作り出した偽物であることは変わりない。

途中まで突き刺さったダガーに全力で蹴りを叩き込んだ。

ダガーが柄まで深々と突き刺さったのを確認して、ダメおしに両足の腱を切ろうとした。

背後に右足を切り付けたところで、床に刺していた白いダガーが床から抜け出すのが見えた。

同時にさっきまで俺がいた場所に薙刀が深々とめり込んだところで口からを吐きながらランスマスターが後ろにいる俺に視線を向けてくる。

「タツヤ!!」

奥から宇喜田が悲鳴に近い声をあげるが、ランスマスターは何もせずにその場に倒れ込んだ。

ランスマスターは何も言わずにそのまま黒い塵となって消えていった。

後には鉄のダガーが廊下に転がっていた。

「今何が起こったの?」

「俺の神器の能力だ。とりあえず休もう、こいつだけとは限らないから。」

俺は2本のダガーを床から拾いながら、近くの扉に手をかけた。

ふと廊下の曲がり角からドスドスと足音が聞こえてきた。

「あいつが来たの!?」

富士が怯えた声を上げたところで、急いで4人で固まって曲がり角から離れる。

「お前の持ってる槍は神器じゃねえのかよ!」

「神器だよ!ぜってえあいつ魔王軍幹部より強いぞ!」

青ざめた表情を浮かべるショウと谷岡が曲がり角を曲がってきた。

「ショウ!?」

「タツヤ!死ぬ気で逃げろ!」

必死の形相で俺たちに警告するショウ達の後ろから、サイクロプスが曲がりきれずに壁に衝突しながら巨体を露わにした。

人の頭くらいある単眼が俺たちにも向けられていた。


クローゼットを慎重に開けて、部屋の中を見回す。

幸い私を追いかけていたサイクロプスからは無事逃げ切れたらしい。

「なんなのよあれ……。」

私はため息をつきながら扉を開ける。

3階の廊下にサイクロプスの気配は一切しなかった。

扉を閉めて部屋の中にあったソファに座る。

今私がいる部屋は、他の部屋と違って豪華の品が並べられたりしていた。

多分元々この屋敷の主人の部屋だったのだろう。

「さて、どうしたら脱出できるのか……。」

ため息をつきながら壁にある本棚へと目を向けた。

少し違和感を感じてソファから立ち上がって本棚に近づく。

本棚には古くなってボロボロになった本が大量に敷き詰められているが、一冊だけ埃の被っていない本があった。

まさかねと思いつつ埃をかぶってない本を引っ張ると、クローゼットからカタンという音が聞こえてきた。

「バーニングスター……。」

近接戦の用意をしながらクローゼットへと近づいていく。

クローゼットを開くと、奥の方へ続く通路が開いていた。

「あんな仕組み小説とかでしか見ないわよ……。」

少し呆れながら狭い通路を覗き込む。

罠とかがないのを確認して杖の炎を消して入り込んだ。

狭い通路を進んでいくと、急に少し広い箇所へと出た。

鼻につくような異臭が立ち込めた部屋で私が見たのは、机と棚に大量に入っているノートの類と、ベッドの上のメイド服を着たミイラだった。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ