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83話『奇怪な廊下』

「サイクロプスはもういないな。」

扉から廊下を覗いていた谷岡が俺に話しかけてくる。

「武器はどうした?」

「えーと……槍を持っていたんだけど1本は壊されてもう1本はあいつらに奪われた。」

谷岡は冷や汗を浮かべながら目を逸らして返事をする。

槍と言うことは俺と同じランサーなのだろう。

カバンの中にしまってあったクナイ槍を取り出して石突を向けて渡す。

「こいつを持っておけ、ダイキの作った武器だから普通の武器より硬いはずだ。」

「ああ、助かる。」

谷岡は親指を縦ながらクナイ槍を受け取った。

扉を開けてでやから出て廊下を確認する。

サイクロプスの姿が見当たらないのを確認して、廊下を歩いていく。

「他に知り合いはいるのか?」

「俺は一人でここに潜り込んだから仲間はいない。お前の仲間は?」

「3人来てる。さっきも1人一緒にいたけどサイクロプスにまだ追い回されてると思う。」

俺は谷岡と話しながらさっきまで走っていた廊下を曲がる。

廊下には背中の中心に大きな穴を開けて透明な液体を廊下に撒き散らせているアノマロカリスの姿があった。

おそらく、サイクロプスに踏み抜かれた後だったのだろう。

まだ生きているのか、2本の触手を痙攣させながら俺たちに近づいてきていた。

「さっき俺を追いかけてきた奴か。さっきまで触手で張って想像以上の速さで追いかけてきてビビったよ。」

「空中泳いで追ってこなくて良かったな。」

俺は槍を逆手に持って振り下ろした。

頭部を突き刺されたアノマロカリスはすぐに動かなくなった。

「これで死んだか。」

「水晶玉反応してないから今のうちに距離をとって逃げるぞ。」

俺はアノマロカリスの遺体を通り過ぎながら再び廊下を曲がる。

さっきサイクロプスが出てきた部屋の前までたどり着いた。

「流石に今はいないよな?」

慎重に扉を開けて中を覗き込む。

普通の客室らしく、テーブルや椅子やクローゼット、何か毛布で包まれたものが乗っているベッドがあった。

「待って誰が乗っているんだあのベッド!?」

急いで近づいて毛布を捲ると、頭に赤黒くなった包帯を巻いてスヤスヤと寝息を立てているナオミの姿があった。

「杉原、生きてるか?」

俺はナオミの頬をペチペチと叩くと、少しして目を開けていく。

「ええと……ここは?」

ナオミが少し困惑して頭をさすると、頭が痛むのか頭を抑えてベッドに逆戻りした。

「あ〜、大丈夫か?」

「まだ頭がジンジン痛む……。」

赤黒い包帯の巻かれた頭をさすりながらナオミが呟く。

包帯とかで治療した形跡はあるが、頭の怪我はまだ完全に治されてないのかかなり苦しそうだ。

「蒼山、先にこの屋敷の出口を探さないか?」

後ろから谷岡が扉の前に立ちながら話しかけてくる。

「わかった。杉原、もう少しの辛抱だ。」

「大丈夫、頭は痛いだけで致命傷じゃないから。」

ナオミが頭を抑えながら手を振っているのを確認して扉を閉じた。

「さて、ここからどうする?」

「とりあえず一階に戻って他の仲間と合流をしようか……。」

俺が考えていると谷岡が急に襟首を掴んで引っ張ってきた。

さっきまで俺がいた場所に斧が叩き込まれていた。

目の前にいくつも十字のものが刺された箇所から血が漏れ出ている鎧を纏った騎士が突っ立っていた。

「あいつは……どこだ……。」

「今度はなんなんだ!?」

「知らねえけど、とりあえず人だよな!?攻撃はしないほうがいいよな!?」

谷岡が困惑した表情で尋ねてくる。

確かに色々と物騒な見た目になっているが、人であることには変わりない。

もしかしたらあのメイドに操られているだけって可能性もある。

「あの、大丈夫ですか?」

「お前らは……あいつじゃないか……すまない……。」

鎧を着た騎士が俺たちをじっと見た後、謝ってくる。

騎士はその場に座り込んで息を整え始める。

十字の箇所から流れ出る血が痛々しくて見ているのが少し苦しい。

「えっと、あなたはどうしてここに?」

「私は……パーズ王国の騎士……ハウィル・レステジナスだ……。覚えていることは……俺は死んでいるはずの……人間だということだ……。」

ボロボロのハウィルの言葉に耳を疑って谷岡と顔を見合わせる。

「それって、どういうことですか?」

「俺は……黒いマントを羽織った透明な女に……殺された記憶と……その恨みだけは残っている……。」

ハウィルの言葉を聞いて動きが止まる。

ちょうど俺たちが出てきた部屋に、心当たりのある女がいる。

「わかった、とりあえずこの部屋で休ませ……。」

「この部屋は危険なので他の部屋で休みましょう!」

提案をする谷岡の口を必死に押さえ込みながら提案する。

こいつとナオミを同じ部屋に入れるのはまずい。

「とりあえず、これ使ってください。」

カバンの中に入れていたポーションをハウィルに差し出す。

「すまない……ありがとう……。」

ハウィルは感謝の言葉を述べながら兜を外した。

中から右目がくり抜かれ、他の刺されている箇所から脳みそが少し飛び出している男が出てきた。

後ろで谷岡が今にも逃げ出したい表情を浮かべている。

とりあえず休める部屋を探そうと、ナオミが寝ている隣の部屋へ向かう。

急いで扉をガチャガチャした瞬間、ノブが勢いよく回った。

「とりあえずこちらの部屋に……!」

急いで扉を開けて中を覗き込んで、すぐに言葉を失った。

俺の上から谷岡が不思議そうな顔で覗き込んで青ざめている。

目の前では少しぽっちゃりした男が女性に覆い被さって行為に及んでいた。

谷岡がそっと閉じようとして音が鳴り、男がこっちに振り向いた。

「誰だ君たち!!」

男が顔を赤らめて必死に毛布で体を覆って隠していた。

女の方も周囲を見回して困惑した表情を浮かべている。

廊下ではポーションである程度の傷が癒えたらしいハウィルが立ち上がっている。

「まだ入らないでください!」

「何かまずいものでもあるのか?」

困惑した表情で兜を持つハウィルを横目にもう一つ隣の扉を開けた。

その部屋は特にない空き部屋だった。

「とりあえずここでお休みください!」

「ああ、すまない。」

ハウィルは俺に頭を下げながら部屋の中に入っていった。

扉を閉めてその場に座り込んでため息をつく。

「なんだったんだあの部屋……。」

「無視しよう。お前の中を探すのを先決に……。」

谷岡が俺より少し上に視線を向けて口をとじる。

後ろを振り向くと、サイクロプスが俺たちに向かってきていた。

サイクロプスの背後から、あの緑髪のメイドが右手に箒、左手に本を持って微笑んでいた。


「タツヤ様!!」

サイアが俺の足を蹴り飛ばして襟首を掴んで後ろへ引っ張ってきた。

鼻先を薙刀が切りつけてくる。

「ブレイズブラスト!」

後ろから宇喜田が炎の魔法で薙刀を使うやつを遠ざけるが、放たれた炎の球は全て両断されていた。

鼻から出てくる血を少し拭いながら目の前の薙刀使いに視線を向ける。

見たことのある金髪の女が両端に刃が付いた薙刀を回しながら近づいてくる。

「なんなんですかあの女、魔法を切り割くって普通の人じゃないですよ!?」

宇喜田が困惑した表情で俺に話しかけてくる。

目の前のやつは息を整えながら薙刀の切先を俺たちに向けてきた。

間違いなくショウの槍の師匠でもあるランスマスター、タニティア・フレイクだった。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

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