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7話『燃える沼』

ゲゴッと声を鳴らすと同時に巨大カエルの口からさっき俺たちに飛んできた舌を伸ばしてくる。

カエデが悲鳴を上げながら伸びてきた舌を後ろに避けた。

舌が衝突したところに、ベットリと粘液が飛び散る。

「うわあ、何この粘液……。」

嫌そうな表情でカエデが自分の服を見ている。

多分最初に食らった攻撃で服についた粘液の事だろう。

目線を戻すと、巨大ガエルが沼から這いずり出てきている。

「ああもう、人探し中なのに!」

服を汚されたことに腹を立てながら、腰から刃のない剣を取り出す。

俺も背中の槍を、タツヤも2本のダガーを両手に持つ。

再び巨大ガエルが口を開いた。

「その気持ち悪い舌切り裂いてやる!」

赤い炎を纏い始めた剣を持ったカエデが巨大カエルの元へ走っていく。

しかし巨大カエルの口から出てきたのは細長い舌ではなく、巨大な液体の玉だった。

至近距離で放たれた液体玉をカエデがもろに食らった。

破裂した液体玉がカエデの剣に触れた瞬間、液体が全て真っ赤に光る。

同時にカエデの甲高い悲鳴が響いた。

「カエデ!」

俺は急いで燃え盛るカエデの元へ走る。

カエデは羽織っていたマントを投げ捨てて後ろへ座り込む。

肩のひどい火傷の痕を抑えて息を整えている。

「タツヤ、何か回復薬か何かを!」

タツヤは重傷のカエデを見て青ざめたあと、すぐにきた道を戻っていった。

すぐ横から巨大カエルの開いた口から舌が伸びてくる。

槍で防ごうとすると、伸びてきた舌が槍に絡みついてきた。

まずいと思った時にはもう遅く、手元を離れた槍が巨大カエルの口の中に吸い込まれていった。

再び巨大ガエルが口を開ける。

今度は液体玉が俺に向かって飛び出してきた。

カエデを抱えて飛んでくる液体玉を避ける。

液体玉は燃え上がることなく地面にぶつかって弾ける。

巨大カエルの目が俺たちを見る。

「カエデ、借りるぞ!」

俺はカエデの持っていた剣を持つ。

手に違和感を感じるが、今はそんなこと考えている暇はない。

巨大カエルは口を開くと、舌が飛び出てくる。

逆手に持った剣を振るが、炎は出てこない。

腹部に鈍い衝撃が入り、後ろの木まで飛ばされる。

立ちあがろうともがくが、足に力が入らない。

巨大カエルは俺に向かってズルズルと這いずってくる。

その後ろから、左腕で鉄の剣を持ったカエデが立っている。

俺が見ていることに気づいたカエデが人差し指を口元に当てる。

巨大カエルが口を開いた瞬間、カエデの剣が巨大カエルの足に突き刺さった。

ゲゴゴゴゴと泣きながら巨大カエルが頭部を持ち上げた。

巨大カエルの口から放たれた液体玉は上空に打ち出されたあと、真っ逆さまに落ちてきた。

「ショウお願い!」

カエデが剣を抜きながら俺に両手を伸ばす。

俺は足を叩いて立ち上がり、一気に走り出す。

巨大カエルの横をすり抜けがてらカエデを抱えてその場から距離を取った。

カエデは俺の手から剣を奪うとカエルに向けた。

「集束……昇華……。」

カエデが剣の先を巨大カエルに向けて何かを呟き始めた。

カエデの剣に炎が集まってきたかと思うと、集まった炎が真っ赤な刀身へと変貌した。

今までの剣から炎が出ているのとは違う、しっかり刃のついた剣になっている。

巨大カエルは自分に降りかかった液体玉が目に染みたらしく、ジタバタしている。

「放たれろ!」

カエデの持った剣から赤い刀身がカチンという音と共に巨大ガエルへとまっすぐ飛んでいった。

赤い刀身がカエルに刺さった瞬間、刀身が爆発して巨大カエルに炎がまとわりつく。

巨大カエルは今まで聞いたことない音を鳴らしながら沼へと飛び込んでいった。

沼地の周りに沈黙が訪れた。

ぐったりしたカエデを気の根元に寝かせて、その隣で倒れ込む。

「カエデ、なんだったんだ今の技。」

「この神器の能力の一つだよ。」

カエデは左腕で刀身の無い剣を手に持つ。

「この剣は炎を操る力があって、炎を出せるだけじゃなくて炎を個体に変える事で赤い刃の剣になる。普通にものを斬ったりとかも出来るし、いざとなったら刀身を打ち出して燃やすことも出来るんだ。」

カエデが自慢げに剣を見せてくる。

「けど炎に包まれた時なんで使わなかったんだ?」

「唾液みたいなの炎ぶつけて燃えると思わなくって使い忘れた。」

カエデが苦笑いしながら右腕を抑える。

途端にカエデがハッとした表情で俺を見る。

「矢筒の紐、焼き切れたかも。」

「カエデは動かないでいい。俺が探す。」

その場から飛び起きて周囲を見回すと、カエデが燃えてたあたりに矢筒が落ちている。

安堵して近づいていくと、矢筒の奥の茂みから物音がした。

「誰だ!」

咄嗟にカエデの鉄の剣を拾って茂みの先に構える。

次の瞬間、沼地から伸びてきた舌が剣をはたき落とす。

驚いて沼の方を見ると、体の表面が焼けこげた巨大カエルが口を開いていた。

ハッとして茂みの方を見ると、中からローブを羽織った男が出てきて矢筒を拾っている。

「待て、そいつはお前のものじゃ……。」

俺が言い終わるより先に、ローブの男が矢筒の矢を1本取って袖から取り出した弓を引き絞る。

放たれた矢が巨大カエルの腹部に刺さった。

巨大カエルは白目を剥いて沼の中へ沈んでいった。

ローブの男の袖と俺のカバン、カエデの腰につけたポーチが光った。

「モンスターが倒れるまで油断しちゃいけないよ〜。」

ローブの男が取り出した水晶を確認しながら話しかけてくる。

「それと、僕の矢筒持ってきてくれてありがとう。」

被っているローブを脱いだレイスケが矢筒に新しい紐を結びつけながら笑顔を向けてきた。

遠くからタツヤが走ってくる足音が聞こえた。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

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