表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/125

67話『取り憑く恐怖と決着』

「フレ…イク…さ…。」

「よそ見してんじゃねえよ!」

フレイクの上で逆立ちしているカルミネが右手に持った剣を投げつけてくる。

首を捻って剣を交わした後、咄嗟に槍を手から離す。

咄嗟に拳を握って兜目掛けて放つが、後ろに倒れるように降りて着地した。

フレイクを突き飛ばしたカルミネの手に投げられた剣が戻る。

バランスを崩したフレイクはそのまま床に力無く倒れ込んだ。

「フレイクさん!」

俺は倒れ込んだフレイクの元に近づいた。

触れようとした瞬間、伸ばした右手に勢いよくフレイクの左手が掴みかかってきた。

「武器から簡単に手を離すんじゃないと…言ったはずだぞ…。」

見開いた目を俺に向けながらフレイクは呟く。

今にも死にそうなはずなのに、腕を掴む力はかなり強力だ。

「とにかく今は回復…ポーションを…!」

急いで手探りでポーションを取ろうと鞄に手を突っ込むが、何も入ってない。

鞄を見ると、さっき剣が斬りつけたところから大きく裂けていて、中に入っていた水晶や2本に分かれた槍の穂先が大きい方、さっきまでポーションが入ってた割れたガラス瓶が落ちていた。

「あ…あ…。」

「落ち着け。」

フレイクは動揺している俺の右手をさらに強く掴む。

少し体を持ち上げたフレイクは自分の腹に刺さった俺の雷竜の槍を引き抜いた。

貫通した箇所から血が溢れ出ているが、それを一切気にする様子もなく俺の右手に握らせた。

「俺のせいで…。」

「先に言っとくが、罪悪感を感じる必要はない。」

しっかりと俺の手に槍が握られたことを確認しながら呟く。

「槍技を使えるようになったのは師匠として褒めたいが、無理そうだね…。」

俺に説教を垂れるフレイクの口から血がどんどん出てくる。

それでも俺の腕を握る力はさらに強くなっているのを感じた。

「言いたいことはまだあるけど、少し疲れたから休む。次起きたらまずお前を全力で殴り飛ばすから覚悟しておいてね。」

笑いながらそこまで言うと、フレイクは右腕から手を離して薙刀を抱き寄せて目を閉じた。

寝息に近い呼吸音を聞いた後、俺はその場で立ち上がる。

「今生の別れは済んだか〜い?」

手に取った盾を付け直したカルミネが俺を嘲笑うように間延びした声で話しかけてくる。

「フレイクさんはまだ死んでいない。」

俺はカルミネを睨みつけながら返事をする。

叱責を聞いてから、少し気持ちが楽になっている。

「んじゃ〜お前にも死んでもらおうか!」

「後で怒られる予定があるから生きて帰ってやる!」

俺は再び穂先を形成する槍を構えてカルミネへと突っ込んだ。

水平に構えられた剣が槍を受け止めて、押し合いが始まった。

力は俺の方があるらしく、徐々にカルミネが後退りし始める。

「どっから出てんだその馬鹿力!」

カルミネが悲痛な声をあげているが、そんなことどうでもいい。

カルミネの剣を1度弾いた後、弾いた動きで石突をカルミネに向ける。

振り込む攻撃と思ったのか、近づいて剣を振り上げていた。

「放たれろ。」

槍の穂先が床に勢いよく放たれた。

「おいおい向ける方逆じゃ…!」

嘲笑おうとするカルミネの腹部に爆発で勢いのついた槍の石突が叩き込まれた。

カルミネの鎧が勢いよく吹っ飛び、壁にぶつかってその場に座り込んだ。

腕が折れたと思ってもおかしくない痛みに耐えながら、起きあがろうとするカルミネに

走り寄る。

カルミネは俺の方を一瞬見た後左手の盾を構えて立ち上がった。

穂先が復活した槍を突き出すが、盾でいなされた。

カルミネは周囲を見回して地面に落とした剣を手元に戻して横に薙いでくる。

柄で弾きながらすぐに胴目掛けて槍を突き出す。

盾が間に合わないと察したのか剣で受け止めてきた。

「どっから出ているんだその力!」

カルミネは悲鳴まじりに槍をずらすと俺から走って距離を取る。

すぐにカルミネに近づいて槍を振り下ろしたが、盾で防いで右手の剣を突き出してきた。

最小限の動きで剣を腕と脇の間を通ってかわした後、すぐに脇を絞めて剣を挟んだ。

「動かない!?」

剣が取れなくなって驚いているカルミネに左手の力だけで槍を少し持ち上げて振り上げた。

カルミネは周囲を見回した後、左手の盾を顔面にぶつけてきた。

鼻から血が流れ出るのが感じれるが、脇に挟んだ剣はしっかり取られないように力をいれる。

すぐさまカルミネは剣を手から離して盾で殴りかかる。

挟んだ剣で防ぐが、案の定剣は勢いよく弾けて地面に落ちた。

「よし!」

カルミネが弾いた剣に手を伸ばすが、俺はすぐに槍を構えて鎧の隙間に狙いを定める。

「あ!」

剣に気を取られていたカルミネがまずいといいたげな声を上げるが、無視してそのまま槍を左側の鎧の隙間から刺し込んだ。

剣を掴んだカルミネの右腕を抑えながら槍をそのまま捻り込む。

槍はそのまま右の膝裏の鎧の隙間から飛び出してきた。

そのまま左の足を勢いよく足払いすると、バランスがうまく取れないカルミネがそのまま仰向けに倒れた。

「こいつ!」

カルミネは最後の力を振り回すかのように剣を投げ飛ばしてきた。咄嗟に裂けた鞄の中から引っかかっていて落ちなかったダイキの2本に別れた槍の穂先が小さい方を取り出して弾いた。

槍を突き立てようとした瞬間、背後から何かが飛んでくる音が聞こえた。

確認する前に反射的に振り返って弾こうとするが俺の横を素通りしていった。

カルミネの方を向くと、腕を振り上げてきた。

咄嗟に腕で防いだが、肘に痛みがくる。

カルミネの手には、さっきカバンから落ちたダイキが作った槍の穂先が大きい方があった。

「それは俺のだ、返せ。」

「自分の武器なら、床に転がしてちゃあダメだろ?」

嘲笑うように話しながら穂先の大きな槍を手元に収めて突き出してきた。

咄嗟に掴んだ後右手に持った穂先の小さい方の槍を鎧に叩き込む。

鎧の振動でカルミネの手から離れたもう1本の槍を取り返すと、2本の槍を繋げてカルミネの右手を貫いた。

すぐに右手を押さえた瞬間、脇腹にドシュッと肉に刺さる音が聞こえると同時に激痛が走る。

視線を下ろすとさっき弾いた剣がゆっくりと俺の脇腹に血を垂らしながら刺しこまれていた。

「角度間違えたな、縦だったら引き上げるだけでよかったのに…。

咄嗟にカルミネの言葉の意図を察して剣の柄を握る。

必死に剣を抜き取ってそのまま膝で挟んで押さえ込む。

もし剣が縦に刺さっていたら、上に引き上げる力だけで俺が裂かれて殺されていた。

剣からカルミネに視線を戻すと、目の前から盾が首にチョップするように突っ込んできた。

一瞬仰け反った瞬間、手元から離れたダイキの槍が右手から浮き上がりカルミネが手にとって仰向けのまま俺に振り込んできた。

振り込まれる槍を掴んで右手で受け止める。

後ろから盾がなん度も小突いてくるが、痛みはそこまで感じなかった。

次の瞬間、カルミネが槍を捻って2本になった。

「便利な槍だなこれ!!」

カルミネは叫びながら俺に向かって槍を投げつけてきた。

急いで前のめりに近づいて槍を掴む。

すぐに2本を繋げた後、立ち上がって槍を右の二の腕と肩の隙間に刺しこんだ。

そのまま左の同じ位置から穂先が突き出していた。

カルミネ自体はこれで動けなくなったのを確認して後ろを向くと、立ち上がった際に抜け出した剣と盾が俺めがけて飛んできた。

「武器はもうないだろ!!」

足元でカルミネが叫んでいるが、俺は無視して剣を交わして盾を腹部で受け止める。

少し痛いが我慢して盾を持つと、再び飛んでくる剣に上から叩き込んだ。

そのまま地面に落ちた剣を盾で押さえて踏みつけた。

「これで、お前が動けなくなった。俺の勝ちだ。」

2本の槍の柄をしっかり握りながら圧をかけて喋る。

カルミネは2本の槍を鎧が動けないように差し込んだからか、地面でバタバタするが立ち上がることもできない状態になっていた。

「こっちに来てんじゃねえよ…。」

カルミネが呟いていると廊下から徐々に何人もの足音が聞こえてきた。

扉を開けて、剣や槍を持った兵士たちが入ってきた。

「魔王軍幹部が取り押さえられているぞ!」

「急いで人員を呼んでこい!逃げられないようにするぞ!」

兵士たちは俺たちを囲んで叫んできた。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ