62話『平地に立つ巨体たち』
「到着しました。」
馬車を操っていた兵士が扉を開けて喋る。
兵士たちと共に馬車から出ると、目の前に巨大な壁が聳え立っていた。
「ここを破壊するんですか?」
「サフィア王国の方々からはあとでディモンド王国が修復することで許可はもらっている。爆破を頼むぞ。」
最後尾の馬車から出てきた片岡が先ほどスライムを燃やしたメイジ2人を連れて壁の前に立った。
2人のメイジが杖を構えると、片岡が横に避ける。
「「アルプションラプチャー。」」
メイジの杖に炎が渦巻き始めた後、壁に向かって放たれる。
次の瞬間、20メートルはある壁に向かって、渦巻いていた爆発が直撃した。
爆風で周囲に砂埃が舞う。
数秒後、パラパラと音が聞こえてきた。
砂埃が徐々に晴れていき、壁に開いた大穴が開いているのが軽く見えた。
突然後ろから首を掴まれて後ろに引っ張られる。
「こじ開けま・・・。」
メイジの1人が後ろを向いて報告をしようとした瞬間、肉片とかして消えた。
まだ漂っていた砂埃が一瞬で消え、穴の周りにいた兵士から体の一部が宙を舞った。
「ぎゃあああ!!」
「腕があああ!!」
なくなった部分を押さえながら悶え苦しむ兵士が数秒足らずでその場に散らばった。
「大丈夫か?」
俺の襟首を掴んでいるフレイクが話しかけてきた。
「これは一体何があったんだ・・・。」
「投石だよ。しかも被害からしてあいつらだな・・・。」
壁に背をつけて国内を覗き込みながら話しかける。
俺も中腰で壁から国内を覗き込む。
覗き込んだ先には、平地が広がっていた。
視線の中には建物は、遠くに建つ豪華な城まで一切建物が見えない。
「ここって栄えていた王国だったんですよね?」
「南側の家を投擲に武器に変えてくる奴らと言ったらあいつらしかいない。」
フレイクが叫びながら開いた壁から国内に入り込んだ。
俺も急いで壁から入ろうとした瞬間、目の前から角材やレンガ降ってきた。
「ソイルウォール。」
後ろから片岡の声が聞こえると同時に、目の前に穴を塞げそうなほどの高さの土で構成された分厚い壁が形成された。
壁に次々と家の素材がぶつかって行く音が響いた。
後ろから片岡が疲れた表情で近寄ってきた。
「すまない、片岡。」
「あいつら、よくも俺の優秀な部下をやりやがったな・・・。」
片岡はヒビが入りつつある壁を睨みつける。
俺は壁の端から遠くを見る。
巨大な人影たちが積み上げられた家の残骸を掴んで放り投げていた。
「ジャイアント、平均5メートルの巨体のモンスターだ。」
土の壁の裏に戻ってきたフレイクが説明する。
手に持った双刃の槍には既に血が付着していた。
「もう倒したんですか!?」
「1番近くにいた1体だけだ。見えるだけで7体はいるけど、簡単に近づけない。」
嫌そうな表情でフレイクが壁から覗き込む。
「あいつらの厄介なのは投擲の技術だ。元から強い腕力を合わさって、1キロくらいは離れていても正確に物を投げつけてくる。しかも投げ方によっては右寄りになったり急に落下したりする。」
「どうやって攻めるんだ?」
「ここは僕の出番です。」
片岡が怒りのこもった声で杖を構える。
「ソイルウォール!」
片岡が叫ぶと共に、次々と分厚い土の壁を築き上げていく。
最初に作ったのより高さはないが、隠れるのには十分だ。
「これだけあれば、あっちの攻撃はとどかな…。」
勢いよく丸太が壁の上の方を貫通してきた。
自信満々に喋っていた片岡が口を開いたまま動かなくなった。
「まあ、ないよりマシだね。」
フレイクは呟きながら大きい壁から飛び出した。
近くの壁に隠れると同時に、家屋が次々と飛んできた。
大きな壁がだいぶ削れた。
「奴らが次の飛び道具を準備している今のうちに次の壁まで行くぞ!」
団長が声を上げながら壁から飛び出した。
団長に続いて次々と兵士たちが前の壁へと向かっていった。
俺もサイアと共に呆然としている片岡の腕を掴んで壁から飛びだした。
フレイクと同じ壁の裏に隠れると、さっきまで隠れていた大きな壁に次々と家屋が衝突していった。
ボロボロと崩れていく壁を見て、安堵の表情を浮かべる。
顔を上げると、フレイクは壁から身を乗り出して構えていた。
「槍技『シャープアサルト』。」
フレイクは一瞬で一番最前列の土の壁まで走って行った。
「あの人、本当に早いですね。」
ショックから立ち直った片岡が関心の目を向けていた。
俺は壁から顔を出してジャイアントたちの様子を確認する。
ジャイアントたちは一瞬で最前列の壁に隠れたのを見てないのか、遠くにある俺たちの隠れた壁に向かって家屋を投げつけてくる。
俺は槍の石突の爪の部分を握って壁に支えてもらうように置く。
「放たれろ。」
俺がつぶやくと同時に、ライフルのように構えた槍の穂先が投げる構えをしていたジャイアントの足を撃ち抜いた。
周りにいたジャイアントたちが驚いた表情で動揺しているのを見計らって、最前列の壁からフレイクが槍を構えて走り寄って薙刀を振りかぶっていた。
一気に3体のジャイアントの足が次々と切断された。
「いまだ!ランスマスターに続け!」
団長が叫ぶと共に次々と兵士たちが壁から飛び出して、ジャイアントたちに向かっていった。
ジャイアントたちは丸太で作られた棍棒で抵抗しようとするが、フレイクの薙刀が綺麗に切断していた。
俺たちも急いでジャイアントと兵士たちが戦っているところへ向かう。
ジャイアントたちは必死に逃げようとするが、兵士達が次々と後ろから刺していき、力尽きていく。
2体のジャイアントは必死に距離をとって逃げていった。
「あいつら、待て!」
兵士たちが追いかけようとした瞬間、兵士の頭部が弾け飛んだ。
その場が静かになると同時に次々と兜をかぶっている兵士たちの頭部が弾け飛んでいく。
「なんだ、これは一体…。」
「ショウ様危ない!」
サイアが俺を突き飛ばすと、さっきまで俺の頭部があった場所を何かが通過していった。
飛んできた何かは床にめり込んで止まった。
「レンガ?」
地面にめり込んだ灰色の石で作られたレンガを見ながら呟く。
飛んできた方向には、城があった。
周囲を囲む見張り台となっている砦の上に、人影が見えた。
ここから見てはっきり見える以上、ここにいるジャイアント達より大きい。
「ソイルウォール。」
片岡がすぐさま俺たちの前に土の壁を作り出した。
「さっきより分厚く作りました。簡単には壊れないはずです。」
片岡が冷や汗を垂らしながら話しかけてきた。
「報告です!東側からゴブリンどもが!」
報告をしに来た兵士の背中にゴブリンの振りかぶった斧が叩き込まれていた。
弓を持った兵士たちが弓矢を構えるが、斧を持った兵士の後ろから出てきたゴブリンの持った人がすっぽり隠れれるほどの大きさの鉄製の盾で防いだ。
「お前ら!敵は少数だ!押し切るぞ!」
盾持ちのゴブリンが叫ぶと共に東側からゴブリンたちが現れた。
急いで槍を構えようとすると、土の壁に鈍い音が聞こえてきた。
「フレイク、君はそこの2人を連れてあの砦のやつの討伐を頼む。」
団長はフレイクに命令するとゴブリンたちに切り掛かった。
「よし、行くぞ2人とも。」
フレイクは呟くと、東側の建物を走っていった。
俺はサイアと共にフレイクの後を追って行った。
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