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57話『魔法使いののんびり修行』

地面が揺れて、目の前に土の壁が出てきた。

「では打ってみてください。」

土の壁を築いた片岡に私は相槌を打って、杖を構える。

手に持った新しい魔導書の内容を無事覚えているはずだ

「ブレイズブラスト。」

私が詠唱すると同時に、杖の水晶部分に火球が作り出される。

次の瞬間、バンと音を立てながら火球が弾けて、土の壁に向かって次々と打ち込まれる。

土の壁は少し削れて、炎が当たった箇所から煙が出ていた。

「やっぱ土に打ち込むだけじゃあまりわからないね。」

「僕はその魔法で土の壁凹ませることもできなかったからすごいことだと思いますよ。」

片岡は削れた土を見て、羨ましそうな顔で私を見てきた。

十国会議から1週間経った。

ショウはあのランスマスターに、カエデとタツヤは団長と呼ばれていた騎士たちと訓練を始めていた。

私も何かしようと思ったところで、片岡たちと共に新しい魔法が使えるか試していた。

そして今、渡された炎の魔導書を試しているところだった。

「それにしても、この壁結構硬いよね。」

私は土の壁に近づいて、軽くノックする。

炎魔法を打ち込む前に普段使っている水魔法を使った時はもっと削れたのにと少し考える。

「僕が土属性の魔法が強いからでしょうかね。それにブレイズブラストは炎を散りばめる魔法ですので、1つの水を操るのよりも杖を使うように意識するべきですね。」

片岡は土属性の魔導書を持ちながら話かけてくる。

この世界の魔法は手元にある書物だけでも使えるらしいが、手で出そうとすると魔法を打ち出す部分が定まらずズレが生じるため、魔法の基点となる水晶のはめ込まれた杖を使うと図書館で読んだことはある。

「今までの水魔法は後から自分で動かせるタイプの魔法だったから、これからは気を付けないと。」

「2人とも、少し休憩しよう。」

廊下の方を向くと、サイアと同じくらいの身長の低いメイド服を着た青髪の女子が話しかけてきた。

ディモンド王国で出会えたもう1人の同級生、上原雛だ。

3日前に騎士の屋敷から連れてきてもらった時に再会した。

彼女はディモンド王国の路地裏に転生させられて働き口を探している時に、騎士のところで住み込みのメイドとして運よく雇ってもらえたらしい。

「2人とも調子はどうですか?」

上原さんが廊下を歩きながら話しかけてくる。

「僕は問題ないですね。夏川さんは?」

「今炎魔法の練習してるけど、今習得できたのは2つだけで、うち1つは用途どこにあるのって感じの魔法だった。」

私と片岡が話しながら歩いていく。

「皆さんはすごいですね。」

上原さんは羨ましそうな顔で私たちを見ていた。

確か、上原さんの兵種はシスターと言っていた。

確か前にイオラさんも言っていたが、シスターには戦闘能力がないと言っていた。

「そういえば、上原さんの神器は?」

「私は『無痛書簡』という神の書だよ。痛みを消すことができるらしいけど、傷が治るわけじゃ無いから使うことはあまりないね。あまり戦力にはなれないかもね。」

「まあシスターは攻撃手段ないらしいから仕方ないんじゃない?」

少し落ち込み気味な上原さんを励ましながら廊下を歩く。

「そういえば私たちは神から直接力をもらったけど、この世界の人たちはどうやって兵種とかを決めているんだろう?」

「10歳になって教会に行くと神託が降りて、その本人が望む兵種の力がもらえるらしいですよ。」

私の質問に片岡が丁寧に答えてくれた。

かなりシンプルでわかりやすいけど、神託がそんないい加減なのでいいのかと若干気になる。

この世界について、まだまだ知らないことが多い。

「この世界のこともうちょっと調べないとね、国とかについても調べといたほうが良さそうだし。」

「危ない!」

訓練場広場の廊下を歩いていると、大声と共に目の前を槍が円を描きながら飛んできた。

槍は廊下の壁に当たってそのまま廊下の石畳に落ちた。

「ごめんごめん、大丈夫だった!?」

訓練場から金髪の髪の女性が走り寄ってきた。

その奥で額を抑えてうずくまっているショウの姿があった。

「ランスマスター、彼はどれくらい強くなってますか?」

「元から強い方だったから、目に見えるような成長は少ないけど、しっかり育ってきているよ。手合わせの様子でも見ていく?」

ランスマスターはショウに向かって槍を投げながら尋ねてきた。

ショウは投げられた槍を横にずれて避けながら石突ギリギリの部分の柄を掴み取った。

「まあゆっくり見ましょう。彼がどれくらい足掻けるか見ものです。」

片岡は笑いながら反対側にある椅子に案内した。

学校にいた頃、思った以上に仲が悪かったのが目に見えてわかる。

私たちが椅子に座ると同時に、ショウとランスマスターの槍がぶつかり合った。

互いの槍は数秒ほど押し合いで動かなかったが、徐々にショウの槍が押し込み始める。

すぐさまランスマスターの槍が斜めに傾いて、そのままショウの槍が沿っていなされた。

「ダメそうですね。」

片岡がため息まじりに口をだす。

ランスマスターの槍がショウの背中に向けられて突き出された。

ショウは後ろを一瞬見た後、そのまま倒れ込んでギリギリで突き出された槍を避けた。

ショウはそのまま前転しながら立ち上がって片手で槍を振り回す。

ランスマスターは突き出した槍でそのまま叩き込まれる槍を受けながら穂先ギリギリを掴んでショウに近づいていく。

負けじとショウの右足がランスマスターの槍の柄を蹴り上げた。

槍は円を描きながらランスマスターの手から離れていった。

「マジかよ!」

片岡が敬語を忘れて信じられないと言いたげな声を上げる。

横で上原さんは目を輝かせていた。

「よっしゃ!」

槍を蹴飛ばしたショウが笑みを浮かべていた。

しかし、槍を飛ばされたランスマスターは顔色ひとつ変えずにショウの目と鼻の先まで近づいた。

次の瞬間、ランスマスターはショウの槍を掴みながら、鳩尾に蹴りを入れていた。

「おごっ!」

変な声を上げるショウの腕からランスマスターは槍を奪い取り、お腹を抑えながら顔を上げたショウの首筋に槍を当てた。

「ま・・・参りました・・・。」

ショウは悔しそうな呻き声を上げながらその場に座り込んだ。

「なんていうか、すごい模擬戦でしたね。」

片岡は、冷や汗を垂らしながら私たちに近づいてくるランスマスターに話しかけてくる。

「今のは私の負けだよ。」

ランスマスターは笑いながら話しかけてくる。

「槍が手から離れた時点で私の負けだ。今回はお互いが槍使いだから奪い取る芸当ができたが、戦場で戦う相手が皆槍を使うなわけでも無いし、奪い取れる確証もない・・・。次の特訓から槍技の特訓も加えようかな。」

「本当ですか!」

広場の真ん中で寝転がっていたショウが起き上がって私たちの元に近づいてくる。

ランスマスターが首を縦に振ると、ショウはその場で拳を握って喜んでいた。

「私も頑張らないとね・・・。」

手元にある炎の魔導書を見ながら、私は一言つぶやいた。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

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