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54話『風紀と規約のお茶会』

「いやあ、まさかあなたたちがカタオカ様の知り合いだったとは知りませんでしたよ。」

談話室に案内してくれた騎士は笑いながら俺たちを見回した。

俺は無言でサイアをじっと見つめる片岡を睨みつける。

「まさかお前がコネなしで王城務めしていると思わねえよ。」

タツヤが使用人の持ってきた紅茶を飲みながら笑いかける。

「君たちは本当に仲良いですね。」

紅茶のおかわりをもらいながら片岡が返事をしてくる。

すぐにその場が静かになった。

「団長、使用人と共に外に出てくれないか?彼らと話がしたい。」

「あ、わかりました。」

騎士は使用人を連れて部屋を出ていった。

片岡は紅茶を飲み干して皿の上に置いた。

「なんでこの城で君たちと出会うんだよ・・・。」

「こっちのセリフだ。」

騎士がいなくなってすぐさま悪態をついてくる片岡に俺も低い声で返事する。

横のタツヤも片岡を睨みつけている。

「まず同級生に会えたことを喜ばない?」

状況が読み込めないらしいユリが話しかけてくる。

「君たちが言いたいことは分かりますよ。僕のことが嫌いなのはわかっているので。」

片岡は机の真ん中に置かれた紅茶を入れ直す。

学校にいるときからだが、俺たちと風紀委員はとても仲が悪かった。

元から教室に置いてあったトランプやボードゲームを使用禁止にしたり、遅刻0運動とかいう名目で家のインターホンを連打してきたりととにかく嫌な奴らだ。

「普段から先生にゴマすっていたよな。今度はこの国の王族にすったのか?」

「普段からその物分かりの良さを活かしてくださいよ。」

片岡は呆れた表情を浮かべながら紅茶を飲み干した。

再びポットを持つが、数滴出た後一切出なくなった。

「まずはお互いの状況を話しましょう。今の私は先ほどの団長の元で働いています。兵種はメイジで土属性の魔法をメインにしています。」

「どうりで髪色が明るいわけだ。」

片岡の話を聞いたタツヤが適当に返事をする。

絶対に染めないと言っていた片岡の黒い髪が茶髪だった理由も納得できた。

「この国にずっといて、他の同級生に出会ったことはある?」

ユリが話に割り込むように片岡に尋ねる。

「そうですね・・・。先ほどの団長の屋敷で上原さんが住み込みで働いていることぐらいしか知りません。」

片岡の返事にユリが嬉しそうな表情を浮かべる。

少なくともこの国に2人は同級生がいることは喜ばしい。

「今度はあなたたちが話をしてください。特にそこにいる獣人について。」

片岡は俺たちに話しながらサイアを見つめる。

サイアは片岡に見られ続けて怖く思ったのか、窓の外へと視線を移していた。

「私たちはパーズ王国、アサハラ王国に行ったあとこの国に到着した。サイアはパーズ王国に行く前にカエデが助け出した奴隷よ。」

「蒼山と小畑が慰み用に買ったのでは無いと分かって安堵しました。」

ユリの説明を聞いていた片岡の皮肉混じりにの返答に、タツヤが青筋を立てながら無言で立ち上がった。

急いでタツヤの胸ぐらのを掴んで押さえ込む。

「俺たちのことなんだと思っているんだよ・・・。」

「君たちへの印象は転生する前から変わらず問題児と思っていますよ。」

俺のこぼした愚痴にも、片岡が丁寧に返事をした。

再び部屋の中が静かになった。

片岡は話題を提示する気もなさそうだし、タツヤも話す気はなさそうだ。

カエデに至っては話についていけなくなったのか、サイアと一緒に窓の外を眺めていた。

「そういえば、お前も神器は持っているのか?」

気まずかった雰囲気を壊そうと、俺は見切り発車で片岡に話題を投げつける。

「僕のは神器というより、神の書ですね。」

「神の書?」

俺が尋ねると、片岡は話しながら1冊の本を取り出した。

「図書館で調べたのですが、鍛治の神キュクロが作り出した武器を神器と呼び、魔法の神アラミスが作り出した魔導書を神の書と呼んでいるらしいです。神器を扱えるのは神に授けられた人とその子孫だけらしく、それ以外の人は使えないらしいです。私の『規約書簡』は魔導書なので神の書ですね。」

片岡は説明をしながら規約書簡という本を撫でる。

俺は説明をあまり理解できなかったが、ユリは心当たりでもあるのか相槌を打っていた。

「それで、お前の神の書はどんなことできるんだ?」

「書簡に書き込んだ規則を必ず守らせる能力。」

紅茶を飲んでいたタツヤが突然むせた。

「俺らの神器とかよりおかしく無いか!?」

カップを置いてタツヤが口を押さえながら片岡に尋ねる。

「効果範囲が本を中心とした半径100メートル、矛盾する規則を書くと能力は発動しないと言った欠点があるので使いかって悪いですね。」

タツヤの質問に片岡は首を横に振りながら返答した。

「ところで、なんで神器に関する本があるんだ?」

タツヤが不思議そうに片岡に尋ねた。

言われてみれば、神器を渡されたのは俺たち転生者だけのはずだ。

「本によると、過去にも転生者がいたかららしいです。」

俺とタツヤは無言でしっかり話を聞く姿勢になる。

窓をずっと眺めていたカエデも耳を傾ける。

「今までに2度も転生者が送られてきたらしい。どちらも100人くらい送られてきているらしいです。」

片岡がメモ帳をめくりながら話を続ける。

話に耳を傾けてないのは目を閉じて動く気配のないサイアくらいだ。

「今までの転生者ってどうなったの?」

ユリが真剣な表情で尋ねる。

「みんな死んでいますね。」

片岡の返答に、タツヤとユリは顔を真っ青にしていた。

多分、俺も2人くらい真っ青になっているかもしれない。

今まで来た転生者は皆死んだ。

それを聞いただけで絶望するには十分だ。

部屋の中の空気がどんどん重くなっていくのをひしひしと感じる。

「そんなに魔王軍って強いの?」

「転生者の8割の死因は寿命らしいですよ。」

一瞬で重くなった空気がだいぶ軽くなった。

「寿命?」

「ほとんどの転生者は魔王軍のモンスターたちを苦労なく倒せるほど強かったらしいのですが、転生者たちの大半は戦うことよりも異世界の人たちと同じように働き暮らす道を選ぶ人が多かったらしく、魔王に辿り着く前に寿命を迎えた人が多いそうです。」

片岡の淡々とした説明を聞いて、頭の中でレイスケやダイキ、ナオミたちを思い出す。

確か彼らも戦うことよりもその世界で生きていくことを優先していた。

「つまり魔王軍が強いんじゃなくて、魔王軍と戦おうとする転生者が少なかったってことか。」

「飲み込み早いですね。校則くらい理解できるんじゃないですか?」

片岡は首を縦に振りながら返事をする。

褒めるのか貶すのかどっちかだけにしてほしい。

「じゃあ、私たちが魔王を倒しにいけばいいね。」

カエデが明るい顔で片岡に尋ねるが、片岡は首を横に振る。

「確かに今までの転生者は戦う人は少なかったですが、いなかったわけではありません。魔王軍、特に時計盤と呼ばれる幹部たちに殺されている転生者たちも多いらしいです。」

「あの暗黒騎士とかいうやつならあったけど弱かったぞ?」

俺が尋ねると、片岡は一瞬目を見開いた。

「会ったの?」

「戦ったし勝ったんだけど逃げられたな。けどだとしたら魔王軍ってそんなに強くないのか?」

「それはないですね。」

一瞬驚いていた片岡が元の調子で俺の意見を否定した。

「過去に20人の転生者たちがディモンド王国の兵士2万ほど連れてで魔王軍の幹部の1体と戦いに向かい、両手両足を無くした槍使いの転生者が王国の噴水に落とされる形で帰ってきたって記されていました。」

再び部屋の中の空気が重くなった。

「そもそも、あなた方がここに来たのも魔王軍関連ですよね?」

片岡に言われて俺たちが来た理由を思い出す。

そもそも俺たちが魔王軍によって最近滅ぼされたサフィア王国の姫様を連れてくるためにここに来たんだった。

「片岡、サフィア王国ってどうなるんだ?」

「すでに滅んでいます。」

片岡が呆れた表情で呟く。

殴ろうと思って、立ちあがろうとすると横で聞いていたタツヤが俺のコートの袖を掴む。

「ただ、国王が言うには資源が豊富な国だから奪還したいと言っていましたね。」

「じゃあ、サフィア王国がどうなるかは・・・。」

ユリが片岡に尋ねようとして、言葉を慎んだ。

「5日後の十国会議で決まる。」

片岡が一言呟いて、ゆっくりと歩いて部屋を出ていった。


ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

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