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53話『気乗りしない入国』

朝日が昇ると共に、罪人を運ぶための馬車が10台くらいやってきた。

「ご協力感謝する。」

胸元に白い菱形のエンブレムがついた鎧を身につけた騎士の1人が俺に敬礼をする。

アジトの中から次々と縛られた盗賊たちが騎士たちによって馬車に乗せられていく。

「なあ、この男が盗賊の頭なんだよな?」

騎士たちが顔の腫れ上がった長谷を運びながら尋ねてきた。

「まあ、そうですね・・・。」

俺の返事を聞いて騎士がええっ困惑の声をあげる。

肝心の殴った本人はサイアの膝を枕にして寝息を立てていた。

「お疲れ様。」

タツヤに支えられながらユリが話しかけてきた。

「どれくらいいた?」

「合計で30人、うちあの村の人が23人だって。」

ユリの話を聞いたが、俺は信じられなかった。

長谷の作った盗賊団は、誘拐を繰り返しアジトの拡張工事や慰み者、私兵として扱っていたらしい。

「あいつ、だいぶ変わっていたな。」

タツヤがため息を吐きながら話しかけてくる。

「他のやつもああなっていないことを祈ろう。」

「おい貴様ら!」

俺とタツヤが話していると、さっき騎士が近づいてきた。

優しそうだった雰囲気は一切なく、今にも俺たちに切り掛かりそうな迫力がある。

「どうかしましたか?」

俺と騎士の間にユリが割って入る。

「昨晩、村の衛兵が事故りそうになった馬車を回収し、宿屋へ報告に向かったところ、元サフィア王国の姫君がいたと報告が来ている!」

騎士の発言を聞いて、俺とタツヤは顔を見合わせた。

騎士と話していて見えないが、多分ユリの顔をすごく青ざめているだろう。

「彼女は、今はアサハラ王国で保護していて、ディモンド王国で開かれる会議に参加するために我々が護送をして・・・。」

「あの名ばかりの王国か!」

騎士がユリのローブの首元を掴んで詰め寄る。

「とにかく貴様らの話も聞くため、ご同行願おう!」

騎士が叫ぶと、盗賊たちを詰め終わった騎士たちが俺たちを囲んだ。

「ちょっと待ってくれ。俺たちの言い分を・・・。」

「話は牢獄で聞く!」

騎士が叫ぶと同時に後頭部に衝撃が走り、意識が唐突に途切れた。


目を開けると、目の前に鉄の棒が縦にびっしり並んでいた。

横を向くと、タツヤが納得いかない表情で天井を見ていた。

「タツヤ、大丈夫か?」

「仕事が早い騎士たちだったな〜。」

タツヤは呆れた表情を浮かべながらつぶやいている。

周囲を見回すと、アジト内で見かけた盗賊が俺たちを睨みつけていたので、急いで目をそらす。

「ショウ、上を向いておこう・・・。」

「賛成だ・・・。」

体育座りをして天井を見ていると、足音を立てながら盗賊たちが俺とサイアの顔を覗き込むように見てくる。

横のタツヤの冷や汗と震えが徐々に大きくなっていくのがわかる。

盗賊たちとはまた別の足音が牢屋の外から聞こえてくる。

「おいお前ら、そこをどけ。そこの2名を連れていく。」

さっきの騎士が2名の部下らしい騎士を連れて牢屋の扉を開けた。

2名の部下たちは俺たちの周りにいる盗賊たちを突き飛ばしたりして、俺とタツヤの手を掴んで牢屋の外へと連れ出してくれた。

「先ほどは怒鳴ってすまなかった。」

鍵を閉めながら騎士が俺たちに頭を下げる。

タツヤと顔を見合わせるが、状況が一切掴めてこない。

「先ほどサフィア王国の姫君がお前たちの身元を保証し、さらには姫を護送していたことは本当のことと伝えられた。それなのに君たちを牢屋に入れてしまった。本当にすまない。」

騎士が頭を少し傾けながら話しかけてくる。

「騎士の皆さんはしっかり仕事をしていただけなのでそこに関しては恨んだりしていませんよ。」

タツヤが背伸びしながら騎士を励ます。

「強いていうなら俺たちがボコした盗賊と同じ牢獄に入れてたことぐらいですよ恨むの・・・。」

少し元気になりそうだった騎士の肩が再び項垂れる。

後ろの部下の1人が笑いを堪えようと顔を抑えていた。

騎士たちに連れられていると、廊下から同じような鎧の騎士が現れた。

「そっちも連れてきたか?」

女性の声が曲がり角からきた鎧の騎士から放たれる。

後ろからはカエデとユリが現れた。

「2人とも無事そうでよかった。」

カエデが安堵の表情で俺たちを見る。

「サイアはどうした?」

「狼種の獣人の少女はこの国の法律上、首に枷をつける作業をしています。」

女騎士の話を聞いて、タツヤが若干引き気味な顔を浮かべる。

「サイアは納得していたんですか?」

「本人は法律には従うと承諾していました。」

女騎士が返事をしていると、1つの部屋の前に到着した。

「失礼します。リターンズセイバーズの方々を連れて参りました。」

女騎士がノックをしながら声をかける。

扉が開いて、佐々木が安堵の表情を浮かべながら現れた。

「みんな捕まったって聞いて驚いたよ。」

「皆さん大丈夫でしたか?」

奥からイオラさんが不安そうな表情を浮かべながら駆け寄ってきた。

後ろから足音が聞こえ、振り向くと首に枷を付けたサイアが女騎士の部下に連れられてきた。

「では我々はあなた方の乗り捨ててきた馬車の回収をしてきます。」

女騎士は部下たちを連れて城の廊下を歩いて行った。

「君たちの武器は今倉庫にある。再び歩かせてすまないが倉庫まで着いてきてくれないか?」

騎士に連れられて城の廊下を歩いていく。

階段を1つ降りると、開けた場所が廊下の横から見えた。

槍を持った兵士たちがカカシに向かって走っていき槍を突き立てている。

「あれは訓練場?」

「ああ、ランサーとアーマーナイトたち槍を使う兵種たちの訓練だ。」

騎士が説明をしていると、奥の方で槍を持った大男が勢いよく吹っ飛んでいった。

「今飛んでいったのも訓練の一環ですか?」

「あれは新兵が教育係のランスマスターとの手合わせをして吹っ飛ばされただけだな。」

騎士が呆れ声で説明しようとしていると、新兵たちがまた数人吹っ飛ぶ。

槍を構えている兵士たちの真ん中には、灰色の服の上にチェストプレートを身につけただけの金髪の女性が長い木の棒を持って立っていた。

「あの人がランスマスター?」

カエデの質問に騎士が首を縦に振った。

次々と突っ込んでくる兵士たちの頭に、ランスマスターと呼ばれた女性の持った木の槍が叩き込まれていく。

「どんどん向かってきな!」

ランスマスターは木の棒を片手で回しながら周りの兵士たちに叫ぶ。

「ショウ参加してくれば?」

タツヤが冗談混じりに話しかけてくる。

俺が騎士の方を見ると、親指を立てて頷いていた。

「まあ肩慣らしにやってみるか。」

「フレイク、客人が相手をしたいとのことだ!」

騎士がランスマスターに向かって叫ぶ。

ランスマスターは振り向いて俺を見たあと、近くの兵士が持っていた槍を奪い取って俺に向かって投げてきた。

槍が俺の足元の地面に突き刺さった。

「あぶなっ!」

「客人であっても、手加減はしないよ!」

そう言いながら、ランスマスターは俺に木の槍の穂先を俺に向けて叫んできた。

いつもの事なのか、騎士は頭を抱えていた。

俺は一礼して地面に刺さった槍を手に取ると、ランスマスターにきらりと光る穂先を向けた。

新兵たちの間を掻い潜って、ランスマスターが俺に向かってきた。

急いで横っとびで避けようとした瞬間、木の槍が真横に伸びて先端が俺の額に向かって伸びてきた。

「うおっ!」

咄嗟に首を後ろに倒すと、真上を木の槍の穂先が掠めていった。

首が変な音を立ててないか心配しながらランスマスターから距離をとる。

「反射神経はいいんだね。」

ランスマスターは不思議そうな顔を浮かべながら、木の槍を穂の根本の部分を持って構えた。

次の瞬間、向けられた木の槍の穂先が目の前にまで伸びてきた。

「ひえっ!」

軽く悲鳴を上げながら、バックステップで目先まで伸びてきていた槍をかわす。

ランスマスターは新しいおもちゃを貰ったように目を輝かせながら石突まで伸ばしていた木の槍を滑らせて手元に戻す。

流石に防戦一方ではダメだろう。

勢いよく踏み込みながらランスマスターに近づく。

再び木の槍がランスマスターの手元から滑り出して俺に向かって伸びてきた。

首を横に曲げて伸びてきた槍を交わしながら槍を突き出す。

しかし、俺の突き出した槍はランスマスターがかわす動作をせずに脇の間を通り抜けていった。

「は?」

「惜しかったね。」

間抜けな声を上げる俺の耳元でランスマスターが囁くと同時に、目の前に木の槍の柄が迫ってきていた。

急いで距離を取ろうとした瞬間、ランスマスターが俺の突き出した槍を脇で挟んできた。

引き戻されると同時に伸びてきた槍が腹部にめり込んできた。

痛みに耐えながら、ランスマスターの脇からなんとかひっこぬけた槍を再び構える。

「結構強く叩き込んだつもりなんだけど!」

ランスマスターは苦笑いを浮かべながら槍を振り回して走り寄ってくる。

槍をしっかり握って距離を取ろうとした瞬間、ある青年が視界に入った。

「あ。」

俺が気を取られていると、額に遠心力も加わった槍の重たい一撃が叩き込まれた。

もろに食らったせいで視界がぼやけて背中が軽く焼けるような痛みが来た。

「ショウ大丈夫?」

走り寄ってきたカエデが俺の顔を覗き込んでくる。

体を起こすと、少し離れたところでランスマスターが騎士と話していた。

「ちょっと肩貸してくれ。」

「わかった。」

俺は頭を抑えながらカエデに支えられて立ち上がった。

そのまま俺はランスマスターたちの方へ行かずに、訓練場の奥の方に向かう。

「ショウ、どうし・・・。」

カエデが尋ねてきたが、俺の目線の先を見て察したのか無言になった。

俺は椅子に座った青年の前に立った。

「久しぶりだな、風気委員。」

俺は目の前の青いマントを羽織った茶髪の青年が嫌そうな表情で顔を上げる。

「あれ、カタオカ様のお知り合いでしたか?」

ランクマスターと話していた騎士が俺と元風気委員の同級生、片岡創の元に歩み寄ってきた。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

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