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50話『村の中の暴れ馬』

「ふかふかだ〜。」

ベッドに乗っかったカエデはそのまま毛布に包まっていた。

ベッドに座ると、確かにふかふかだった。

サイアは窓の外を目を見開いてみていた。

「サイア、瞬きしないと目が痛くなる・・・。」

「ショウ様とタツヤ様が今盗賊に襲われています。」

サイアが一言呟くと、後ろでカエデが飛び起きた。

私も眠気が覚めている。

「場所を教えて、今から向かいに行く!サイアちゃんは追跡をお願い。」

「私は窓から屋根を伝って2人と盗賊を追います。」

サイアは窓を飛び出そうと足をかけた。

「サイア、これを持っていって。」

私はサイアに魔法陣の書かれた紙を1枚手渡した。

用途を察したサイアは1度首を縦に振ると、窓を飛び出して奥の家の屋根の上に登る。

「カエデも気をつけて、私はイオラさんたちに話してくる。」

「分かった。」

カエデはそういうと、階段を駆け降りていった。

私は隣の部屋をノックする。

扉を開けてハンマーを持った佐々木が出てきた。

重そうな鎧ではなく、寝巻き姿ではある。

「さっきから何か騒がしいけど、何かあったの?」

寝る気満々の佐々木の間延びした声に少し呆れながら返答する。

「男子2人が連れて行かれた。盗賊がたくさんいるから警戒して。」

私の返答を聞いた佐々木の目が見開いて首を縦に振った。

扉が閉じると、部屋の中でガシャガシャと鎧の音が聞こえてきた。

扉が開いて、イオラさんが顔を覗かせる。

「話は後ろで聞いていました。気をつけて。」

「イオラさんも佐々木から離れないでください。彼女と一緒ならある程度は大丈夫なはずです。」

私はそう言って自分の部屋に戻った。

部屋に置いてある杖を拾って魔法陣を床に敷く。魔法陣の周りに持っていた分のポーションを周囲に置く。

「カエデ聞こえる?」

水晶玉を取り出してカエデの水晶と繋げる。

水晶にはカエデの鞄の中が映し出される。

『今サイアちゃんがショウたちを誘拐した盗賊を追っているけど、馬車に乗っけようとしているらしいから馬車の操縦をお願い!』

カエデは息を上げながら捲し立てたあと、すぐに水晶から鞄の中が消える。

馬車の操縦をしたことがないのに頼まれることになるとは思わなかった。

「『転移書簡』。」

私は床に敷いた魔法陣を起動してその中に入り込む。

馬車の荷物置き場に到着した。

急いで人の乗る場所を通って馭者台に座る。

「ええと、確か手綱を引いて・・・。」

馬の手綱を引っ張ると馬たちが歩き始めた。

「急いで・・・早く走って・・・。」

手綱を必死に引っ張っていると、十字路に差し掛かった。

右側の道から人が何人も乗った馬車がすごい速さで走っていった。

「ユリ!あいつらよ!」

十字路からカエデが息を荒げて走ってきた。

「前の車を追って!」

「馬車ね!」

私はカエデに反論しながら手綱を引っ張る。

馬が嘶いて走っていく。

勢いよくまっすぐ・・・。

「待って止まって!!」

「いやああああ!!」

私とカエデが悲鳴をあげても馬車は止まらずそのまままっすぐの道を走っていく。

「もういい!」

カエデは馬車を飛び降りて少し転がったあと姿勢を立て直してきた方向を走っていった。

私は必死に手綱を引っ張って、馬車に急制動をかける。

徐々に馬車のスピードが落ち、壁にぶつかる前に止まった。

「なっなんだ・・・。」

横を向くと、見回りをしていたらしい兵士が驚いた様子で私を見ていた。

「すみません、この馬車を待機所に戻してください。壊したり盗まれたりした場合、アサハラ王国直々に請求が来るのでしっかり戻してください。」

私は見回りの兵士に手っ取り早く頼んで、来た道を戻っていく。

普段からタツヤの馬車の操舵にギャーギャー言っていたが、全く操れない私が言えるようなことじゃなくて徐々に恥ずかしくなっていた。

十字路から顔を出すと、大量に散らばった矢と足を押さえてうめいているカエデの姿があった。

「カエデ、大丈夫!?」

急いで近づいてカエデの足を見る。

カエデの左足の太ももには矢が刺さっていた。

「ごめん、ポーションをお願いしてもいい?」

「言われなくても、『転移書簡』!」

急いで本に書かれた魔法陣からポーションを取り出す。

カエデの左足の矢を引っこ抜いてすぐさまポーションをかけた。

「2人を攫った奴らは?」

「矢が足に当たって私は無理だったけど、サイアちゃんに水晶玉を渡した。」

カエデは足を押さえながら村の門を見る。

村から出た道路の道には車輪の跡と、靴の跡があった。

「敵の居場所がわかったら、少し離れて連絡するように教えてといた。」

「サイアには魔法陣の紙も手渡してあるから、私たちはサイアから連絡が来るまで宿屋で待機しておこう。」

私はカエデに肩を貸しながら宿屋へと戻っていった。

彼女が無事であることを狙いながら・・・。


肩を小突かれて目を開ける。

目の前には篝火と何人かの話し声が聞こえてくる。

周囲を見回すと、煉瓦で覆われたどっかの中らしい。

「よお、目が覚めたか?」

横を向くと、腕と足を拘束されたタツヤの姿があった。

その奥の方では、他にも何人か男の人がいた。

他の男たちも拘束されているのを見て、足を動かして確認する。

他の男たち同様、手足を拘束されている。

「縛られているとうまく動けねえな。」

「ショウは寝てたからまだいいけど、さっきまでは体の痺れでうまく動けなかったからそれに比べればマシだぞ。」

タツヤはため息まじりに話しかけてくる。

確かに体の自由はそこまでない。

「あのナイフ刺してきた女、絶対許さねえ。」

「その女のことなんだが、あいつ俺たちが泊まることになってた宿屋の店主だぞ。」

俺の言ったことが信じられないのか、口をぽかんと開けて俺を見る。

タツヤ自身は少女に会ってないから、驚くのも無理もない。

ふと廊下から足音が聞こえてきた。

「こちらです、ボス。」

扉を開けて、俺と戦った長髪の男が入ってきた。

途端に周囲にいた縛られた男たちが悲鳴に近い声で騒ぎ始めた。

「俺たちを出してくれ!」

「ここにいたくないんだ!」

男たちの悲痛な叫びに、長髪の男は嫌そうに耳を塞ぎながら扉を開ける。

扉からは長髪の男よりは背が低い、ガタイの良い商人が切るような服を着た坊主頭の男が入ってきた。

背中にはちょっと豪華な装飾をした赤茶色の棍棒を携えていた。

「あれ?なんか見たことあるような・・・。」

「長谷・・・。」

横にいたタツヤが口をぽっかりと開けて目の前の男を見て呟く。

俺もその男をよく見て思い出した。

目の前の坊主頭は、俺たちの学校の野球部の部長の長谷一平だった。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

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