33話『宴とワンナイト』
「すげえ……。」
目の前に広がる料理の山を見てタツヤがよだれを垂らす。
「よだれ出ているぞ。」
俺はタツヤのジャケットのポケットからハンカチを取り出して涎を拭き取る。
突然、カエデが俺の上着のポケットに手を入れた。
「え、どうし……。」
俺がいう前にカエデが俺のポケットからハンカチを取り出して俺の口元を拭う。
「ショウも人のこと言えないね。」
カエデは笑いながらハンカチを折り直してポケットにねじ込んできた。
俺は顔を赤らめながら目の前の料理の並ぶテーブルを見る。
俺たちは今、テーブルと人混みでかなり狭くなったアサハラ城の大広間にいる。
先の戦いで、俺たちは侵攻の妨げになっていた虫系モンスター2匹を倒して勝利を収めた。
そして城に戻ったあと、浅原が祝祭を開くと言ってすぐに城の従者たちに命令して数時間、目の前でパーティーでも開くのかと思えるほどの準備がされていた。
コツコツと音が聞こえてきて、大広間の最奥にある椅子の前に浅原が歩いてくる。
「諸君、今回の戦いの勝利は貴君らの勇猛なる戦果によるものだ!存分に楽しみたまえ!」
浅原が宣言するとともに、集まっていた兵士や冒険者たちが一斉に料理に走り出した。
「いくぞショウ!」
タツヤが人混みの中を縫うように移動して盛り皿を手に取った。
横を見ると、カエデがユリとサイアの手を引っ張ってテーブルに向かっていた。
「おいその肉は俺のだ!」
「野菜がめっちゃ残ってるぞこっち!」
ビュッフェ形式で会場の奴らが次々と料理を各々の盛り皿へと盛られて、テーブルの上の料理が徐々に消えていく。
俺も盛り皿を手に取って肉類を多めに他の兵士を押し退けて盛り皿に持っていく。
なんとか取れるだけの芋料理と5切れの肉が盛られた皿を持って近くのテーブルに置く。
少し待っていると、タツヤが大量の肉料理が盛られた皿を持って俺のいるテーブルに向かってきた。
「すげえ量だな?食い切れるか?」
「取り合いになってたからぶんどってきたけど、多分これ取りすぎたかもしれない。」
タツヤは苦笑いを浮かべながら返事をする。
「少し俺もらおうか?」
「助かる!」
タツヤはガッツポーズをして俺の皿に肉料理を移動させる。
正直肉料理はあまり取れなかったから分けてもらえるのは嬉しい。
「お待たせ〜。」
料理の盛られた皿を持って女子たちがテーブルにやってきた。
カエデは料理を置くと、再び人混みの方へ振り向く。
「飲み物とってくるね〜。」
カエデは呼び止める間も無く、人混みの中へ消えていった。
「ムカデ倒したのってカエデだったよね?疲れてないの?」
「撤退後にここにくるまでぐっすり寝てたからそれなりに疲れ取れたって言ってた。」
ユリの返答を聞いて俺とタツヤは納得した。
「というか、サイアはそれだけでいいの?」
ユリがサイアを見て怪訝そうな表情で尋ねる。
サイアの皿を見ると、パンが3個乗っているだけだった。
「サイアって何歳だっけ?」
「一応12です。」
「もっと食べようよ!成長期なんだから!」
タツヤがまだ多かった自分の肉料理をサイアのさらに盛っていく。
サイアは少し困ったような表情を浮かべながら肉が乗っかった皿を見つめる。
「あまり必要ないのですが……。」
「ちゃんと食べないと大きくなれないよ?」
ユリの説得を聞いたサイアは、おずおずと肉を口に運んだ。
一口齧ったサイアは、目を輝かせて肉料理を一切れずつ食べ始めた。
しばらく話し合いながら食事をしていたが、カエデが全く帰ってこない。
「タツヤ、俺ちょっとカエデを探してくる。」
「OK!いってらっしゃい!」
俺はテーブルを離れて人ごみの中をカエデを探す。
「ショウ〜。」
間延びしたカエデの声が聞こえてきて、肩を叩かれる。
後ろを振り向くと、顔を赤らめて寝ぼけた表情のカエデがいた。
「おいカエデ、いったいどこまで……。」
ふらつくカエデを支えると、少し鼻につく匂いがした。
「この匂い……お酒?」
「さっきそこの兵士さんが美味しいジュースを味見させてくれて美味しかったんだ〜。」
俺はカエデの指を刺した方向にいたワインみたいな瓶を持った兵士を睨む。
焦った表情を浮かべた兵士らしい人間はそそくさと人混みへと逃げていった。
恐らく、カエデがフリーと思って近づいたのだろう。
俺はカエデを背負って他のみんながいるテーブルに向かっていった。
「あれ、カエデどうしたの?」
「兵士にお酒飲まされて酔わされてた。」
俺の返答を聞いてタツヤとユリは嫌そうな顔をする。
「だいぶ酔ってるな、足元おぼつかなくなってない?」
「ショウ、私は今日天川たちに呼び出されているから帰らない。サイアを護衛に連れていくからあなたが看病をして。」
ユリはそう言うと、俺に鍵を渡してきた。
俺は首を縦に振ってユリに礼を言うと、カエデを背負って城へと出ていく。
城の前にいた馬車の1台に頼んで宿屋まで送って貰った。
女子達の部屋に入ってカエデをベッドに寝かせた。
「ショウ〜。」
ベッドに入ったカエデが手を天井に向けてブラブラと揺らす。
よく見るとマントを結ぶ紐が首にしまって苦しいようだ。
「ちょっと待っとけ。」
俺がマントの紐を外し終わると、カエデが俺の腕を掴んだ。
「カエデ、離して……。」
「やだ〜。」
そう言うと、カエデが俺をベッドの中に引き摺り込んできた。
なんとか必死にベッドから出ようとするがカエデの方が力が強い。
気がつけば後ろから羽交締めにされるように腕が回ってきて、逃げれなくなっていた。
逃れられなさそうなので、俺は無理やりベッドの上に乗せられた。
「まあ、お疲れ。今日はもう寝といた方がいい……。」
「暑い〜。」
横から聞こえて慌てて振り向くと、カエデが上着を脱ぎ始めた。
前にカエデの家に行った時のことが思い出される。
エアコンが付いてない部屋だったせいか、カエデはいつも服を着替えることで体温調整をする癖がついている。
しかし、今来ている服は厚手の長袖だけだから……。
「おいカエデ、それ以上は……。」
俺が静止するのも聞かず、真横でカエデの上半身が顕になる。
酒を飲んでいるせいか、行動が色々と大胆になっているのだろう。
カエデが横にいる俺をぼーっとした表情で見てくる。
「あれ?なんでいるの〜。」
カエデがニヤニヤ笑いながら俺に覆い被さってきた。
すぐにまずいと察したが、カエデが乗っかってきてるせいで動けない……。
「ああもうわかったよ……。」
俺は着ている服の留め具部分を外していく。
カエデは酔っ払いながらも笑いながら俺の服を徐々に脱がしていく。
布団を背負って倒れ込んできたカエデに、俺はなす術がなかった。
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