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27話『襲撃者』

「荷物の中を確認させてもらう。」

門番をしていた衛兵の1人が荷車の中を確認するために荷車へ入ってくる。

「お前大丈夫か、なんか疲れてないか?」

「さっき森ででかい虫たちに襲われて逃げてきました。」

俺が返事をすると、衛兵は何かを察した表情で荷車から降りた。

門が開いて、馬車がアサハラ王国の中へと歩みを進めた。

静かだった平原と打って変わって、王国の中はちょっと煩いくらい賑わっていた。

「パーズ王国以上に賑わっているな。」

タツヤが周囲を見回しながら馬を操る。

俺とカエデは先に馬車を降りて宿の予約へと向かった。

露天商が立ち並ぶ道に到着した。

「この国、獣人も多いんだね。」

カエデが周囲を見回して呟く。

確かに見回すと、腕の部分が翼になっていたり、猫耳が生えたりしている獣人がちらほら見かける。

「最初サイアちゃんがつけていたような枷はつけてないから、この国で済んでいるのかな?」

近くにいた果物屋の猫耳店員を見ながらカエデがつぶやいた。

「サイアに枷なんて付いてたの?」

「私が出会った時には外したから今は付けてないよ。」

カエデは返事をして周囲を見回りながら歩く。

確かに周囲の獣人と呼ばれる者たちに首輪や枷みたいなものは装着されていない。

「じゃあここは獣人も住みやすい国ってことなのか?」

「多分そうだろうね。」

俺とカエデが話しながら歩いていると、宿屋に到着した。

扉を開けて宿屋に入ると、宿屋の主人らしき男が顔を上げた。

「あ、いらっしゃ……。」

さっきまで寝ていたらしい主人は俺とカエデの顔を見ると、慌てて立ち上がった。

宿屋の主人は俺とカエデの顔をじっくり見た後、急いでカウンターに戻って宿帖と部屋の鍵っぽいのを持ってくる。

「この鍵の部屋の壁は分厚く、音が他の部屋に聞こえないので……。」

「後から3人くるので3人部屋もお願いします!」

俺は店主の言葉を遮って鍵を受け取る。

横のきょとんとしてるカエデの表情を見て安堵しながら部屋へと向かう。

俺とタツヤ用の部屋に入って、魔法陣の書かれた紙を床に敷く。

「ユリと会話を繋いで。」

取り出した水晶玉が光だして、ユリとサイアの顔が映し出された。

「ユリ、宿屋に着いたぞ。」

『わかった、じゃあサイアお願いね。』

ユリが合図をすると、サイアが紙の上に荷物を置いた。

『『転移書簡』』

ユリがつぶやいた瞬間、俺のいる部屋の中の魔法陣が光り、水晶に映っていたタツヤの荷物が現れた。

タツヤにユリの魔法は聞かされていたが、実際に見てみると結構現実味がない。

『早く魔法陣の上の荷物どかして、次の荷物を送るから。』

俺は急いで荷物をどかすと、次の荷物が送られてきた。

『じゃあ私たちもその宿屋に向かうから鍵は空けといてね。』

一通り荷物を移動し終わると、ユリはそれだけ言って水晶玉から2人が消えた。

俺は女子3人分の荷物を持って隣のカエデのいる部屋に行く。

「カエデ、女子の荷物持ってき……。」

俺が部屋に入ると、目の前に腕から血を垂らしているカエデを抱えた白いローブを被った男がいた。

目の前の状況を見ても、理解が追いつかない。

白ローブはゆっくりと開いた窓へと近づいていく。

「おい待て!」

俺が2人の元に勢いよく走り寄る。

「うわっ!」

白ローブは軽く悲鳴を上げながら窓から飛び出した。

俺も追いかけようと窓枠に足をかけて飛び出そうとして、目の前の光景を見て唖然とした。

白ローブはカエデを抱えたまま宙をふわふわち浮いて移動し、隣の建物に飛び乗った。

カバンに携えていた槍半分にしてに縄を巻き付ける。

屋根の上を歩いて逃げようとしている白ローブに向かって穂の大きい方を投げつけた。

白ローブは槍が突き刺さり、姿勢を崩して転んだ。

白ローブのてから離れたカエデは屋根の上で転がって動く様子はない。

縄を引っ張って、白ローブを窓のそばまで手繰り寄せる。

「よくもこんな真っ昼間から人攫いを企てたな。」

俺は白ローブの首根っこを掴みながら顔を覗き込む。

俺は白ローブの顔を見て息を呑んだ。

白ローブの団子鼻のついた顔に見覚えがあった。

「天川か?」

「あ〜、どうも。」

杖を持った白ローブ、天川昇が冷や汗を垂らしながら俺に会釈をした。

部屋の中に白髪になっている小柄な天川を引き摺り込んだ。

「よお天川、なんでカエデを拉致しようとした?」

俺は2本に分かれていた槍を繋げて天川の喉元に伸ばす。

天川は目を泳がせて喋ろうとしない。

ふと、背中に痛みを感じた。

後ろを見ると、さっき開けた窓のおくに弓だけを持ったローブを羽織った奴が、倒れたカエデの隣に立っていた。

そこまで深くなかったのか、背中に刺さっていた矢が床に落ちた。

背中はズキズキ痛むが、後でポーションをかければ問題ないだろう。

「お前の仲間か?」

天川の手から杖を叩き落として、羽交締めにして窓側に向ける。

天川は外のローブに視線を送ると、弓を持っていたローブはカエデを抱えた。

次の瞬間、唐突に黒い大きい影が目の前を通り過ぎたかと思うと、2人の姿が見えなくなっていた。

天川を壁に叩き付けて窓から乗り出して黒い影が向かった方を見る。

1匹の小さな龍が3人の人を乗せて、豪華な城へ向かって降りていった。

「ねえ、今のは一体……。」

後ろからユリの声が聞こえてきたところで、途端に身体中から力が抜けて眠気が襲いかかってきた。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

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